座間9人殺害事件を考える 類似性ない特異なケース

座間市のアパートで男女9人を殺害し、遺棄した事件について、9回目の言及になります
白石隆浩容疑者は3番目の被害者殺害容疑で再逮捕され、勾留が続いており、このまま9人の被害者の分だけ再逮捕が繰り返されるのでしょう。捜査の終結は来年になってからであり、その後は弁護側、検察、裁判所の3者による争点整理を経て公判に持ち込まれるため、裁判が始まるのは来年の夏くらいではないか、と推測します
その間に精神鑑定が実施されれば3カ月ほどかかりますので、裁判は秋にずれ込むかもしれません
さて、この事件に関してメディアはさまざまな有識者のコメントを取り上げており、中には宮崎勤事件とそっくりだとか、神戸の児童連続殺傷事件との類似性を指摘する声もあったりします
判断材料の乏しい段階でコメントを求められても、有識者としては困惑せざるを得ないのですが、メディアも視聴者や読者を納得させるために何らかの見解を示す必要がありますので、結果として過去の事件との類似点、共通点を指摘し、「あの事件と似ている」との語りに結び付くのでしょう
不可解な猟奇殺人でも、「既知の事件と同じ」と言われると納得してしまう方もいるのか、こうした傾向が見られます
しかし、こうした安易な決めつけは事件を読み誤る危険があり、表面的な類似点だけで判断するのは避けなければなりません
従来とは別の見解を示す記事がありますので、紹介します


犯罪心理学専門家も驚愕の手口 白石容疑者は10億人に1人の闇「類似ケースはゼロ」
その異様な手口に、犯罪心理学の専門家は「罪を犯した1万人以上の人を見てきたが、同じような例はなかった」と驚きを隠さない。
白石容疑者はSNSのやりとりで「死にたい」などと書き込んだ人を誘い出し、箱に座らせて、首をつるすなどして相次いで殺害。捜査関係者によると、被害者を連れてくるたびに部屋を片付け、芳香剤などでにおいを消していたという。
犯罪心理学が専門の出口保行・東京未来大教授は白石容疑者について「1億人、いや10億人に1人いるかいないかの人間だろう」と語る。国家公務員の「心理職」として全国の刑務所・少年鑑別所で多くの犯罪者を鑑定した経験をもってしても、その行動は説明がつかないというのだ。
「殺人を犯すには捕まるリスクと、それまで培ってきた社会的信頼を失うコストを考えるものだが、白石容疑者ははじめからこの2つを度外視している。殺すことそのものに強い興奮を感じ、『捕まってもいい。それまでになるべく多くの人を殺害しよう』と考えたのだろう」と出口氏は分析する。
白石容疑者はツイッターなどSNSを介して被害者と知り合っていた。出口氏は「女性とのやりとりを見るとコミュニケーション能力が抜群に優れていることが分かる。相手に合わせて、自分にも自殺願望があると装ったり、自殺したいぐらいのつらさを感じている人には『首吊り士』というアカウントでその方法を示してみせたり、非常に計画的だ」と指摘する。
白石容疑者は逮捕当初、被害者を襲った理由について「金銭目的だった」などと供述していた。「何かを得る『手段』として殺人を犯したと言えば、(捜査当局の)納得を得られやすいので、『逮捕されたときはこう話そう』と、あらかじめ決めていたのだろう」と出口氏はみる。
殺害そのものが「目的」であるケースを考えると「大きく分けて、殺人に至るまでのプロセスを楽しむ『快楽殺人』と、自分の支配欲を満たすための殺人の2通りがある」と出口氏。白石容疑者はそのどちらにも当てはまらないという。
「相手を呼び出すゲーム性を楽しんでいたとみられる点は前者に近いが、それを続けたいなら遺体は発見されない場所に捨てるはずだ。手元に置いていたのは、現時点では1人1人を殺害したときの興奮をフィードバックしていたとしか考えられない。計画性はあるが、後に捕まることに対するリスクやコストを度外視しており、過去に見てきたなかで類似のケースはまったくのゼロだ。考えられない」
モンスターの闇は明らかになるのか。


出口教授がこうした見方をする根拠は、事件の外見や特徴だけを比較して云々するのではなく、犯罪者固有の資質、人格に踏み込んで考察する「鑑別」を実践してきたから、と言えます
事件について語るとき、それが結果として表出した犯罪行為を論じているのか、犯人固有のパーソナリティについて論じているのか、必ずしも明確に区分されず、両者がごちゃ混ぜに語られるのがしばしばです
結果として、宮崎勤事件のように本人のパーソナリティすら憶測や先入観で歪められて語られ、現実に起きた事件を超えた何やら得体のしれない社会現象としての言説が飛び交う事態に陥ったりするのでしょう
少年鑑別所などでの資質鑑別では、本人の資質や人格から犯罪を再構成し、事件にいたるまでの力動を読み解こうとします
ですから宮崎勤の資質、人格を根幹にして事件を読み直せば、センセーショナルな報道とはまた違う見方もあったはずだと自分は思います
上記の記事について注文を付けるなら、白石容疑者もまた宮崎勤のようなモンスターではなく、生身の人間であり、虚像を振り撒くような報道はさけた方がよい、と言いたくなります

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