福岡女児遺棄事件を考える6 性犯罪更生プログラムは有効か?

先日、無期懲役の判決を受けた内間利幸被告について、西日本新聞は刑務所内で実施されている性犯罪の再犯を防ぐための指導プログラムが有効だったのか、と疑問を提起する記事を掲載しています
西日本新聞のこうした視点は他の新聞と一線を画すものであり、注目されます


福岡県豊前市で昨年1月、小学5年の女児=当時(10)=を連れ去り殺害したとして殺人罪などに問われ、福岡地裁小倉支部で3日に無期懲役判決(求刑死刑)を受けた内間利幸被告(47)は、過去にも小学生女児を狙ったわいせつ事件を起こし、再犯を防ぐためのプログラムを刑務所で半年間受けていた。悲劇が繰り返されたことから、プログラムの実効性に対する疑問の声が上がっており、薬物治療など踏み込んだ対策の必要性を訴える声もある。
刑務所に性犯罪の再犯防止プログラムが導入されたのは2006年。性犯罪の前科がある男が04年に奈良県で起こした女児誘拐殺人事件がきっかけだった。プログラムでは、犯行に至る行動と思考パターンを省みさせる「認知行動療法」を施し、性衝動をコントロールできるようにするのが狙い。だが、小学生女児などを狙った性犯罪で過去に約12年間服役していた内間被告は公判で「(性衝動の制御方法は)覚えていない」と振り返った。
カナダなど欧米のプログラムに比べ日本では刑務所での実施期間が短く、出所後のフォローの乏しさも指摘されており、刑事政策に詳しい藤本哲也常磐大大学院教授は「プログラムがより有効に機能するよう環境を整える必要がある」と訴える。
子どもを狙った性犯罪は再犯の可能性が高いとされ、日本では13歳未満を対象にした性犯罪者に限り、法務省が出所時の情報を警察庁に提供。警察が所在確認し面談などを行う。強制力はなく、昨年末で全国に815人いる対象者のうち41人の所在が確認できていない。内間被告は警察から連絡を受けていたが、再犯を踏みとどまれなかった。
米国の一部の州は、性犯罪者の名前や住所を公開し、衛星利用即位システム(GPS)で所在を確認。韓国では子どもへの性犯罪者に、裁判所が男性ホルモンを低減させる薬物投与を命令でき、米国などでは本人の同意の下に治療できる。
日本では、人権上の問題などから性犯罪者の情報公開をしておらず、薬物治療も民間での実施にとどまる。薬物療法を行うNPO法人「性障害専門医療センター」(東京)の福井裕輝医師は「きちんと薬物治療を受けている人の再犯はゼロ。性衝動に苦しんでいる加害者もおり、受刑中から出所後まで一貫して治療できる法的枠組みが必要だ」と話す。


刑務所側がこうした治療プログラムに消極的である理由は、日本刑務所が「刑の執行」=定役を科す=刑務作業をさせるという、法律上の規定に基いて長年運用されてきた結果です。刑務作業に従事する時間を削り、治療プログラムを遂行するのは「受刑者を遊ばせておくことになる」と現場の刑務官は考え、積極的に取り組もうとはしません
更生するか、再犯に走るかは受刑者次第であり、刑務所は受刑者に定められた服役期間、刑務作業をさせるのが役割だとする建前に支配されているがゆえに、1ケ月を超えるような長期の治療プログラムには抵抗が根強いのです
また、欧米の刑務所で実施されているさまざまな治療プログラム(アルコール依存、薬物依存、家族への暴力・虐待、性犯罪などなど)をそのままパッケージとして導入しても、日本で効果を挙げられるかどうかは疑問です
話が戻りますが、アメリカの刑務所では刑務作業を「強制労働=奴隷労働」だとする風潮がありますので、刑務所内での作業は受刑者の任意であり、義務付けられていはいません。そのため服役期間を無為に過ごさせるのではなく、各種治療プログラムを受けさせよう、との考えが定着したと考えられます(とは言え、刑務所は過剰収容状態であり、治療プログラムが円滑に遂行されているとは言い難い現実が有ります)
さて、日本でも薬物依存や性犯罪に関して、より踏み込んだり治療プログラムを実施する方向へと動くのは賛成です。薬物による治療も、検討されてしかるべきでしょう

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