実は危機的状況にある中国アニメ業界

ブログを始めた2009年頃は、「日本のアニメーション業界はもう下降線であり、これらから韓国、中国の時代だ。韓国も中国も政府が力を入れている」といった類の報道が目立ちました。主として韓国や中国のメディアが書いた記事で、日本のメディアがそれを後追いする形で取り上げていました
アニメーション産業育成のため経済特区を設けたり、大学にアニメーション関係の学科を設けるなど、中国や韓国が官民一体となった振興政策を推進していると報じ、それに比べて日本は…、という報道です
こうして、「韓国、中国のアニメーションが日本を圧倒する時代になる」のが既定路線であるかのような印象を振りまいていたように思います
さて、あらためて2011年4月現在の状況を考えてみると、韓国や中国のアニメーションが世界を席巻している事実はありません
ちょっと古くなりますが、2008年9月のマイコミジャーナルに中国アニメーション産業の問題点を分析した記事が掲載されているのを発見しました
長文のレポートですが、関心のある方は一読願います

過保護の末……中国アニメ産業が抱えてしまった問題とは

2008年の時点でこれだけ冷静に問題点を洗い出し、分析しているのですから驚かされます。2009年から2010年にかけて中国や韓国のアニメーションが日本を凌駕すると書いていたメディア関係者が、いかに実態を把握せず、絵空事を記事にしてのかが分かります
中国はアニメーション産業育成のため16の経済特区を設け、5400社ものアニメーション関連企業が乱立し、中国の大学の7割にマンガやアニメーション関連学科が設置されたわけですが、優秀な作品を生み出すに至っていない現状はこれまで度々指摘したとおりです
それは魅力的なキャラクターを生み出したり、オリジナリティのある新鮮なストーリーを書けないといった根源的な問題があるためで、その解決ができなければ模倣作品でお茶をにごすか、外国のアニメーション産業の下請けに組み込まれるしかありません。国の政策で保護されても、ビジネスとして採算を確保するのは難しいのです
中国国内ではアニメーション関連企業の淘汰が始まっているのかもしれません
日本のアニメーションを追い越すどころか、生き残るのも難しいのではないでしょうか?
日本のアニメーション制作企業との提携を急いでいるのは、こうした切迫した事情があるからだと思われます(その結果、中国のアニメーション企業は下請けの地位から抜け出せなくなる危険もあるわけです)
記事の中に登場する、中国でなら誰もが知っている有名なアニメーション「藍猫」といのは次のような作品です


「トムとジェリー」の影響なのか、オーバーアクションな動きがそっくりです。中国語のセリフが饒舌過ぎて(なおかつ、おっさんぽい声に)萎えますが
そして数少ないヒット作とされる「虹猫藍兎」は次のような作品です


これは作画に手間がかかっており、色彩も鮮やかですから、相当の制作費をつぎ込んでいるのでしょう
中国が目指す方向は日本風のアニメーションではなく、こうした動物キャラが活躍するディズニー風というかピクサー風の絵なのでしょうか?
日本のアニメーションと競合しない、別の方向を目指そうという判断は正しいのかもしれません。しかし、すべての中国企業がその方向でやっていけるわけもなく、ヒット作を生み出せないアニメーション制作会社は淘汰されるしかないのでしょう
大学でアニメーションを学んだ学生が毎年卒業するにしても、受け皿が限定される事態は避けられません
国の政策によって、大きな無駄を生み出した格好です
海外のアニメフォーラムには、「中国がアニメに力を入れたとしても成功するとは思えない。毛沢東の大躍進政策の二の舞だよ」と指摘する意見がありました
その通りだと自分も思います

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