事件の意味を考える 精神分析と犯罪心理学の違い

これまでさまざまな事件を取り上げコメントしてきました
犯罪心理学と精神分析、どこがどう違うのか疑問を持たれた方もいると思いますので、簡略に説明しておきます
犯罪心理学の狙いは犯罪の原因を解明し、犯罪者の心理をつまびらかにするところにあります。それは犯罪の抑止、再犯防止、犯罪者の更生にも役立つと考えられます
精神分析は神経症の治療を目的とした技法ですが、犯罪がすべて神経症によるものではありません。ならば、なぜ精神分析が犯罪を対象とし、取り組むのでしょうか?
上記のように犯罪心理学は犯罪の原因を解明するものであり、精神分析は犯罪を含む人間の行為の意味を究明するものだ、と説明しておきます
「犯罪の原因」と「犯罪の意味」は一見似ているようですが大きな違いがあります
あるいは「犯罪の原因」と「犯罪の理由」の違いと表現すべきでしょうか

前回取り上げた長崎の幼児誘拐殺人の場合で考えてみます
少年の犯罪の原因(この場合は動機と言い換えてもよいでしょう)を警察、検察は考え、その動機に基づいて犯行を再構成し、事件として立件します。この際、犯罪が少年にとってどのような意味を持っていたのかは問いません
精神分析は行為の動機(金銭目的、怨恨、各種トラブルなど)よりも、その行為が彼にとってどのような意味があったのかを問うものです
したがって自分は仮説として、少年の中にある「去勢の儀式」というストーリーを考えました。これが彼の「犯罪の意味」です
人は己の行為の意味を明確に自覚して行動しているわけではありません。多くの場合、意味は後からつけられるものなのです
「火曜サスペンス劇場」というドラマをご存知の方は多いと思います。2時間枠の犯罪サスペンスドラマで、最後に必ず犯人が犯行に至った経緯を長々と語ります。通常、犯人があれほど理路整然と犯行について語ったりはしませんが、ドラマである以上、事件の謎は最後にすべて明かす必要があります
事件について犯人が何も語らないままドラマが終わったなら、テレビ局には視聴者からの抗議の電話が殺到するでしょう
犯人の長い独白によって犯行のすべてが明かされ、視聴者は満足するわけです
ところが犯人の独白は、「犯罪の原因」(動機)についての説明であり、「犯罪の意味」について語るものではありません
「犯罪の意味」は犯人自身、よくわかっていないのです
「犯罪の意味」は無意識の中に言語化されず潜んでいるためです
この「意味」は過去に経験された事象ではなく、行為時には秘められたものです。したがって検証も確認もできないものなのですが、犯人が受け入れ納得した時点で文字通り「意味」あるものになります

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