点滴に水道水を混ぜて娘を殺害した母親 代理ミュンヒハウゼン症候群

入院中の娘の点滴に水道水を混入させ、呼吸・循環障害で死亡させた岐阜県の母親に対し、裁判所は懲役10年の判決を言い渡したと毎日新聞が報じています


この母親は他の2人の娘の点滴にも同様に水道水を混入させ、傷害罪に問われています
記事の中にも書かれていますが、この母親は精神鑑定の結果、代理ミュンヒハウゼン症候群だと診断されています
ミュンヒハウゼン症候群とは他人の同情をひくために自傷行為を繰り返すなどの問題行動で知られています。代理ミュンヒハウゼン症候群の場合、自分自身を傷つけるのではなくこどもなど第三者を犠牲にし、けなげに看病する母親を演じて世間の同情をひこうとするものです
どちらの症候群も名称は知られていますが、実際にそうした診断が下されるケースを目にする機会はあまり多くはないでしょう
この事件でも、母親がわざと自分のこどもを傷つけるような行為をするのは不可解、と思われたからこそ精神鑑定が行われたのであり、そうでなければ代理ミュンヒハウゼン症候群という名前は出なかったのかもしれません
さて、被告の女性はこども頃に手首を切るなどして自殺を図ったように見せかけ、周囲の気をひこうとする行動があったと別の記事に書かれています


精神鑑定の詳細が不明なので判然とはしませんが、こうした行動がこどもの頃から複数回存在したのでしょう
代理ミュンヒハウゼン症候群だとする診断について検察と弁護人も異論はなかったようですが、責任能力を巡っては検察と弁護側の主張が真っ向から対立しています
検察は「同種の動機で病人を仕立て上げる人たちをまとめてそう呼ぶだけ。刑を軽くする理由にならない」と主張。一方の弁護側は「原因は同症候群にあり、児童虐待とは異なる」と執行猶予付き判決を求めていました
「原因が同症候群にあるから執行猶予にすべき(実刑を科すべきではない)」という弁護側の主張は、何が何だかよくわかりません。「責任能力が問えない心神耗弱状態だったから無罪」と主張しているわけではありません
娘に危害を加えようとした犯意は認めるが、それはあくまでも代理ミュンヒハウゼン症候群という病理によるもので、情状酌量の余地があると言いたかったのでしょうか?
症候群とは一般的に、表面に現れる症状の総称とされますので検察の言う「同種の動機で病人を仕立て上げる人たちをまとめてそう呼ぶだけ」との括り方は乱暴ながらもそのとおりでしょう
もし弁護側が被告の抱える症状を理由に減刑ないし、実刑回避を主張したいのであれば、娘を傷つけようとした被告人の行為がどのような力動によって派生したか、を明らかにすべきだったのと思います
代理ミュンヒハウゼン症候群だったから娘に危害を加えたのは止むを得ない、とする理屈は通用しません
被告は男女併せて5人のこどもを持つ母親ですが、点滴に水道水を混入させたのはどれも女の子ばかりです。なぜ男の子にはそうしなかったのでしょうか?
男の子にも何らかの形で危害を加えていたが事件として立件されなかったのか、気になるところです
女の子だけに危害を加えたとしたのなら、それはやはり女の子が被告自身の分身であり、身代わりであったからだと考えられます
つまり病気で苦しむ女の子と、けなげに看病する母親という2つの役を被告は演じていたと言えるのです
こどもを一個の独立した人格、存在として認めていなかったわけではないのでしょうが、それでもなお自分の分身として利用しようとする欲求が勝っていたのでしょうか?
あるいはこどもを甘やかす母親、こどもに愛情を注ぐ母親と、母親に甘えるこども、母親から愛情を注がれるこどもという母子関係に、被告は強烈な執着があったのでしょうか?
被告の女性がどのような家庭環境の中で育ったのか、母子関係がどうであったのかという判断材料がなければ何も明確なことは言えないのですが
世間一般では事件を起こす人間について、「甘やかされて育ったから人の痛みが分からないのだ」と言われますが、事実はその逆であったりするケースがしばしばですベタベタに甘やかされて育ったからそのようなぬるま湯的な母子関係に執着したというのではなく、十分に甘えることができなかったため他人の同情をひこうと手首を切ったりした可能性もあります
代理ミュンヒハウゼン症候群だとは断定できませんが、秋田県で自分の娘を殺害した畠山鈴香受刑者の場合、父親から虐待され、こどもの頃はひどいあだ名で呼ばれ学校でも存在を否定されるようないじめを受けていたとされます
そうしたさげすみの中でこども時代をすごした彼女にとって、こどもを殺された母親として同情を受け、悲劇のヒロインのような扱いを受けた経験は、これまでに味わったことのないものだったのでしょう
本件の高木香織被告の場合、何があったのでしょうか?

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