秋葉原17人殺傷事件を考える12 死刑求刑も無表情

秋葉原の歩行者天国にトラックで突っ込んだ上に刃物で通行人ら、17人を殺傷した加藤智大被告に対し、検察側は死刑を求刑しました
当たり前すぎる求刑ですが、随分と長くかかった裁判にようやく終りが見えてきたと言うだけで、特に感慨はありません

東京・秋葉原の連続殺傷事件で、殺人などの罪に問われた元派遣社員、加藤智大被告(28)の論告求刑公判が25日、東京地裁(村山浩昭裁判長)であり、検察側は「史上まれにみる凶悪犯罪で、悪魔の所業。命をもって罪をつぐなわせるのが正義だ」として、死刑を求刑した。2月9日に弁護側の最終弁論と被告の最終意見陳述を行い結審する。判決は3月24日に言い渡される。
昨年1月の初公判から1年。公判はこの日までで28回に及んだ。加藤被告は起訴内容を認めており、責任能力が争点。
検察側は論告で「わずか数分で7人を殺害し、10人に重軽傷を負わせたもので、人間性のかけらもない。歩行者天国を一瞬で地獄に変えた」と指摘。起訴前の精神鑑定では完全責任能力が認められたとし、動機については「自分を無視した者に対し自分の存在をアピールし、復讐(ふくしゅう)するために事件を実行した」と説明した。
そのうえで犯行態様や被害者数などを基準に死刑適用の是非を判断するとした最高裁の「永山基準」に照らして「犯行は執拗かつ残虐で、動機は身勝手極まりない。被害者遺族も極刑を切望しており、社会的影響も甚大だ」などとして、死刑以外の選択肢はないと主張した。
起訴状によると、加藤被告は2008年6月、秋葉原の休日の歩行者天国にトラックで突入。通行人をはねたり、ナイフで刺したりして、計7人を殺害、10人にけがをさせたとされる。
歩行者天国は今月23日、2年7カ月ぶりに試験的に再開された。
(日本経済新聞の記事から引用)


17人もの人を殺傷した大事件ですから、裁判に時間がかかるのは当然との見方もありますが、自分は賛成できません
繰り返し書いてきましたが、これは加藤被告と弁護人が意図的に裁判の引き伸ばしを図った結果です。異例とも言えるほど多くの証人を法廷に呼びつけ、証言させる展開を許した裁判官の指揮能力欠如にも問題があります
と、ここまでは何度も指摘したところですが、今一度考えなおしてみれば、この裁判で加藤智大被告が意図し、希求したものは何であったのでしょうか?
「世間への復讐」であるとも指摘できます
しかし、その心の内奥にあるのは母親への復讐なのでしょう
加藤被告は記事にもあるように、掲示板を荒らされた怒りを表現するため無差別殺人を敢行したと主張しています
ですが被害者の多くは納得していません。「たかが掲示板を荒らされたくらいで、なぜ大勢の人が殺傷されなければならないのか?」と訝るのは当然です
つまり「掲示板を荒らされたから」との主張は口実であり、本当の意図を隠蔽するための方便と見た方がよいのかもしれません
事件の動機、原因ではなく、事件の意味を読み解こうとするならば、加藤被告の行動は母親への復讐であり、面当てなのでしょう
母親の厳しい養育態度に対する怒りや反発が加藤被告の根底にあり、自分が殺人犯になることで母親を攻撃し、批判しようとする捨て身の反撃だったと考えられます。もちろん、そのさらに奥には母親に愛されたかったとの欲求があり、母親の厳しい養育態度を自分に対する否定であり、憎悪だと勘違いしたとも言えるのですが
ひどい悪戯をして母親を困らせ、母親を困らせることで愛情を確認しようとする行動は幼児にしばしば見られるものですが、加藤被告の無差別殺人もその延長であるとの仮説も立てられます
加藤被告の事件を上記のような意味でとらえるなら、裁判で調書の一部を否認し、多くの証人を公判に呼びつける展開になったのも不可解な事態ではありません
加藤被告が法廷に呼びたかった証人はただ1人、自分の母親だったのでしょう
どこまで加藤被告が意識していたのかは不明ですが、脳裏の一端には法廷で母親が泣きながら自分に謝罪をする姿を期待していたのではないでしょうか?
それは母親に対する加藤被告の勝利であり、同時に母親が自分を愛していた事実を確認するものでもあったはずです
ですが母親は出廷を拒み、代わりに裁判官らが青森に出向いて出張尋問をする措置が取られました
加藤被告は大いに失望し、舌打ちしたでしょう
被害者たちにしてみれば、そんな加藤被告と母親との拗れた関係にせいで17人もの犠牲者が出たのですから、何とも割り切れない思いになると推測されます
逆に言えば、加藤被告と母親との間に何らの和解が成立していれば、この事件は怒らなかったとも考えられます

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