自分を捨てた父親を探したら殺人鬼だった 「ゾディアック事件」

アメリカには無差別大量殺人、連続殺人、猟奇殺人といった類の事件が数多くあります。アメリカでなぜそのような凶悪な事件が次々と起こるのかはさておき、アメリカの犯罪史上謎の多い事件として有名な「ゾディアック事件」にまつわるエピソードを取り上げます
ニューズウィーク日本版10月13日号に、「自分を捨てた父親を探したら殺人鬼だった」と題する記事があります
幼いころ養子に出され、養父母に育てられた男性が自分の出自をたどり、実の父親がアメリカを震撼させた未解決の連続殺人事件の犯人だとの事実を知る、との経緯を紹介しています
記事の大元になっているのはゲーリー・L・スチュワート著「殺人鬼ゾディアック―犯罪史上最悪の猟奇事件、その隠された真実」(亜紀書房)です
著者であるゲーリー・L・スチュワートこそ、自分を捨てた実父が殺人鬼ゾディアックであると突如、知ることになった人物です


あの日のことを、あの体の中を恐怖が突き抜けていく感覚を、私はまるで昨日のことのように覚えている。(中略)私はリビングルームに行き、椅子に座り、テレビのリモコンを取り、チャンネルをどんどん進めてA&Eチャンネルに合わせた。私は犯罪のドキュメンタリーが好きだが、そのときは迷宮入りしたゾディアック殺人事件の特番をやっていた。その連続殺人について私は何も知らなかったので、面白そうだと思った。
人生が変わるとは思わなかった。
それは一瞬のうちに起きた。(308~309ページより)
テレビに映し出されたゾディアックの似顔絵が、自分に、いや父親であるヴァンにそっくりだったのだ。こうして父親が歴史的な殺人犯――それも犯人不明でいまだ未解決の連続殺人事件の犯人――だったことを知った著者は、さまざまな手段を使って捜査関係者、遠い親戚、あるいは父親の学生時代の友人などを探し、ゾディアックの本質に近づこうとする。

自分を捨てた父親を探したら、殺人鬼だった


まずゾディアック事件がいかなるものか、以下のサイトで事件の概略を紹介していますので参照願います

殺人鬼ゾディアック

アメリカ西海岸を中心に37件もの殺人をやってのけたと、手紙で告白したゾディアックですが、直接彼による犯行と確認されているのは5件とされています
犯行声明を送りつけるという劇場型犯罪なのですが、1974年以降は手紙が途絶え、事件も未解決のままになっています。その後、ゾディアックを名乗る人物が事件を起こしているものの、一連の犯行とは無関係だと判明しています
さて、上記の本でゲーリー・L・スチュワートは実父アール・ヴァン・ベスト・ジュニアこそが殺人鬼ゾディアックだと断定しているものの、それは犯人の似顔絵と実父が瓜二つだからとの理由です
また、実父の残虐かつ冷酷な性格が殺人鬼ゾディアックそのもの、と決めつけています。しかし、警察はアール・ヴァン・ベスト・ジュニアを真犯人だとは断定しておらず、公式には未解決事件のままです
上記のニューズウィーク日本語版記事は日本人ライターの手によるもので、わざわざ今の時期に掲載させた理由が分かりません。ゲーリー・L・スチュワート著「殺人鬼ゾディアック―犯罪史上最悪の猟奇事件、その隠された真実」は昨年出版されており、書評としてはタイミングがずれているようにも感じます
想像するに、埼玉県熊谷市で5人を殺害したペルー人、ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン容疑者の話から影響を受けたのかな、という気もします。ナカダ容疑者の兄はペルーで無差別大量殺人をやらかし、服役している身ですから
さて、ゾディアック事件はさまざまに脚色され、映画「ダーティ・ハリー」やドラマ「クリミナル・マインド」などの連続殺人犯のモデルになっています。猟奇殺人の遺体発見から警察への犯行声明、さらなる犯行の予告といった展開をたどる刑事ドラマは、このゾディアック事件が原型になっていると言えるわけです
事件が未解決で、犯人像が曖昧なため脚色しやすいのかもしれません。被害者とその遺族にとってはたまったものではないのですが

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