石巻3人殺傷事件を考える7 死刑判決批判の愚

先日も書いたように、石巻で3人を殺傷した少年に仙台地方裁判所は死刑判決を言い渡しました
この判断にはさまざまな批判が寄せられています。中には傾聴に価する意見もあります
が、「少年に死刑判決を下すのはけしからん」とか、「裁判員たちに死刑判決という十字架を一生背負わせるつもりか」といった勘違いにもほどがある意見も少なくありません

司法の危機:裁判員制度は世界的な潮流に逆行して死刑を定着させるための政策?

上記のブログでは次のような主張が並んでいます

日本では8割以上の国民が死刑制度を支持していますが、先進諸国で死刑があるのは日本とアメリカだけ、そして死刑判決が増えているのは日本だけという情報は意外と国民に知られていません。そういう状況で死刑の賛否について国民的な深い議論など期待する方が無理というものです。ここは世界の潮流から外れた絶海の孤島のよう、まるで鎖国でもしているかのようです。

「世界が死刑制度廃止に向かっているのに日本は逆行している。けしからん」との主張は死刑廃止論者が好んで用いるレトリックです
そして死刑容認の意見が8割もあるのは、国民の間で死刑問題が十分に論議されていないからだ、と決めつけます
本当にそうなのでしょうか?
「凶悪犯罪を許さない」とする日本国民の総意として死刑制度が支持されており、死刑廃止論はそれを「議論不足」だと言いがかりをつけているだけなのでは?
死刑廃止論者は死刑が肯定され続ける限り、「議論不足」だと叫び続けるでしょう
議論の結果、死刑制度が支持されているにも関わらず、です
死刑判決の判断基準として用いられる永山基準について、「20年以上前の判断基準であるから見直すべき」だと前に書きました
永山基準がいつまでも神聖視され、これを遵守すべきだと主張する人たちも多いのですが自分はそう思いません
「結果の重大さ」や「被害の深刻さ」、「社会に与えた影響」、「遺族の感情」を重視した新たな基準を設けるべきでしょう
上記のブログで「裁判員は少年法の精神を理解していない」と批判していますが、少年法はその条文はともかく解釈・運用が時代と共に変遷しており、少年を無制限に特別扱いせよと規定したものではありません。少年は未熟であるがゆえに成人とは別に配慮が必要だとする趣旨であり、死刑判決を下してはならないと規定しているわけではないのです
ブログでは「永山事件の判決確定までに21年もかかった」と指摘し、死刑の判断は慎重であるべきだから、時間をかけ論議を尽くす必要があると言いたいようです
しかし、21年もかかった永山裁判の費用は莫大なものであり、その費用はすべて国民が税金で負担しているものです
21年もかけ、莫大な費用をかけてまでそのような裁判をやる必要があったとは到底思えません
すべての殺人事件で21年もかけて裁判をやっていたら、国の財政は破綻します
国民は相応の費用でしかるべき判決が出るのを望んでいるのであり、1件の殺人事件に億単位の裁判費用をかけるべきとは考えていないはずです
個別のケースとしてこの石巻の事件を考えてみます
公判で被告少年は反省を口にし、「自分のしたことを絶対忘れないで、一生償っていきたい」と発言しています。しかし、何をどうするのか、具体性はまったくありません
この事件を起こした少年は、「自分の欲求を力づくで押し通し、周りの人間を屈服させ従わせる」生き方をしてきた人間ですから、犯罪性向が根深く、他人の痛みや苦しみに対する共感に欠け、異常性や歪んだ人間性が顕著・事件の重大性を認識しているとは言えず、反省に深みがない。更正の余地無しとする判決は妥当なものと言えます
「自分の要求に従わない奴が悪い」と決めつけ殺害するのも厭わない人間ですから、更正を期待するのは無理があります
おそらく被告の少年は幼少時から「自分の思い通りにならない現実」に直面し、傷つき、屈辱を味わい、怒りに震える毎日を味わったのでしょう。であるからこそ、自分の心の痛みに過剰なまでに反応し、その怒りを他者にぶつける行動様式が身についてしまったのだろうと推測します
こうしたケースでは、「自分の心の痛み」には過敏なほど反応するのですが、「他人の心の痛み」はまったく感知しようとせず、関心を払いません
ですから被害者やその遺族の「心の痛み」など、想像もできないのです
公判で被告少年が口にした「自分のしたことを絶対忘れないで、一生償っていきたい」との発言は、死刑ではなく無期懲役の刑で服役する=償いという単純な思考の反映でしかなく、反省とは程遠いものだと言わざるを得ません
ですから、自分は石巻事件の裁判や判決がそれほど大きな失態、欠陥があったものだとは思いません

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