夾竹桃日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 多摩川中1殺害事件を考える5 「ネット私刑」を規制すべしとの声

<<   作成日時 : 2015/03/29 21:28   >>

トラックバック 0 / コメント 0

川崎の中学1年生殺害事件に関連して、「犯人」とされる少年らの実名や顔写真

がインターネットで晒され、私刑(リンチ)が横行する事態を懸念し、これを規制す

べきとの主張が散見されます

前回に続き、事件そのものからは離れてしまいますが、この情報規制を求める動

きについて言及します

取り上げるのは読売新聞に掲載された石川正興早稲田大学社会安全政策研究

所所長(専門は刑事政策・少年法)の意見です


無責任な書き込みが晒す、少年法とネット規制の落とし穴
(前略)
最後に、「事件の容疑者と思しき人物を特定した憶測情報のネット掲載行為」との
関連で、法治主義について触れておきたい。法治主義の下では、刑罰権を国家が
独占する一方で、国家と言えども恣意的な刑罰権行使を認めず、その行使に当た
っては罪刑法定主義・法定手続の保障原則からの強い制約を受ける。他方、法治
主義は、国民に「私刑(リンチ)」を認めない。「事件の容疑者と思しき人物を特定し
た憶測情報のネット掲載行為」は、主権者たる国民が自ら法治主義を破ることにも
なりかねない。国民自らが禁止したはずの「私刑」が横行する時代へ後戻りするこ
とに対しては、こうした事態を食い止める手立てを講じる必要があると考える。
この事態を防ぐには、少年法を含む刑事法的対応では不十分である。刑事法的対
応は、犯罪とされる事態が起こった場合の事後的処理を中核とするシステムであ
る。このシステムでの事前予防には、おのずから限界がある。結局、今回のような
事態を防ぐためには、情報モラル教育のシステム構築が不可欠となる。
インターネットの便利さは、それを日々利用する者が身に沁みて理解していることだ
が、それは「もろ刃の剣」であり、使い方次第では、法治主義が否定する「私刑」にな
り得る行為を助長する可能性も孕む。あたかも本年2月4日に、文部科学省は30年
度以降に教科化される小中学校の道徳の学習指導要領に関し、「情報モラル」の指
導を「留意する」から「充実する」に変更した改定案を公表した。インターネット利用が
法治主義原理の否定になり得る事例も、この「情報モラル指導」の中で取り上げるよ
う、国に要望する次第である。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/wol/opinion/culture_150323.html


いかにも法律の専門家らしい知見と言えましょう

ただ、専門家ゆえの視野の狭さが仇になってしまい、残念ながら現実社会を見据え

た上での提言とは言い難いところがあります

「法治主義の下では、刑罰権を国家が独占する一方で、国家と言えども恣意的な刑

罰権行使を認めず…」とあるのは教科書どおりの定義なのでしょう

しかし、刑罰権を国家が独占しているとするのはあまりに形式的な解釈です。学校

には学校の懲戒権があり、企業は独自の懲戒規定があります。それも含めて広義

の法治主義と呼べなくもありませんが、地域社会にも明文化されない懲戒・刑罰の

規定(暗黙のルール)といったものがあるのです

同様にインターネット社会の中にも懲戒・刑罰の規定があります。明文化されてい

ないので見えないのですが

前回のブログの記事では、「上村くんのような被害者を出してはいけない、自分の

身近なところでこのような悲惨な事件を発生させてはならないとの義憤と自戒の念

が根底にあると解釈できます。そしてそんな義憤と自戒の念こそが、社会正義を根

底から支える国民の意識だ」と書きました

上記のような法律論議ではこうした「国民の意識」までも「規制の対象」にする危険

があります。法治主義が日本の社会を守っているわけではなく、「国民の意識」こそ

が日本の社会を守っているわけであり、法律が「国民の意識」を縛るなど本末転倒

です

さらに記事では「情報モラル教育のシステム構築」の必要性を指摘していますが、

これは小中学生を対象としたものであり、世の大多数を占める大人は対象外となる

わけで、問題の解決には結びつきません

(関連記事)
多摩川中1殺害事件を考える1 殴られて大怪我
http://05448081.at.webry.info/201502/article_27.html
多摩川中1殺害事件を考える2 息子は無関係
http://05448081.at.webry.info/201503/article_1.html
多摩川中1殺害事件を考える3 息子が主犯と認める
http://05448081.at.webry.info/201503/article_4.html
多摩川中1殺害事件を考える4 インターネットで私刑横行
http://05448081.at.webry.info/201503/article_8.html
多摩川中1殺害事件を考える6 刑事裁判開始前
http://05448081.at.webry.info/201509/article_1.html
多摩川中1殺害事件を考える7 過去の傷害事件
http://05448081.at.webry.info/201602/article_1.html
多摩川中1殺害事件を考える8 「強い殺意なかった」
http://05448081.at.webry.info/201602/article_4.html
多摩川中1殺害事件を考える9 心理鑑定結果
http://05448081.at.webry.info/201602/article_5.html
多摩川中1殺害事件を考える10 求刑10年以上15年以下
http://05448081.at.webry.info/201602/article_6.html
多摩川中1殺害事件を考える11 判決は懲役9年以上13年以下
http://05448081.at.webry.info/201602/article_15.html
多摩川中1殺害事件を考える12 共犯者にそれぞれ判決
http://05448081.at.webry.info/201606/article_4.html
多摩川中1殺害事件を考える13 情状鑑定の意見
http://05448081.at.webry.info/201608/article_16.html
埼玉少年殺害事件を考える1 中学生逮捕の衝撃
http://05448081.at.webry.info/201608/article_28.html
埼玉少年殺害事件を考える2 少年院送致決定
http://05448081.at.webry.info/201610/article_13.html
木曽川長良川連続リンチ殺人を考える 暴走する少年
http://05448081.at.webry.info/201103/article_23.html
木曽川長良川連続リンチ殺人の少年被告3人に死刑判決
http://05448081.at.webry.info/201103/article_20.html
木曽川長良川リンチ殺人を考える3 再審請求
http://05448081.at.webry.info/201104/article_29.html
「少年犯罪は厳罰化しても減少しない」説への異論
http://05448081.at.webry.info/201403/article_2.html
ストーカー殺人の少年が出所後また殺人未遂
http://05448081.at.webry.info/201208/article_30.html
三重・中学生殺害事件を考える 犯行の狙い
http://05448081.at.webry.info/201309/article_5.html
三重・中学生殺人を考える2 「金目当ての犯行だった」
http://05448081.at.webry.info/201403/article_4.html
三重・中学生殺人を考える3 地元の反応
http://05448081.at.webry.info/201410/article_13.html
三重・中学生殺人を考える4 記憶にないと主張
http://05448081.at.webry.info/201503/article_21.html
三重・中学生殺人を考える5 懲役5年以上9年以下
http://05448081.at.webry.info/201503/article_23.html
愛知集団暴行事件を考える1 川へ入るよう強要
http://05448081.at.webry.info/201506/article_10.html
愛知集団暴行事件を考える2 3人を少年院送致に
http://05448081.at.webry.info/201508/article_10.html


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

多摩川中1殺害事件を考える5 「ネット私刑」を規制すべしとの声 夾竹桃日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる