「人を殺す経験がしたかった」 豊川事件を考える 3

2000年5月に愛知県豊川市で発生した高校生による殺傷事件(以下、豊川事件と呼びます)について取り上げるシリーズの3回目です
事件の詳細はまとめサイトがありますのでそちらを御覧下さい


話を進めるにあたって、月刊「正論」に掲載された長谷川潤の小論を叩き台として使わせてもらっています
この小論の全文は以下のサイトで読めます


さて今回は長谷川論文の第二項の「『殺したいから殺した』ワガママ殺人」と第三項の「『ワガママ殺人』は例外ではない」について考えて行きます
長谷川は「現代っ子の心理に疎いマスコミは犯人の心理を全く理解できなかった」と書きますが、これは長谷川も同じです
教師として現場に立っていた経験を誇示しますが、およそ生徒一人一人についてはまったく理解していなかったのではないか、と思ってしまいます
長谷川がしきりと繰り返す「ワガママ殺人」ですが、概念が不明確で、たまたま同時期に発生した殺人事件を「ワガママ殺人」だと断定しているだけで、実に乱暴な括り方です
長谷川は事件の外見をひたすら語るだけで、「事件の原因」や「事件の意味」についてまったく考えようとしないのです
繰り返し述べますが、人の行為には「原因」があり「意味」があるわけで、これを無視して「行為の結果」だけしか見ない人間が、「マスコミは犯人の心理を理解していない」と批判するのは恥ずかし過ぎます
教師として現場にいるから生徒の心理は理解しているつもり、だと思い違いをしているだけなのでしょう
「『殺したいから殺す』社会的病理は確実に日本社会を蝕み、汚染させている」と長谷川は書くのですが、その社会的病理が何であるのかは解明しようとしません。ただ、「ワガママ」だと切り捨てるだけです
この小論の中では「間違った教育」にすべての原因があるかのような展開になるのですが、そちらは今回の事件を考察するのに何の関係もありませんので触れません
長谷川は少年による殺人を「ワガママ・テロル」だと断定します
「広辞苑」(初版)によれば、「テロル」とは、「あらゆる暴力手段に訴えて敵方を恐嚇すること」だという。
少なくとも「テロル」あるいは「テロ」とは、自分の行為を社会に投げつけ、自分の行為の意味を読み取れと強要するものでなければなりません。そこには明確な意図があるわけです
世間を騒がせてやろうとバスを乗っ取る佐賀の事件や、挑戦状を送りつける神戸の事件では「世間に自分の犯行がどう映るのか」を意識していたと言えるかもしれませんが、豊川事件にはそれがありません
あるいは世間を騒がせた事件をすべて「テロ」だと決め付けるのも理不尽です
中学生が爆弾を仕掛けたと電話して世間を騒がせる行為は確かに反社会的で、世間の慌てふためく様を楽しもうとする意図があるのですが、これを「テロ」だと考える人はいないでしょう
何が「テロ」であり、何が「テロ」でないかの議論は本題から外れますので止めておきます

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