佐世保高1女子殺害事件を考える6 精神鑑定

佐世保市で同級生の女子高生を殺害した容疑で逮捕された生徒は、地検の判断で精神鑑定が実施されることになっています
世間の注目を集めるような猟奇殺人など、その犯行動機が不可解なケースではしばしば起訴前に精神鑑定が実施されます
ただし、精神鑑定のほとんどは被疑者に責任能力があるかどうかを問うものであり、犯行時に精神病などの症状によって心神喪失であったかどうかを推定するのが目的です
したがって、佐世保の事件のような「犯行動機の解明」を精神鑑定に求めるのが適切かどうか、判断が分かれます。言い換えれば、鑑定を実施する精神科医が心神喪失か否かの判断からさらに踏み込んで、犯行動機にまで検討するかどうか、その取組如何にかかっていると言えます


少女の凶行に囁かれる「性的サディズム」…人体を解体したかったという異常欲求、長崎同級生殺害の惨劇を防ぐことはできなかったのか
少年犯罪に詳しい精神科医の町沢静夫氏は「『性的サディズム』の傾向がある」と少女の心の状態を分析する。性的サディズムとは、人や動物を殺したり、遺体を損壊したりする残虐な行為で快感を得る病的な気質。神戸・児童連続殺傷事件で逮捕された当時14歳の少年の犯行に至った原因とされたことで、一躍知れ渡った言葉でもある。
「今回の犯行には心理的な背景があり、その解明が捜査には欠かせない。精神鑑定をしっかり行うべきだ」と南山大法科大学院の丸山雅夫教授(少年法)は主張する。



上記の記事では性的サディズムに言及しているのですが、こうした見解を鑑定医が取り入れるかどうかは不確定です
最近の傾向としては未成年者の刑事事件で、「発達障害」との判断を下すケースが目立っており、知的な障害は認められないものの社会性の獲得やコミュニケーション能力の獲得といった年齢相応の発達に遅滞が見られると指摘されています
鑑定医がどのような理論、見識をベースにして鑑定意見を取りまとめるか、人それぞれであり、その典型的な例が幼児連続殺害の宮崎勤の精神鑑定です。宮崎事件では3通もの精神鑑定書が法廷に提出され、その中身を巡って激しい論議がありました
しかしそれもまったく無駄ではなく、1つの特異な事件が幾つかの異なる見識によって検討され、議論されるのは学問的には十分に意味があります
ジャーナリストの中には3通もの異なる精神鑑定書が提出されたことを批判し、「分かりにくい」と切り捨てる向きもありました。が、犯罪の動機などという心の内奥に絡む問題が「分かりやすい」ものであるはずもなく、「分かりにくい」と否定するのは愚の骨頂ですし、分かりやすさだけを追い求めるジャーナリスムなど世の中の役に立ちません
さらに精神鑑定のベースになる精神病理に関する学説がいくつもあり、使われる用語も統一されていない点を批判する報道もあります。が、これを1本にせよ、と言われたところで精神科医は戸惑うだけでしょう
今回の佐世保の事件に関して言えば、この先、家庭裁判所における少年審判の際に再び精神鑑定が実施される可能性がありますし、家庭裁判所が検察官送致決定をして起訴された場合、刑事裁判の場で再び精神鑑定が実施されるのかもしれません
つまりは幾つもの鑑定書が作成されるのであり、法廷の内外で彼女の犯行動機を巡って議論されるのでしょう
個人的な意見として、「広汎性発達障害」との診断が下されたとしても、それは何の説明にもなっていないと考えます。あくまでも表面に見える症状を指摘しただけであて、犯罪との関係・力動がほとんど検討・検証されていないからです

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