島根女子大生遺棄事件を考える24 犯人の自己顕示欲

ニュースのソースは前回と同じで、関西国際大の桐生正幸教授(49)=犯罪心理学のコメントを取り上げた産経新聞の記事です


「桐生正幸教授」で検索すると爆笑問題太田光とのやりとりが見つかりましたが、本題とは関係ありませんので別の機会にとりあげたいと思います
さて、前回は統計的なプロファイリングの方法についての疑問を提起しました。今回は記事の中にある「自己顕示欲があり、知的レベルも高い20歳代の男」という指摘について考えてみます
遺体を山の中に捨てた行為を、「遺体の処理に困ったため山の中に遺棄した」ととらえるか、それとも「自分の犯行を誇示するため遺体を置いた」ととらえるかによって解釈は分かます。記事では明らかに後者の、「犯行を誇示する行為」と解釈しています
ただし、話は前後しますが「過去のバラバラ殺人事件から推計してわいせつ目的」だと仮定しており、かならずしも死体愛好癖や遺体損壊目的の犯行だと断定してはいません。そのような特殊な嗜好によるバラバラ殺人が日本では稀有であり、統計には現れないためでしょう
そこで留意しなければならないのが、「犯人の自己顕示欲」です
「犯行の痕跡、あるいは戦利品である被害者の遺体の一部を誇示することで己の犯行を知らしめようとした」と書けば筋が通っているように思えるかもしれませんが、疑問は残ります
それならば大学の正門や学生寮前の路上に遺体の一部を置くという選択もあったはずで、わざわざ離れた山の中に置いたのか意味が分かりません
警察が広範囲な山狩りをすれば発見されるはず、と読んだ上でそうしたのでしょうか?
細かな推測の過程をすっ飛ばして自分の結論を先に書けば、山の中に遺体の一部を遺棄したのは犯人が自らの犯行を誇示しようとする自己顕示欲と、犯行を晒す結果逮捕される危険が高まることへの恐れという相反する思いのせめぎあいの結果だったのではないか、と考えるのです
つまり己の顕示欲をある程度統制できる慎重さ(臆病と言い換えてもよいでしょう)を持った人物と想定できるわけです
犯罪者の中には強烈なまでに自己顕示欲で固まった人間がいます。世間の注目を浴びたいという人間です。いわゆる「劇場型の犯罪」に走るのはこうした人間でしょう
今回の事件についてテレビのワイドショーで「劇場型犯罪だ」と指摘するコメンテーターがいましたが、外れだと思います
神戸の連続児童殺傷事件では切断した児童の首を学校の門に晒し、警察に挑戦状を送りつけています。しかし、本件ではそのような真似をしていません
大胆な犯行をやってのける人物ですが行動は慎重で、遺留品もほとんど残さず、姿を目撃されないよう気を配っています。劇場型の犯罪に走る自己顕示欲の塊のような犯人像を描くのは無理がありすぎます
もちろん人間の行動にはさまざまな矛盾がつきものであり、単純に図式化できるものではありませんが
しかし大胆な犯行、猟奇的な残忍さといった側面のみに目を奪われ、「劇場型犯罪」だと断定して犯人像を思い描いたところで何も得るものはないでしょう

この事件についてはブログで取り上げた数も増えましたので、直近のリンクだけ掲げておきます

島根女子大生遺棄事件を考える19 プロファイラー起用
島根女子大生遺棄事件を考える20 正常と異常の境目
島根女子大生遺棄事件を考える21 陰謀説・サイコ説
島根女子大生遺棄事件を考える22 女性犯人説
島根女子大生遺棄事件を考える23 犯罪心理学者の見解

上記の記事より前のものは以下のリンクからたどってください


普通に生きられない人たち 私たちは人格障害とどうつきあえばいいのか
河出書房新社
磯部 潮

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