精神分析のわかりにくさ

フランソワーズ・ドルトはラカンと行動をともにした児童精神分析家です

奇矯にして傲慢、大物ぶっていたラカンが評判の悪い男だったのに比

べ、ドルトは幅広い層から支持された人物のようです

しかし、彼女の著作があまり日本に紹介されていないのは残念に思い

ます

手許にある「無意識的身体像」(言叢社)の1巻と2巻を読んで思ったと

ころを書きます

ドルトの記述はラカンに比べて明瞭・明快であり、症例が中心なので理

解しやすいものです

それが悪いわけではなく、勉強する上では大いに役に立ちます

しかし、「分かりやすさ」というのは危険と隣り合わせです

症例は書かれたものであり、語られたものであり、生に起きている現象

ではありません

分析家が相手にするのは症例ではなく、いま現在起こりつつある生の現

象です(心理臨床家、学校の教師、こどもを持つ親も同様です)

神経症者は自分の身に起きた事象を時系列にそって語ったりはしません

言いたいことだけ語り、言いたくないことは語ろうとしません

つまり「症例」が整理され解釈された「わかりやすい」ものであるのに対し、

生で対決しなければならない現実はとてつもなく「わかりにくい」ものだか

らです

杓子定規に理論を当てはめればOK、という世界ではありません

また、同じケースだから症例どおりの解釈でOK、とはいきません

「パニック障害」に悩んでいる人は少なくないのですが、だからと言って、

「パニック障害の人は結構いるんですよ。たとえば・・・」などとパニック障

害の症例を幾つも挙げたところで、それが解決には結びつきません。気

慰めにもならないでしょう

最近、このブログでは殺人事件についてあれこれ見解を述べていますが、

こうした取り組みも杓子定規な理論の押し付けにならないよう自戒しなけ

ればなりません

無意識的身体像―子供の心の発達と病理〈1〉
言叢社
フランソワーズ ドルト

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赤ちゃんこそがお母さんを作る―ドルト先生の心理相談〈1〉 (ドルト先生の心理相談 (1))
みすず書房
フランソワーズ ドルト

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