佐世保高1女子殺害事件を考える2 快楽殺人説

長崎県佐世保市で女子高生が同級生によって殺害され、遺体の一部が損壊された事件について2度目の言及になります
こうした猟奇的な殺人事件があると、有識者と呼ばれる人たちのところへメディアが電話をし、コメントを求めます。現時点で事実関係を断定する要素は乏しいのですが、紙面を構成する上でも有識者のコメントは欠かせません
ですから判断材料の乏しい中で、有識者は事件に対する見識を披露する求められるわけであり、気の毒な面もあります
さて、今回の事件の意味をどう読み取るのか、メディアに搭乗した有識者のコメントを一部紹介します


「純粋に人を殺してみたいという欲求と、人生や自分自身に対する絶望感があったのかもしれない」。新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)。
さらに「恨みや金銭という動機がない『純粋殺人』は大人に多い。今回は容疑者が少女だったという点に衝撃を受けた」と話した。
一方、立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「母の死をきっかけに、母親がいる被害者に憎悪を募らせた結果の抹消願望と、快楽殺人の混合型に至ったように見える」と指摘する。
平成9年に起きた神戸市の連続児童殺傷事件の加害少年が、祖母の死をきっかけに精神的に不安定になったことを挙げ「思春期の子供にとって、身近な人の死は大きな影響がある。周囲の大人が子供の視点で気を使うべきだった」とした。
元家裁調査官の佐々木光郎・静岡英和学院大非常勤講師(少年非行論)は「勉強面などで親の期待に応えたいという思いが強かったのではないか。ありのままの自分を表に出せず、母親の死などで抑え込んだものが爆発した」と、教育や家庭の環境の影響を指摘した。
(産経新聞の記事より引用)


恨みや金銭という動機がない「純粋殺人」は大人に多い、との指摘には賛成できません。思春期の殺人が通過儀礼という側面を持ち、人を殺す経験を通じて自分が何者かになる、あるいは何を実現するとの衝動に駆り立てられた結果であるのは珍しくないわけで
また、本件が快楽殺人と呼ばれるものに該当するかどうかは、犯行に至るまでに少女がどのような物語を描いていたかを知る必要があります。サディズムとマゾヒズムに彩られた物語を心の中に描き、その実現を図ったとすれば快楽殺人と言えます
佐世保市で小学6年生の女児が同級生を殺害した事件では、「バトルロワイヤル」という物語が背景にあり、同級生同士が殺し合う展開の中に性的な快楽を見出していたと考えられます。本件ではどうなのでしょうか?
「親の期待云々」の佐々木光郎・静岡英和学院大非常勤講師のコメントは、あまりに一般論すぎます。少女のパーソナリティを問題にしたいのでしょうが、判断材料がないので一般論を述べるにとどめたと思われます
事件を起こして逮捕された少女は小学生時代、同級生の給食に漂白剤を混入させる嫌がらせを数回繰り返していたとの報道があります
以来、教師が毎日(週末は除く)家に電話をし、少女の様子を聞き取っていたのだとか。高校に入学後独り暮しを始めた少女のところにも、高校の担任やカウンセラーが月に1、2回家庭訪問していたと言われます
こうした行動から読み取れるのは、「成績も優秀で家庭的にも恵まれているが、内心に問題を抱えた少女」という自己イメージを演じていた可能性です
弱みをさり気なく示し、誰かから特別扱いされたい(この場合は両親であり、担任の教師)との欲求があって、優等生だけど奇矯な行動に出る自分を演じていたのかもしれません
この欲求は友人に対しても向けられていた可能性があります。本当の自分を分かってほしい、などと言い出し、いきなりディープな人生相談を持ちかけ、自分の内面をさらけ出して(それも演出)、友人にがっちりと食いついて離そうとしない…
殺害された同級生の女子生徒は、そうして犠牲になったとも考えられます

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