恋愛で嘘に嘘を重ねる人への対処の難しさ

産経ニュース関西版のウェッブサイトに精神科医片田珠美さんのエッセイ?が掲載されています
彼女はパリ第8大学の精神分析学部に留学し、ラカン派の精神分析を本格的に学んでいますので、自分の大先輩ということになります(自分は日本国内でしこしことラカン派の精神分析を学んでいる人間です)

片田珠美(1)ニセ医者の嘘がバレた理由

さて、心理臨床の場ではしばしば平気で嘘をつく人と対峙する場面に遭遇します
嘘の種類も嘘をつく動機もさまざまですが、ある程度類型化して考え、演技性の人格障害だとか、妄想型の統合失調症といった見当をつけた上で対応します
ただ、嘘を見破ればそれで何かが解決するというものではなく、多くの場合はさらなる嘘を重ねて取り繕おうとし、嘘をついている自分を問題だ認めるような人はほとんどいません
職場や学校では嘘をつく人物をとことん問い詰め、その嘘を暴き立てた上で、「嘘をついていました。ごめんさない」と言わせることで解決を図ろうとするケースがあるのですが、それ自体が根本的な問題の解決に結びつく可能性は限りなく低いと考えます
やはり嘘をつく背景を読み解き、嘘を生み出す無意識レベルでの主体の欲望を考察する必要があります
要するに未達の願望や、喪失して回復困難な家族の絆とか、心の内奥に抱え込んでいる「こうだったらいいな」との思いを言語化する(無意識レベルから意識レベルへと引っ張り上げる)作業が必要になるのです
それをせず単に「嘘ばかりついている」と断罪したところで解決にはなりません
自身の体験として、ストーカー行為を繰り返している若い男性と関わったケースを紹介します
相手の女性に対する一方的な思い入れは妄想に近いものがあり、いわば嘘で固めた世界に執着し、周囲の人間が悪意を持って自分と彼女を引き離そうとしていると怒り、暴れる男性でした
対処法として、この男性には彼女との出会いから恋愛の経過を自伝風にノートに記述させる方法を用いました
それまで不満を口にし、粗暴な行動も見られた男性は打って変わったように自伝に没頭し、「なかなか上手く書けない」とこぼしつつ、ノートにびっしりと自らの物語を書くようになりました
毎日数ページも綴られる物語は事実を大幅に脚色したものであり、まるで恋愛ドラマのような展開でした
そのノートを読ませてもらいながら彼と会話をするのが日課になったのですが、嘘の部分や矛盾した部分は敢えて指摘せず、「この時、彼女とはどんな会話があったの?」と投げかけたり、「この後はどうだったのかな。もう少し詳しく書いてもらいたい」と持ちかけるようにしました。物語の一読者として応対する立場です
細かな経過は省略しますが、物語を綴る途中でこの男性は自分が執着しているのが彼女という存在ではなく、うまくいかない現実(それほど整った表現ではありませんでしたが)であり、うまくいかない現実を受け入れるのが怖かったのだと語るようになりました。その後、物語を綴る意欲は減退し、彼と彼女のドラマは終わりを迎えたのです

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