豊川引き篭もり殺人を考える3 殺人事件はまれなケース

今年4月に愛知県豊川市で発生した引き篭もりの男性による家族殺傷事件について、3回目の言及になります
ダイヤモンドオンラインに「引きこもりするオトナたち」という記事が載っています


長文の記事ですが、引き篭もりについて厚生労働省が実態調査をしているが、まだ結論は出ておらず、全体像の把握もまだ十分ではないという内容です
その上で、社会全体では引き篭もり状態にある者が100万人から200万人と推測され、社会問題と言える状態だと指摘しています
さらに、それだけの引篭もっている者がいながら殺人事件は年に数件しかなく、きわめてまれなケースだと記事では述べています
つまり引き篭もりだから家族を殺したと結論付けるのはかなり短絡的であり、あくまでもまれなケースとして扱った方がよいのでしょう
いつも述べていますが、化学の実験のように1万回やって1万回同じ結果が得られるのなら、そこから定理や法則を導き出すことができます
社会的な事件についてもそこから何らかの教訓を導き出し、「2度とこのような事件が起こらないように」と願う人がいるのですが、しかし、本当に教訓が導き出せるのでしょうか?
事件に遭遇して家族をなくした方の悲しみは分かりますが、特殊な事件、例外的なケースから普遍的な教訓を得るのは困難です
この豊橋の事件でも、引き篭もりであるがゆえに家族を手にかけたと結論を急ぐのではなく、事件の在り様を十分に吟味しなければなりません。要するに、犯人である男性の個別的な要因、資質、家庭の事情、親子関係などなどを考慮すべきだ、と言いたいのです
全国で200万人近い引き篭もりの人間の中で、彼だけがこのような凶行に走ったのはなぜか、という視点から事件を眺めるべきでしょう
そこで注目したいのが犯人である岩瀬高之容疑者の行動です。彼はインターネットでさまざまな品を購入し多額の借金を作っていたのですが、購入したものは部屋の中に積んだままであり手をつけようとはしませんでした
これを浪費癖と言うのは簡単ですが、そんな単純なものなのでしょうか?
物を手に入れる行為、買い物に女性が夢中になるのは、それが愛情獲得の代理行為だからだと精神分析では考えます。詳しい説明は省きますが、欲しい商品を手に入れる行為=愛情の獲得であり、恋人を得るのと同じ意味だと考えます
だからこそ、1着のワンピースを買うため半日かけてあちこちの店を見て周り、少しも飽きることがないのです(付き合わされる男性はヘトヘトになり、うんざりするのですが)
しかし、岩瀬容疑者が買った品物に何の愛着も示さなかったのは、それが彼の求めるモノではなかったからなのでしょう
結論を先に書くと、岩瀬容疑者は何かを求め、インターネットで買い物をしていたわけです。しかし、彼自身、何を求めているのかは分からなかったはずです。それが岩瀬容疑者が自分の無為意識に潜む欲求を言語化できず、表現もできなかったためです
彼が求めていたモノとは、おそらく親から愛される息子としての岩瀬高之という存在だったのでしょう。そうした自分になりたいと希求しながらも、そのために何をすべきか、どう振る舞えばよいのか掴めないまま、15年間足掻いていたのだと思われます
自己洞察が深まらなかった理由は彼の知的な能力の問題も関係しているのでしょう
また、発達障害のため対人関係がうまく理解できなかったからだとも考えられます
15年の歳月の間に彼が適切な治療を受ける機会があったなら、今回のような凶行は避けられたかもしれません

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