天声人語を書き写せばビジネスマンとして成功する?

「WEB本の雑誌」の掲載記事で、ビジネス書を紹介しています。朝日新聞のコラム「天声人語」を書き写せばビジネスマンとしての能力が向上する、と主張している本です


新聞のコラムが名文であり、よくできた文章なのかどうかは大いに疑問です
もちろんそれは朝日新聞の天声人語も例外ではありません
学校の教師の中には、「天声人語」は入試問題によく取り上げられるから読んでおけ、なとど発言する人もいるようですが
記事ではこうした新聞のコラムの筆写を、「アスリートが毎日トレーニングするように、ビジネスパーソンも自己成長のためのトレーニングが欠かせない時代です。空き時間を使って手軽にできる『自分だけの工夫』を続けていれば、あなたの仕事も変わるのではないでしょうか」と推奨していますが、本当にそうなのでしょうか?
誤字脱字、漢字の誤変換だらけのブログを書いている自分が言うのは説得力を欠きますが、コラムの書き写し程度で「アウトプットの能力向上」につながるとは思えません
「知的生産の技術」などのタイトルがついた本がビジネスマンには好まれるようです
ですが、ビジネス書は何百冊読もうと大して益はなく、時間の無駄だというのが自分の考えです
新聞のコラムを読むより、ビジネス書を読むより、思考のための基本的な技術を学ぶべきでしょう
物事を考えるには技術(方法論)があります。それは現象学であったり、構造主義であったりするわけです。こうした思考の技術を学び身につけることで、社会事象を読み解いたり、他者の言動を分析したり批評できるようになります
ただ、思ったまま、感じたままを語れば批評になるわけではありません
とはいえ、現象学を学ぶためにフッサールを読みなさいと言ってもなかなかとっつきにくいわけで、手始めに現象学的な思考のスタイル、批評の方法に接してみるのがよいかと思います
竹田青嗣の「エロスの現象学」(海鳥社)は少し古い本ですが、政治からポップカルチャーまで幅広く言及し、その思考のスタイルがよく見てとれます
さらに竹田は自身の現象学的思考の方法と、構造主義的思考の違いにもページを割いて説明しており、現代思想の入門書としても利用価値は十分にあります
自分自身は竹田青嗣とは逆の立場、構造主義と精神分析を基盤にする側なので、彼の思考に全面的に賛同するわけではありませんが
同じく竹田青嗣の「意味とエロス」(筑摩文庫)は、外出する際にいつもカバンに入れて持ち歩き、電車の中などでパラパラと開いては数行、読んでいました
何を言わんとしているのか理解できない章句が、ある日突然直観的に理解できることがあります。だから面白いと思います
ビジネス書ばかりに手がかりを求めるのではなく、古典を手にしたり現代思想に触れてみるのも刺激になるのではないでしょうか?
「意味とエロス」は絶版のようですが、インターネットで検索すると古書店には在庫があり入手可能です

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エロスの現象学 (竹田青嗣コレクション)
海鳥社
竹田 青嗣

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