秋葉原17人殺傷事件を考える14 被告に死刑判決

1年以上に渡って続いた加藤智大被告の裁判ですが、東京地方裁判所は死刑の判決を言い渡しました
裁判員裁判ですから、裁判員は1年以上もこの事件に関わるよう強制された形になります。裁判官は訴訟指揮権を発動し、被告側の要求する証人の出廷を必要な範囲に制限するなど、公判の迅速化に務めるべきでした
それを裁判官がしなかったため、犯罪事実そのものに争いがないのに、42人もの証人が公判で証言に立つよう強いられた格好です


2008年6月8日午後0時半ごろ、秋葉原の歩行者天国で人をトラックで次々とはねてナイフで斬りつけ、7人を死亡させた「秋葉原無差別殺傷事件」で殺人罪などに問われている加藤智大被告に、本日死刑判決が下りました。
弁護側は心神喪失などを理由に死刑回避を求めていましたが、東京地裁は検察側の求刑通り死刑を言い渡しました。
2011年3月24日、東京地裁にて、秋葉原無差別殺傷事件で殺人罪などに問われていた加藤智大被告(28歳)に死刑判決を言い渡しました。この事件は2008年6月8日午後0時半ごろ、秋葉原の歩行者天国の交差点にトラックで突入し5人をはねて3人を死亡させ、さらに12人を刃物で刺して4人を死亡させたもので、その後の歩行者天国自粛につながるなど社会的に大きな影響を残しました。
被告が捜査段階から一貫して起訴内容を認めていたため、被告の責任能力の有無が主な争点となっていました。検察側は起訴前の精神鑑定をもとにして「完全責任能力が認められる」と指摘し、「犯罪史上まれに見る凶悪事件で、人間性のかけらもない悪魔の所業」として死刑を求刑していました。
これに対して弁護側は「被告は事件当時の記憶がほとんどなく、何らかの精神疾患があった可能性がある」として心神喪失の状態にあったと主張。弁護側が申請した精神科医が「雪の中で裸足で外に出されるなど、母親の虐待があった」と証言したことから「不適切な教育を受けて感情をまひさせてしまい、掲示板に依存したことも考慮すべきだ」などと主張して死刑回避を求めていましたが、判決は検察側の求刑通り責任能力を認め、死刑が言い渡されました。
加藤被告は、法廷で「携帯サイトの掲示板で嫌がらせをした人にやめてほしいと伝えたかった」と説明し、検察側が動機として指摘していた自分の容姿に対する劣等感や、派遣社員で不安定であることに悩んでいたとの内容については否定していたとのことです。
(毎日新聞の記事から引用)


さて、当ブログでは事件の動機や原因を追求するのではなく、事件の意味を問うことを目的にしています
事件の意味を問う行為とは、加藤智大被告がこの事件(犯行)にいかなる意味を込め、何を表現しようと欲したか、考察するものです
事件の被害者、遺族は加藤被告の公判での供述に納得できず、「加藤被告は真実を語ろうとしない」と苛立ちを述べています
これまでも指摘したところですが、一般に裁判は「真実を明らかにする場」だとされます。しかし、これは誤りです。裁判は検察側の主張に弁護側が反論する形で行われ、裁判官が検察側の主張と弁護側の主張のどちらに分があるか判断を下す場です
ですらか、検察側の主張(事件の動機、経緯など)が必ずしも真実であるとは限りません。真実から外れていても、裁判官が検察側の主張を認めれば、それが真実として扱われるだけの話です
被害者や遺族の苛立ちを読み解くならば、「17人もの無関係な人を襲い殺傷したのだから、加藤被告にはそれ相応の動機や犯行の背景があるはず」との疑念が解消されない不全感でしょう
加藤被告は動機について再三、「掲示板を荒らさたからだ。掲示板を荒らすのを止めてもらいたかった」と述べています
被害者や遺族にしてみれば、携帯電話サイトの掲示板を荒らされた程度のことで無関係な人々を襲撃したとの説明では、到底納得できないのです
これは加藤被告が自分の本当の思いは隠したまま、掲示板荒らしを口実にして誤魔化そうとしているように思えてならないのでしょう
加藤被告が全く無自覚なのか、故意の隠蔽を図っているのかは判断できませんが、今回の事件の意味について当ブログで考察してきたところを要約すると、以下のとおりになります
幼少児から虐待とも言えるような母親の養育方針により、加藤被告は他人との情緒的な交流を図るのが苦手で、その結果社会での適応が円滑にできなかった。そうした自分の社会適応力の乏しさに起因する挫折は、母親に対する怒りとして加藤被告の心の奥に蓄積された
直接の事件のきっかけは掲示板を荒らされたり、勤務先を解雇されるという外在的な要因だが、加藤被告の内部に蓄積されていた母親に対する怒りが彼の怒りの発作の原動力であり、大勢の人を殺傷する無差別殺人へと駆り立てたと考えられる
無差別殺人を実行して自分が逮捕されれば、母親に対する復讐を果たせると加藤被告自身が事件前に明確に認識していたかどうかは不明ですが、逮捕後は冷静になって考える時間があったため、母親への復讐という意味合いを多少なりとも自覚できたかもしれません
「犯行時の記憶が不鮮明である」との理由で加藤被告は被害者や目撃者の供述調書に同意せず、あらためて多くの被害者や目撃者を法廷に呼び証人尋問するという手段に出ました。この背景について、「加藤被告が法廷に呼びたかった証人はただ1人、母親だけだったのではないか」との仮説を提示しました
つまり加藤被告は母親に問い質したかったのでしょう
「あなたの息子は17人もの無関係な人を殺傷する凶悪な犯罪者になった。こんな息子に育てたあなたはどう責任を取るつもりなのか?」と
自身の責任を棚に上げ、母親の責任を問うという勝手な考えですが
そしてそれは母親への復讐であり、あるいは加藤被告自身が母親から本当に愛されていたかどうかを問いたかったのだろうと思います
母親から虐待同然の仕打ちを受け、「自分は憎まれ、疎まれている」と加藤被告は子ども頃感じていたのでしょう。それでも心のどこかでは、母親に愛される自分を探し続けていたのではないでしょうか?
だからこそ、これだけの残虐非道な事件を起こし、母親の気持ちを確かめたかったのかもしれません
母親が法廷に立ち、涙ながらに加藤被告への仕打ちを謝罪し、本当は愛していたのにそれが伝えられなかったと言えば、加藤被告の気持ちは満たされたでしょう
しかし、現実には母親は公判に出廷して証言するのを拒み、裁判官が青森まで出向いて出張尋問しました
加藤被告は母親のそうした態度に失望し、舌打ちしたでしょう
こんな母子間の葛藤のため、17人もの人たちが犠牲になったというのはあまりに酷い話ですが、秋葉原の17人殺傷事件で加藤被告が表現しようとしたのは、上記のような母親への愛憎だったと考えます

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