中国メディア「日本アニメとの差は開いている」

中国メディアによる日本と中国のアニメ比較論をこれまで何度も紹介してきました
こうした記事の多くは関係者に取材すらせず、インターネット上に出回る噂、私見だけを取り上げ、何の裏付けもなく結論付けるだけのもので、報道と呼ぶに値しないものが多いと指摘したところです
本日紹介するサーチナの配信記事は、元ネタである中国メディアが上海のアニメ制作会社にインタビューしており、珍しくも取材活動をして書かれたものです
制作現場の実感として、日本アニメとの差は縮まるどころかむしろ開いている、と指摘する内容です


日本のソフトパワーの代表ともいえるアニメ。中国でも日本のアニメは人気が根強いが、中国では国を挙げて国産アニメの育成に力を入れている。テレビでも日本のアニメが流れることはなくなり、代わりに中国アニメが放送されるようになった。では、中国アニメの実力はいかほどなのだろうか。
中国メディアの今日頭条は14日、中国にあるアニメスタジオの創業者へのインタビュー記事を掲載した。「日本と中国のアニメの差は縮まっているのか」話を聞いたという。
記事が紹介したのは、アニメスタジオ「上海震雷」の孫猛氏だ。孫氏によると、中国のアニメの現状は、明らかに数は増えているものの、質はまだまだだという。基礎が非常に弱い中国アニメにとって、着実に質を向上させる方法は、1本ずつ制作して経験を積むのが理想であるが、中国のアニメ業界は結果と目の前の利益ばかり追っているために質がなかなか向上しないと苦言を呈した。
では、日本のアニメとの差はどのくらい開いているのだろうか。孫氏は、中国アニメは台頭してきていて、日本との差は縮まってきたと考える人もいるが、実際には「差は縮まるどころか、むしろ開いている」と指摘した。日本との差が縮まったと思った人は、「量と結果」しか見ていないのだという。
そして、「遅れている人が自分は追いついたと思ったら追いつけないもので、追いついていないと思ってこそ追いつく努力ができる」と論じ、引き続き日本に追いつくための努力をすべきだと主張した。
これには、中国アニメという業界の問題に加え、人材育成にも問題があるという。日本では高校卒業後18歳からアニメの世界に入る人が多く、大卒に比べて技術を積む時間があるほか、日本は晩婚化が進み、若い時期を仕事に費やすことができるのに対し、中国の若者は大学卒業時には24歳ほどになっていて、26歳までには結婚するよう圧力がかかるため、その後になって「残酷な人生の授業を受けても遅く、技能を磨く時間も情熱も持てないという厳しい現実」があるという。
記事は、日本アニメの質の高さを強調し、中国アニメについては謙虚な見方をしているが、日本のアニメの質も下がってきたと感じている日本のアニメファンも少なくないという指摘もある。アニメーターの仕事環境や待遇の悪さも問題となっており、日本も中国に追いつかれないよう、うかうかしてはいられないのではないだろうか。
(サーチナの配信記事から引用)


「差が開いている」とか「縮まっている」とか、「追いついた」という判断基準は何か、という部分に突っ込むのはやめましょう
アニメスタジオ「上海震雷」は数々の作品を送り出している会社であり、日本と組んだ作品もあります
その例として、「上海震雷」の作品「迷惑行者」を紹介します
「迷惑行者」は中国の人気漫画をアニメ化したもので、謎だらけの島に監禁された男女が生き残りをかけて奮闘するストーリーになっています。作画を見る限り、日本アニメのフォーマットを踏襲しており、玩具の宣伝媒体と化した幼児向けアニメが多い中国では、異質の作品と言えます(最近の傾向としては幼児向けだけではなく、青年層が楽しめる作品が増えているわけですが)

迷域行者:第7集



とはいえ、「攻殻機動隊」ほど尖がった作風でもなく、これを日本のテレビ局が配信して話題になるかと問われれば、「否」と答えるしかありません
以前に紹介した中国アニメ「一人之下」でも感じるのですが、「どうだ、すげーだろ」感が強く漂っており、作り手の独りよがりに見えてしまいます
日本と中国のアニメの差を、上記の記事ではアニメーターの技量の差であるかのように表現しているのですが、それだけではないと指摘しておきましょう
日本のアニメを支えるのは漫画やライトノベル、同人活動など、幅広く裾野の広い文化です。中国にはそれがありません(発展途上だ、と書いておきましょう)
とはいえ、ライトノベルやBLまで検閲の対象となる中国で、こうした幅広く裾野の広い文化が育つのは難しいのであり、結果としてアニメを支えるバックボーンの弱さにつながります
「差が縮まっている」とか「開いている」といった樹の見て森を見ない議論をせず、文化総体を視野に入れて語ってもらいたいところですが、中国にはサブカルチャーを論評する文化が弱いのも事実です。批評が機能しないというのは致命的な欠陥です

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