多摩川中1殺害事件を考える13 情状鑑定の意見

川崎市の多摩川河川敷で中学一年生の上村遼太くん(当時13)が殺害された事件は、3人の被告にそれぞれ有罪の一審判決がくだされ、1つの区切りがついています
それでも、「なぜこんな事件が起きてしまったのか」という思いは簡単には解消されません
雑誌「FRIDAY」がこの裁判の主犯格だった船橋龍一被告の情状鑑定を担当した、駒沢女子大学の須藤明教授のコメントを記事にしていますので、紹介します
この裁判では臨床心理士による心理鑑定も行われているのですが(当ブログでも取り上げました)、情状鑑定はそれとは別に行われたものと解釈して言及します


川崎中1殺人事件の「鑑定人」が明かす 主犯少年と9回12時間の面会
(前略)
「事件直前、上村くんは『態度が生意気だ』という理由で主犯格のAからボコボコに殴られることがあった。その後、上村くんを可愛がっていた別の不良グループが仕返しをしにAの自宅を二度にわたり『急襲』。Aは『なぜカミソン(上村くんのあだ名)だけが(不良グループに)好かれるんだ』と怒りとともに恐怖心を抱き、犯行に至ったのです」(全国紙社会部記者)
主犯格のA、一歳年下で上村くんが「兄のよう」と慕っていたB(18)、Aの小中学校時代の同級生であるC(19)の三人に対する一審判決が出揃ったのは、2016年6月のこと。公判では、家裁調査官としてこれまで約三千人の少年を見てきた須藤教授がAの情状鑑定を実施した。計9回、12時間にわたる面会を通じ、どのような実像が浮かび上がってきたのか。
「私がAと初めて会った時には、すでに身柄を拘束されて半年が経過していました。日々誰とも接触することがなければ、大人でも心細かったりするわけです。将来の事、今置かれていることへの不安もあり、『話を聞いてほしい』『好印象を与えたい』という感情が芽生えてもおかしくないはずなのですが、Aの場合はまったくそれが出てこなかった。感情を表に出さず、違和感を覚えました。しかし、私の経験上、それは決して珍しくはありません。『お願いします! 反省しています!』と擦り寄ってくるタイプの子がいる一方で、最初から反抗的な子もいるのです。Aのように他者との関係で良く思われることを放棄してしまっている子は素っ気なく、最低限の答えしか言わない。妙に壁を作っていますが、その壁の向こうには『何か』があるはずなのです。『話をしていくのは時間がかかるだろうな』と直感的に感じました」
須藤教授は事件の話を中心に対話を重ねた。3~4回目に会った時、生い立ちや少年時代のことを尋ねた須藤教授に対し、Aは「関係ないでょ」と言い捨てたという。
「私が公判で証言したように、実は、Aは中学時代にいじめを受けており、その葛藤の中で事件を起こしたわけです。彼はその部分は触れられたくないのでしょう。話していくうちに中学時代に他校のヤンキーに捩じ込まれ、どちらかと言うとやられちゃうタイプだったと、『追い込みかけられていたんだ』と言うのです。それは彼にとって屈辱的な体験だった。でも、そのことと今回の事件は彼の中では別々のことという考えでした。私は彼に『中学時代のトラウマ的な体験と今回の事件の関連性はあると思うし、そういうふうに裁判では説明するよ』と言いました。Aはそれ以上否定しなかった。だから、どこかで分かっているのかもしれない。親のことも同様に自分から積極的には言わなかったですね」
証人として公判に出廷した父は、Aに対する幼少期時代からの体罰を明らかにしている。
「門限を破るなどした時は平手打ちで数回。顔を避けようとした時には顔に蹴りを入れるなどしていたのです。Aの母はそれを止めることもありましたが、父のエキセントリックな性格ゆえにハンガーで叩くこともあったと証言しています」(前出の全国紙社会部記者)
「家族関係や本人の発達その他を見ていくために家族の絵を描いてもらう家族画、自己像を探るバウムテスト、ある書き出しの言葉に続けて文章を作る文章完成法テストといった心理テストを実施しました。その中で、父の証言にあったような暴力を振るわれた一方で家族に対する良い思い出も持っていることがうかがわれたのです。さらには,これらテストへの取り組みの熱心さから,指示を理解すれば一生懸命に臨む彼の長所も見て取れました。面会を重ねていくにつれ、徐々にAの言動に変化が見られることがありました。通常の面会は一時間。でも、今回は関係者の取り計らいにより、二時間まで面会できることになっていました。最初のうちは『おはよう』と言っても『うん……』みたいな感じだった。大人からすれば可愛げのない子供ですよ。ある日、Aと話している中で二時間近くなったので『今日はこれくらいにしよう』と言ったところ、Aは『もういいの? 他に聞きたいことがあれば聞いて。まだ少し時間あるよ』と言うわけです。意外でしたね。鑑定が後半にいくにつれ、私との関係も変化してきました」
(以下、略)


長文の記事なので、一部のみ引用します。全文を読みたい方は上記のアドレスから「FRIDAY」のサイトへアクセス願います
須藤教授は言うまでもなく拘置所内での船橋被告しか見ていないのであり、事件当時の生の姿を知りません
ですから、船橋被告の一面だけを語っているわけです
情状鑑定そのものは被告の生立ち、生育環境などの負因を列挙し、情状として斟酌すべき事由があると明らかにし、量刑に際して配慮を求める目的でなされるものです。従って船橋被告を擁護する狙いで行われたのであって、その意味では被害者である上村君への配慮を欠いているのはやむを得ないのでしょう
ただし、船橋被告の事情によって罪一等を減じる必要があったのか、との思いは残ります。上村君の死に対して船橋被告を全面的に責任を負うべきであり、「誰かに止めてほしかった。止められれば殺害しなかった」などという釈明は論外です
3人の被告が互いに見栄をはり、強がり、犯行へと突き進んだ内幕が明らかになっても、それで何かが解決したわけではありません
求刑は懲役12年以上15年以下の不定期刑でしたが、判決では2年割り引いて懲役9年以上13年以下の不定期刑になっています。この2年の割引が情状酌量の結果だとすれば、実に腑に落ちない判断です
船橋龍一被告の父親は上村君の両親に謝罪もせず、賠償の話もないと巷では伝えられています。船橋龍一被告の懲役期間を2年割り引いて、何の意味があったのかと思うばかりです

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