劇場版「空の境界 俯瞰風景」を見た感想

最初に書いておきますが、自分はこのアニメーションのタイトルを「そらのきょうかい」だと思っており、「からのきょうかい」だと知ったのはブログで取り上げようとあれこれ情報を検索し始めたときです
那須きのこの小説が原作なのですが、そちらは読んでいません
原作の小説については詳細な批評があります

空虚に巣食う魔―― 笠井潔と『空の境界』

批評と言うよりも笠井潔への罵倒を呼ぶべきでしょうか?
しかし、この批評がまるっきり無駄だというものではありません。「空の境界」が物語として破綻している事実をきちんと指摘しているからです
ですが、それで劇場版「空の境界」がアニメーションとして破綻した凡作だという結論にはなりません。実に興味深いところです
「原作が破綻しているのに、アニメーションは鑑賞に値する作品になっている」という現象がなぜ起きたのか、それを考えたいと思います
たとえば自殺を巡って、長い独白のシーンがあります

遺書がないのはなぜだろう。遺書がないのでは、人は自ら死なない。
遺書とは、極論として未練だ。死を良しとしない人間がどうしようもなく自殺する時、その理由として残すもの、それが遺書のはずだ。
遺書のない自殺。
遺書を記す必要がない。それはもうこの世になんの意見もせず、潔く消えるという事。
それこそが完全な自殺だ。完全な自殺とは遺書など初めから存在せず、その死さえ明らかにはされない物を言うと思う。
そして、飛び降りは完全な自殺ではない。
人目につく死はそれこそが遺書めいてしまう。残したい事、明らかにしたい事がある故の行為ではないのか。だとしたら、何らかの形で遺書は用意されているのが道理だ。
ならばどうなのだろう。それでも遺書らしき痕跡さえないというのなら―――第三者が彼女達の遺書を持ち去ったのか。いや、それでは自殺ではなくなってしまう。
ではなにか。考えられる理由は一つ。
つまり、文字どおりソレは事故なのではないか。
彼女達は初めから死ぬつもりなどなかった。それなら遺書を書く必要はない。


主要な登場人物である蒼崎橙子の発言、黒桐幹也の独白には突込みどころが満載なのですが、視聴者の多くはその発言の内容を頭に留めず聞き流すのではないでしょうか?
おそらく「俯瞰風景」を視聴している者にとって、蒼崎橙子の語る自殺についての薀蓄も黒桐幹也の提示する疑問も、Kalafinaの歌や梶浦由記の音楽と同じくドラマを彩るBGMとして耳に響いており、セリフそのものに大きな意味はないと受けとめられているのではないかと考えます
そう思えるくらい、自分は主人公である両儀式の言動に意識が向いていました
彼女のキャラが際立っているがゆえに起こった現象でしょう
「空の境界」はひたすら両儀式の存在の有り様を表現するドラマだと言えます。事件は両儀式の存在を彩る役割に過ぎず、中心に位置するものではありません
もちろん原作とアニメーションを比較して、あそこがダメ、ここがおかしいと指摘しているコアなファンもいるわけですが、原作厨からの批判はいつものことです
ここで思い当たるのは「攻殻機動隊」の主人公草薙素子の存在です。公安9課がどのようなどのような事件に遭遇しようとも草薙素子はブレず、彼女の生き方、行動様式を貫こうとします
草薙素子の存在の有り様こそがドラマの中心であり、事件は彼女の存在を際だたせるためのたせるため道具にすぎません
劇場版「空の境界」のシリーズを連続で見てしまったのも、両儀式の行き着く先を見定めたいとの思いに駆られたためでしょう
物語が綻び、辻褄の合わない展開になっていようとも、彼女のたどる道のその先を確かめずにはいられないと思わせるものがあったからです
その正体が何であるのかは分かりませんが
アニメーションで主人公のキャラが立っているのは当然ですが、「空の境界」の場合は異例なのかもしれません
多くのアニメーションの場合、主人公のキャラを立たせるため強力なライバルを配置します。「あしたのジョー」の矢吹丈に対する力石徹という存在です。その結果、脇役であるはずの力石徹の存在もまた際立ち、主役に劣らぬ人気を得るケースも起こり得ます
しかし、「空の境界」では両儀式に匹敵するキャラはいません。荒耶宗蓮ですら式の引き立て役であり、対等な位置にはいません。荒耶宗蓮は両儀式を道具としてしか見ていなかったため、式に匹敵する位置には立てなかったのです
荒耶宗蓮が両儀式を自分と対等な立場だとみなしていたなら、また別の物語になったはずです
決してとっつきやすい物語ではない「空の境界」ですが、原作も読まないまま、設定もよく分からないまま見始めて、結局シリーズを全部見る羽目になりました。なぜこれほどまで惹きつけられたのか、上述した内容では説明しきれていないと思います
が、ここで一旦区切りにします
さて、「空の境界」のブルーレイボックスセットがアメリカでも発売され、そこそこ売れているようです

北米版 空の境界 売れてるみたいでよかったね

海外の視聴者がこの物語に何を見たのか、そちらの方にも興味が湧きます

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