松山母娘殺害事件を考える 支配と依存

愛媛県松山市で離婚した元夫が妻と妻の母親を刺すという事件があり、ワイドショーでも取り上げられています


記事の中で番組のコメンテーターで医師のおおたわ史絵は、「最近こういう事件が多い。相手に対しても、その家族に対しても思い入れを持ち過ぎている。そういうタイプの人間が多い。職業を持たない、自分の基盤を持たない、依存度の強い犯人像がある」との指摘をしたとあります
おおたわ史絵は内科のドクターですから、何らかの精神医学的な見識があって犯人像を語ったのではなく、単に事件の報道を耳にして思い浮かんだイメージを語っているだけなのでしょう
たしかにこの種の事件(別れた妻や恋人につきまとい、暴力をふるい、殺害するもの)では、逮捕される犯人のほとんどが無職の男性であり、甲斐性なしが多い気がします
ただ、「自分の基盤を持たない、依存度の強い犯人」というコメントは何を言わんとしているのか、よく分かりません
「無職で生活基盤のない男性」と言いたいのでしょうか?
あるいは、「妻なり恋人にべったりと依存し、くっついて離れることのできない(自分の世界を持たない)未熟な男性」と言いたいのでしょうか?
もちろんテレビ番組の中で数十秒のコメントですから、十分に意を尽くすのは困難であり曖昧な言い方になるのは仕方のないところです
そのコメントを批判し、こき下ろすのが当ブログの目的ではありません
精神分析の側から見れば、この犯人の男性の内にあるのは「支配しようとする欲求」と「支配されたい欲求」だと言えます
そして支配とは相手の生命を奪うことも含みます。つまり、「オレを怒らせたらどうなるか分かっているだろうな。ぶっ殺すぞ」という恫喝をそのまま実行するわけです
ここで前に書いた話を引用します。「島根女子大生遺棄事件を考える31 屍姦という行為」の中でハンナ・スィーガル著「クライン派の臨床」(岩崎学術出版社)に、屍姦空想を持つ男性の臨床例を取り上げました
子沢山の家に生まれた男性は、かまってもらいたい時にかまってもらえず、かまってもらいたくない時に兄や姉の玩具にされるという生育環境にあったと推測されます
そうした生い立ちが影響し、他人を過度に束縛し支配しようとする欲求が芽生えたと考えられます
現代の日本で子沢山の家庭というのは考えられませんが、「かまってもらいたい時にかまってもらえない環境」は十分にありえます。共働きで母親が育児に十分な時間を割けなかったり、母親の都合によって過度にこどもに干渉したり放置したりするような不安定な養育態度だったりすると、こどもはフラストレーションを抱えたまま成長し、他者に対して極端に支配的に振る舞いたいという欲望を無意識の中に抱え込んでしまう場合があります(もちろん育児は母親だけの責任ではなく、夫の役割も重要なのは言うまでもありません)
こうして妻や恋人に対し、極端に支配的に振る舞う暴力的な男性が登場するわけです
支配と依存は相互補完の関係ですから、極端に支配的に振る舞う暴力的な男性が、同時に女性にべったり甘え依存する面を持ちあわせていても不思議ではありません
ですからワイドショーの中の「依存度の強い犯人」との指摘も、的外れというわけではなく、犯人の一面を言い当てているのです
さて世の中には「オレが電話したら5秒以内に電話に出ろ」とか、「オレのメールには折り返しすぐ返事をしろ」などと、勝手なオレ様ルールを作って押し付ける男性がいます
あるいは、「オレ、おまえなしでは生きていけない」などと甘えてくる男性にコロリと心を動かす女性もいるのですが、過度な支配欲を見せたり依存を示す男性には警戒すべきでしょう
恋愛関係が支配と服従の関係になってしまったのでは幸せになどなれません

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諏訪 哲二

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