福岡旅館女将殺害事件を考える2 心神喪失で不起訴

今年5月に仙台に住む医師が突然失踪し、その後、福岡県の旅館に宿泊した上で経営者の女性を殺害する奇妙な事件がありました
精神鑑定の結果、被告であるこの医師は事件当時心神喪失であり、刑事責任能力は問えないとの理由で不起訴処分になりました

福岡・大牟田の旅館女性殺害:医師の男を不起訴

心神喪失とはこの場合、統合失調症と判断されたのでしょう
事件の経緯は当ブログで7月31日に取り上げました

福岡旅館女将殺害事件を考える1 逮捕された医師

病院の勤務医として医療行為に当たっていた人物が突然行方をくらまし、職場の同僚や交際相手の女性も思い当たる理由、原因がないと述べていた点が不可解でした
統合失調症の場合、何らかの異常な言動が周囲の人に見聞きされ、「おかしい」と言われるのが通常です
特に今回のケースでは被告人が医師であり、職場には同僚の医師が何人もいたのですから、異常に気がつかなかったとは考えにくいのですが
些細な理由で怒りだしたり、逆に話しかけても応答がなく感情が鈍麻しているように見えたり、一方的にブツブツと語り続けたりと、統合失調症を示唆する異常な行動はさまざまです。しかし、上記のように「違和感を感じる行動」が統合失調症の特徴だと自分は認識していました
そうした前駆的な症状もなしにいきなり失踪し、殺人事件を起こすに至るケースがあるのかと驚かされます
前にも取り上げましたが、片田珠美の「無差別殺人の精神分析」(新潮選書)では1999年に発生した造田博による池袋での通り魔殺人事件に言及しています
造田は事件前に突然渡米し、アメリカでバス旅行をしています。この「突発的な旅行」は統合失調症の初期段階でしばしば見られる行動だ、と著者は指摘しています(池袋の繁華街で無差別に襲撃し、2人を殺害し6人に重軽傷を負わせた造田博は精神鑑定の結果、統合失調症ではないと判断され死刑が確定しています)

池袋通り魔事件

ですから、上記のように仙台に居住する医師が明確な理由もなしに失踪し、縁もゆかりもない福岡に出向いて無関係の女性を殺害するという支離滅裂な行動は統合失調症によるもの、と言われても「そうなのか。でも何だかな」と思ってしまいます
余談ながら統合失調症と見られる症状を呈していた造田博は死刑が確定し、この福岡の事件は心神喪失で不起訴ですから、裁判所の判断のバラつき加減には呆れます
さて、殺人を犯したにもかかわらず心神喪失で不起訴になった場合、世間では「精神異常者を野放しにするのか?」と発言する人がいますが、上記の毎日新聞の記事にあるように被告は病院に収容されています(旧来も措置入院になるケースがほとんどでした)

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