島根女子大生遺棄事件を考える35 犯人の育った環境

被害者である平岡都さんの追悼集会が3月3日、浜田市の県立大で開かれた、と報道されています。大学4年生は卒業して学校を去りますから、事件に関する記憶がまた一段と薄れてゆきます


情報提供者には報奨金が支払われることになりましたが、だからといって何らかの証言や情報が得られるかどうかはわかりません。むしろ、現在に至るまで犯人に結びつく有力な情報が寄せられていない現状からすれば、この先も期待は薄いと思われます
さて、とあるブログで犯人を「虐待されて育った環境にあったのではないか?」と指摘していました。また別のブログでは、「比較的恵まれた環境で甘やかされて育ったため人の痛みも分からない」人間なのだとする意見もありました
こうした見解は珍しくないのですが、今ひとつ言わんとするところがきちんと整理されず、誤解も含んでいるように感じます
たとえば、「恵まれた環境で育った」という前提と「人の痛みも分からない」という解釈の間には何の相関関係もなく、論理の飛躍があります。間にある「甘やかされて育った」という状況が具体的に何を指し示すのか不明です
猟奇殺人事件として有名なパリ人肉事件の佐川一政について以前、取り上げました

島根女子大生遺棄事件を考える30 犯人家族の苦悩

恵まれた環境に育ち、病弱だったこともあって甘やかされてそだった可能性もあります
が、だからといって彼が人の痛みが分からない人間であるがゆえに事件を起こしたのではありません
極小未熟児として生まれ、その後も病弱であったゆえに発育が進まず小柄な体躯であった彼を殺人に駆り立てたのは何だったのでしょうか?
おそらくは両親への恨みだったのではないかと推測されます。自分をこんな体に産んだ両親への恨み、当てつけが屈折した殺意となって表出したのではないか、と
「人の肉を食らうモンスター」を演じて見せたのも、「お前たちの生んだこどもは忌まわしいモンスターだったのだ」という親への当てつけだったように思います
こうした両親への恨みの深さは、「愛される存在でありたかった」という欲求の裏返しでもあるのですが
そして彼が「人の痛みも分からない」人間だったかと言えば、そうではないと考えます
その体つきゆえに蔑視されたり、揶揄されたりして傷ついた経験が山ほどあったに違いありません
本件の事件の犯人は逮捕されていないのでどのような環境で育ったのかは不明で、断定する要素は何もありません
貧しい家庭に生まれても親の愛情を受けまっすぐ育つこどももいますし、裕福な家庭に生まれても捻じ曲がってしまうこどももいます
物理的に恵まれた家庭であってもこどもは貪欲なまでに親の愛情を求めて止みませんし、それゆえに親を恨んだり憎んだりもします
不良グループの仲間入りをしていた少女と話をしていたとき、彼女は母親の作る食事が「うっとおしい」とぼやいていました
母親がなぜこどものために食事を作るのか、その食事が愛情の代替物であるという話をしたところ、彼女は妙に感心していました。それで彼女の人生観や価値観が変わるはずはありませんが、彼女は一瞬、自分が母親となりこどもに食事を作る姿を想像したのだろうと思います
そして、わずかではあっても自分が母親に愛されている事実を発見し、心が揺らいだのかもしれません
「恵まれた環境」という型にはまった表現では何も指し示していないのと同じで、事実関係は見えてきません。「恵まれた環境」と片付ける前に、親子関係の実態がどのようなものであったのか、踏み込んで考える必要があるのです
この事件についてはブログで取り上げた数も増えましたので、直近のリンクだけ掲げておきます

島根女子大生遺棄事件を考える28 劇場型犯罪
島根女子大生遺棄事件を考える29 思い込みの誤り
島根女子大生遺棄事件を考える30 犯人家族の苦悩
島根女子大生遺棄事件を考える31 屍姦という行為
島根女子大生遺棄事件を考える32 情報の整理を
島根女子大生遺棄事件を考える33 警察のプロファイリング
島根女子大生遺棄事件を考える34 殺人の衝動
島根女子大生遺棄事件を考える36 捜査の現在
島根女子大生遺棄事件を考える37 捜査は継続中
島根女子大生遺棄事件を考える38 犯人は異常性愛者か
島根女子大生遺棄事件を考える39 過去の遺棄事件
島根女子大生遺棄事件を考える40 遺体損壊と焼却
島根女子大生遺棄事件を考える41 不審車両はマークⅡ
島根女子大生遺棄事件を考える42 容疑者死亡で送検
島根女子大生遺棄事件を考える43 矢野容疑者のプロフィール
島根女子大生遺棄事件を考える44 捜査本部会見
島根女子大生遺棄事件を考える45 矢野容疑者のmixi
島根女子大生遺棄事件を考える46 矢野容疑者の前科
島根女子大生遺棄事件を考える47 犯人扱いで大学中退者も
島根女子大生遺棄事件を考える48 事件の総括

上記の記事より過去のものは以下のリンクからたどってください


家族の闇をさぐる―現代の親子関係
小学館
斎藤 学

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