三人の主演女優が圧巻 映画「ワールド・アパート」

You Tubeから予告編を見つけましたので映画「ワールド・アパート」について書き

ます


南アフリカ共和国の人種隔離政策(アパルトヘイト)をテーマにした1987年の映

画「ワールド・アパート」は、1988年のカンヌ映画祭で審査委員特別賞を受賞し、

出演した3人の女優(母親役のバーバラ・ハーシー、娘役のジョディ・メイ、家政婦

役のリンダ・ムブシ)が主演女優賞を受賞しました

一つの作品で3人の女優が主演女優賞を得るのはカンヌ映画祭でも初です

脚本を書いたショーン・スロボの実体験を基にした作品ですが、スロボ自身「わた

しが映画界に入ったのは反アパルトヘイト運動にのめり込んでいた両親への反発

から」と語るほど屈折したものが彼女の心中にあったようです

反アパルトヘイト運動に与することは正しく立派な行動ではあったわけですが、そ

の結果として父親は国外への亡命を余儀なくされ、母親は投獄され、スロボは孤

独に苛まれます

そうした痛みが映画では丁寧に描写されており、母と娘の対立やすれ違いを巧み

に表現して見せます

また、出番が決して多くはない家政婦役のリンダ・ムブシも細やかな感情表現で十

分すぎるほど存在感を示しており、彼女抜きにこの作品は成り立たなかったと言え

ます

反アパルトヘイトという政治的なメッセージだけの映画ではなく、優れたホームドラ

マであるという点がカンヌ映画祭で評価されたのでしょう

一部には「所詮は白人が作った映画」とか「白人の自己弁護にすぎない」との意見

もあるのですが、それはこの作品の本質を見ていない人の主張だと思います

映画のラストシーンでは母と娘が互いの感情をぶつけ合いのですが、ここが一番

難しいシーンだったと脚本家のショーン・スロボは語っています

実際スロボは母親との間で、逮捕・投獄のとき何があったのか、何を思ったのか

について映画のシーンのように語り合った事実はなかったからです

彼女が母親の体験や思いを知ったのは、母親が後に出版した獄中記を読んだと

きです。なぜ直接、自分に語ってくれなかったのかとの思いが、その後も燻り続け

たに違いありません

ショーン・スロボの母親は1982年、モザンビークにあるエドゥアルド・モンドラーネ

大学アフリカ研究センターにある彼女のオフィスに届いた小包爆弾によって殺害さ

れています

最後まで互いの気持ちを通いあわせることのできなかった母と娘の和解こそ、こ

映画のテーマだったのかもしれません

この映画のビデオは手許にあるのですが、DVDでは発売されていないようです

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