ABC予想望月教授を廃人と書く週刊新潮

望月新一京大数理研教授のABC予想を解決した論文がジャーナルに掲載されると報じられ、話題になりました。このニュースを取り上げたいと思いながら、どう語ればよいのか見当がつかないまま、時間が経過してしまいました
しかし、週刊新潮が随分と失礼な記事を掲載したので、そちらをまずは取り上げることにします


フィールズ賞級「ABC予想」を証明した日本人天才数学者は廃人になるのか
その重大ニュースの見出しは、12月16日付け朝日新聞の朝刊1面に躍った。記事曰く、《長年にわたって世界中の研究者を悩ませてきた数学の超難問「ABC予想」を証明したとする論文が、国際的な数学の専門誌に掲載される見通しになった》。論文筆者は、京都大数理解析研究所の望月新一教授(48)だ。
ABC予想とは1985年に提示された数論の予想で、有名な「フェルマーの最終定理」や「ポアンカレ予想」といった数ある難問のうちの一つ。『ABC予想入門』の著書がある東京工業大学の黒川信重名誉教授は、
「極々簡単に説明すると、a+b=cという方程式を満たすa、b、cがあって、abcの素因数の積をdとした時、cがdより大きい場合は非常に少ない、という結論になる」
すでに、チンプンカンプン。
「その数式を証明した望月先生の論文が2012年にHPで公表され、検証作業が進められてきました。今回、認められそうな段階になったというわけです」(同)
申し訳なかった
元日本数学会会長の飯高茂・学習院大学名誉教授が言う。
「数学をやっている人でも、そう理解はできません。実は私も論文を取り寄せたのですが、あまりに難しくて、500ページ以上ある論文のうち、2ページくらい読んで放り出してしまったくらいです」
論文が認められたら、
「その功績は非常に大きい。数学の歴史は4000年近くあるが、その中で最大級の発見と言えるでしょう」(同)
数学界のノーベル賞にあたるフィールズ賞ものだというのだ。が、心配なのは、
「数学の天才には、極度に集中をし、全身全霊で研究に没頭するあまり、やり遂げた後に疲弊し燃え尽きてしまう人が多い。フェルマー予想を解決したワイルズはその後、研究をストップし、ポアンカレ予想のペレルマンも、社会との接触を断ち山籠もりしてしまいました」(科学部記者)
19歳で米プリンストン大を卒業した望月教授。メディアの取材を拒絶しているが一体、どんな人物か。
「会ったことがある数学者はごく少ないはず。学会に顔を出した話は聞いたことがないし、研究会や懇親会に出るようなタイプでもない。今回、論文を検証するための4人の研究者チームが作られ、3年掛かりで確認作業をしてきましたが、望月さんは、“4人の貴重な時間を使ってしまい申し訳なかった。もう十分だから、ご自分の研究をさせてあげてください”と語ったそうです」(飯高名誉教授)
やはり今後が気になる。
「週刊新潮」2017年12月28日号 掲載記事から引用


いきなり「燃え尽きた天才」扱いするという、随分と失礼な取り上げ方をしています
フェルマー予想を解決したワイルズは長年在職したプリンストン大学からオックスフォード大学の教授に転じたのですが、彼も60歳を過ぎておりて、日本で言うなら定年退官の年齢です。新たな研究を期待する方が酷でしょう
ポアンカレ予想を解決したペレルマンは、彼を取材したテレビ番組によると地方都市に住む年金暮らしの母親と同居しており、山に籠っているマッドサイエンティストではありません
本当に取材をして記事を書いているのか、大いに疑問です。当然、京都大学数理研究所を直接取材もしていないと思われます
芸能人の不倫現場を根気よく見張り、取材する週刊誌記者なのに、いかにも下準備不足でやっつけ仕事みたいな埋め草の記事です
望月教授が取材に応じないのは、新聞記者や週刊誌の記者にその理論を説明したところで理解不能なのは明白であり、時間の無駄だからでしょう
望月教授の論文と数学界の反応に関しては、以下の記事が適切です


「異世界から来た」論文を巡って 望月新一による「ABC予想」の証明と数学界の戦い


ちなみに2015年、オックスフォードで開かれた望月論文の研究会には、上記のアンドリュー・ワイルズ教授も参加しており、彼を廃人扱いするのは大間違いです
望月論文は単に「ABC予想」を証明したものではなく、その前提として新たな数学の概念装置を幾つも盛り込んだもので、まずはその新たな概念が妥当かどうかが問われるため検証に膨大な時間を要しました
今後は望月論文の解説本なども登場するのでしょうから、もう少し身近なものになると期待されます

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