「ヒカルの碁」騒動余話 手塚治虫文化賞

昨日、「ヒカルの碁」のマンガ、アニメーションについて、海外の反応を中心に書きましたが、そこで言及できなかったエピソードをあらためて書いておきたいと思います
「ヒカルの碁」は第7回手塚治虫文化賞にノミネートされ、大賞は逃したものの「新生賞」を受賞しています
この「新生賞」は従来の「マンガ優秀賞」に代えて新たに設けられた賞です
ぶっちゃけてしまうと、大賞候補と下馬評の高かった「ヒカルの碁」が大賞から漏れてしまうと各方面(漫画ファン、出版社など)から批判が寄せられるのを予期し、その対策として「新生賞」なるものを用意したのだと思われます
第7回の手塚治虫文化賞は高野文子の「黄色い本」に与えられました
賞の選考委員である漫画家いしかわじゅんのエッセーによれば、集英社の少年ジャンプ編集部の人間から、「おたくら歪んでいるよ。高野さん、何部売れたの? 『ヒカルの碁』は2千万部売れたんだぜ」と嫌味を言われたそうです
ジャンプの編集部にすれば、2千万部を売った大人気シリーズの「ヒカルの碁」が手塚治虫文化賞を獲って当然、との思いがあったのでしょう
第7回の手塚治虫文化賞の選考に当たってのコメントは以下のサイトを御覧ください

第7回手塚治虫文化賞選考委員のコメント集

審査の結果、「黄色い本」が26ポイントを獲得。次点は「ブラックジャックによろしく」で15ポイント。3位が「ヒカルの碁」で14ポイントでした
少年ジャンプ編集者の怒りはともかくとして、審査の段階でこれだけ差がついてしまったのはなぜか、を考えるべきでしょう
確かに1番売れたマンガ=もっとも読者に支持されたマンガだとする考え方もあります
選考委員の1人であるマット・ソーン(京都精華大学芸術学部マンガ学科助教授)は、選評の中で、「一部の大人にしか読まれない作品より、多くの子どもに読まれ夢を与えるこの『ヒカルの碁』こそ、日本の児童マンガを発展させた手塚治虫の名前が付いているこの賞にもっとも相応しい作品だと思います」と書いており、これも1つの見識でしょう
高野文子の作品は確かに一部の大人たちに高く評価され、「現代漫画は、ついにここまでの表現を手に入れてしまったのかと驚嘆させられる。漫画の歴史と手法を解体して再構築し、まさに高野文子氏だけの表現を作り上げた」とか、「漫画表現が小説や映画と同じように人間あるいは人生の何たるかという“深さ”を創造できることを感じた。頻繁に変わる描写アングル、素朴な人物、表情から伝わる感情表現の深さなど、その上品な絵も魅力だ」と激賞されています
しかし、多くの読者が手にする作品ではありません
サブカルオタク好みのマニアックな作品が手塚治虫文化賞に相応しいのか、と批判する意見が出るのも当然でしょう
そこが賞選考の難しさでもあるわけですが、審査結果ではっきりと票が別れた以上、後からどうのこうのと難癖をつけても無駄です
結果として、「ヒカルの碁」は手塚治虫文化賞を逃したわけですが、作者や出版社に多くの利益をもたらしましたのですから、商売として大成功を収めたのは事実です
高野文子の作品は手塚治虫文化賞でその存在を知られるようになりましたが、売上が急増したとまでは言えず、マニアックな作品のままです
高野文子の作品に対する評価は以下のウェッブサイトを御覧ください

松岡正剛の千夜千冊 高野文子「絶対安全剃刀」

松岡正剛は読み誤りの名人ですが、ここでも大いにかましてくれています
「そういう少女世界について、いかにフロイトやラカンや河合隼雄や岸田秀が役に立たないかということは、すぐにはっきりした」と書いていますが、そもそも松岡正剛は以前にも指摘しましたがフロイトやラカンを読み誤っている人です。精神分析が何たるかをまるで理解出来ていない人ですから、こうした文章を平気で書いてしまうのでしょう
だからといって高野文子の作品に対する評がズレていると言いたいのではなく、こうした読みはきわめて素直で、正当な受け止め方であると感じます(つまり、それだけ精神分析の考え方は異端であり、異質なものだと言えるのです)

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