「宮崎勤精神鑑定書」を読み解く1 多重人格説

座間市での9人殺害事件でも、一部のメディアは「第二の宮崎事件」などといった表現を用いたりします。読者にアピールするため、耳目を引くような見出しを用意する必要があるからでしょう。が、改めて言うまでもなくこの2つの事件はまったく別種類であり、関連性など挙げたところで何の役にも立ちません
今ではもう古典のような存在である宮崎勤による幼女連続殺人事件ですが、現時点でもさまざまな誤解、偏見、憶測で語られているのが実情なのでしょう
先日は警察関係者から、逮捕後の取り調べ中に宮崎が「ネズミ人間」の話など持ち出していなかった、との証言が出たと当ブログで取り上げました
そこで自分なりに宮崎勤事件について振り返り、何らかの記述としてまとめておこうと考えた次第です
もっとも、取り調べから裁判、死刑執行に至るまで事件全体を総括する、などという真似はできませんので、自分の関心の範囲にとどめることにします
手始めに毎日新聞記者である瀧野隆浩著「宮崎勤精神鑑定書 多重人格説を検証する」(講談社)をベースに進めます
この本はサブタイトルにもあるように、宮崎勤は多重人格だったのかもしれない、との仮説に立って書かれています
根底には内沼・関根鑑定と呼ばれる「解離性人格障害(いわゆる多重人格)」と判断した鑑定書の存在があります
宮崎勤に対して行われた精神鑑定は慶応大学チームの精神科医によるものが最初であり、「人格障害ではあるが責任能力があった」と判断してます。が、これが法廷で弁護人によって痛烈な批判を浴びます
「犯行の動機や態様について、不可解性や異常性の分析が尽くされておれず、弁護人が求めた、なぜ異常かつ残虐な犯罪が起き、被告人に罪責感がまったくないのか、これまでの犯罪の枠を超える特異な行動をなぜ被告人がなしたのか、考察がなされていない」のであり、鑑定として不十分だと
こうして2度目の精神鑑定実施が決まり、そこで2組の鑑定チームが独自に取り組むことになります。結果、提出されたのが上記の内沼・関根鑑定です
鑑定では、宮崎勤の中に、A:幼稚な部分と哲学的な部分が混在した被告本人、B:衝動的殺人者であることも、C:冷徹なこども、D:犯行声明を書いた今田勇子、という4つの人格があるとしています。しかし、鑑定人が接したのはAのみであり、鑑定中に他の人格と接触したとは認めていません
このような内沼・関根鑑定を中心に、瀧野隆浩記者が多重人格説を展開しているのが本書の特徴です
そこには、「一見、普通の青年にしか見えない人物が、あのような残虐な犯行に走ったのは彼が多重人格だったからに違いない」との、瀧野記者の強烈な思い込みが作用しています
当時、「虐待を受けたこどもが多重人格を告白する」類いの本が相次いで出版され、ブームになっていた事情も重なっています
さて、今年の10月、宮崎勤の取り調べ時における肉声を録音したテープと、捜査関係者の証言が明かされ、メディアの作り上げた宮崎勤像(彼自身が演じていた、とも言えるのですが)が根底から覆されています

宮崎元死刑囚 浮かぶ狡猾さ 「偽装で頭いっぱい」「自分かわいかった」 幼女連続誘拐殺人事件
犯行声明や告白文で使用した「所沢市 今田勇子」の意味は何だったのか。当時、宮崎元死刑囚は東京都内に住んでいた。
「今田勇子って何だ。どっからヒントを得た」
「実在しないから」
「何から見つけてとったの」
「見つけてませんよ。考えただけですよ」
「自分で考えたの」
「うん」
だが、どこかにヒントがあるはずと疑う。
「どっかの雑誌かなんかでみたのでは」
「本当です。ありきたりな名前にしたんですよ」
あくまで空想の思いつきだったと主張する。
告白文は独特な字体で書かれていた。宮崎元死刑囚の字体ではない。
「字はわざと変えたのか」
「人が普通書くような字以外にしようと思ったから」


今田勇子などという人格は宮崎の中に存在せず、でっちあげだったと言えるのです
鑑定医も騙されるほど、宮崎の演技が真に迫っていたのでしょう
もちろん狙いとしては多重人格を装い、刑罰を免れるところにあったわけであり、それこそ死に物狂いになって演技をしていたと想像されます
長くなりましたので、ここで一旦終わりにします

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