山口連続殺人事件を考える 最高裁で死刑確定

2013年年7月といえば6年前、丁度参議院議員選挙の投票の日、山口県周南市金峰の集落で5人が殺害され、2軒の家が全焼する連続放火殺人がありました。逮捕されたのは同じ集落に住む保見光成被告で、一審の山口地裁、二審の広島高裁で死刑判決を受け、最高裁に上告していたのですが、最高裁は上告を棄却する決定をし、保見被告の死刑判決が確定しています
事件を今一度、考えてみましょう
事件後、拘置所に収容されていた保見被告に取材が殺到したのですが、保美被告は記者との接触に応じませんでした。無罪を主張する被告の場合、メディアとの接触を通じて無罪をアピールしようとするのが一般的です
そうしなかったのですから、保見被告は人見知りが激しいのか、人付き合いを苦手としているのか、変わった人物と言う印象がありました
他人との接点を持とうとしない保見被告が、最高裁の判決前、山口新聞の記者との面会に応じた内容が記事になっていますので、紹介します


周南市金峰(みたけ)で2013年7月、集落の住民5人が殺害された連続殺人・放火事件で、殺人と非現住建造物等放火の罪に問われ、一、二審で死刑判決を受けた保見光成被告(69)の最高裁判決が11日に言い渡される。保見被告は5日、広島拘置所(広島市)で山口新聞の面会取材に応じた。公判と同様、「犯人ではない」と無実を訴え、被害者や遺族への謝罪の言葉は口にしなかった。
短い白髪頭で、半袖Tシャツに半ズボン姿で面会室に入った保見被告。16年の二審・広島高裁に出廷した際の見た目とほとんど変わっていなかった。着席するなり、公判で犯人の証拠とされた靴や凶器の木の棒など持参した写真を次々と見せ、「俺の物ではない」とはきはきした口調で10分以上話し続けた。
保見被告は事件直後の逮捕当初、同じ集落に住んでいた5人の殺害と2軒の放火への関与をおおむね認めた一方、公判では被害者の脚の殴打だけを認めて無罪を主張。認否が変わったことについて「(警察から)あんたしかいないと言われ、自分がやったんだろうと思った。当時は頭がおかしかった。それでどんどんしゃべるようになってしまった」と釈明。審理された証拠は「でっち上げ」とし、別に真犯人がいるとの持論を繰り返した。
最高裁では、被告の妄想性障害が犯行にどの程度影響したかが争点。弁護側が事実関係を争わないことに保見被告は「面白くも何ともない。みんな妄想だと言われる」と不満を吐露。判決の見通しには「半々。(高裁に差し戻されたら)間違いなく勝てる」と自信をのぞかせた。一、二審で死刑判決にも「死刑の現実味は全然なかった」とし、判決が確定した場合は再審請求する考えを示した。
発言機会のあった一審では被害者や遺族への謝罪はなかった。改めて思いを問うと「絶対謝らない。からかわれたことがあるので反対に謝ってもらいたい」と話した。生まれ育った金峰には思い入れがあるようで「ここから出たらすぐ金峰に帰る。一人で陶芸を本格的にしたい。住民との付き合いは今までもないから変わらない」と語った。そして「田舎はいったん出たら中には入れない」と、一度外に出て金峰に帰ってきた自身の境遇について触れた。
事件発生から約6年がたったが、「ものすごく短く感じた。あっという間に一日が終わる」と振り返り、「無実だったら(慰謝料の)お金がもらえる」と笑みを浮かべた。拘置所では普段、時代小説を読みあさり、ラジオで野球中継を聞いたり体操をしたりして過ごしているという。
6月17日の上告審弁論で弁護側は「事件当時、妄想性障害で心神耗弱だった」と死刑回避を求めたのに対し、検察側は「完全責任能力を認めた一、二審判決に誤りはない」と反論し上告棄却を求めた。最高裁第1小法廷は11日午後3時、判決を言い渡す。最高裁は被告人が出廷する機会はないため、保見被告は「いつも通り過ごす。特に変わらない」と拘置所で審判を待つ。
(山口新聞の記事から引用)


記事を読んだ感想としては、保見被告の現実感の希薄さが目を引きます。5人を殺害した記憶がどこかへ飛んでしまっているのか、罪の意識は微塵もなく、いまでも村人への恨みつらみしかないのでしょう
これが以下、言及する妄想性障害の影響によるものなのか、気になるところです
保見被告は起訴前と起訴後、2度の精神鑑定を受けています。起訴前の精神鑑定では責任能力が備わっていたとの判断が示され、起訴後の精神鑑定では、「妄想性障害があった」と指摘され、判断が分かれました
2つの精神鑑定結果を受けて、山口地方裁判所は以下のように判決を示しています


「鑑定人によると、被告は両親が他界した2004年ごろから、近隣住民が自分のうわさや挑発行為、嫌がらせをしているという思い込みを持つようになった。こうした妄想を長く持ち続けており当時、妄想性障害だったと診断できる。『自分が正しい』と発想しやすい性格傾向と、周囲から孤立した環境が大きく関係し、妄想を持つようになった。
この鑑定は合理的であり、これを基に責任能力を検討すると、被告が当時、自己の行為が犯罪であるという認識を十分有していたことは明らか。凶器となる棒を携えて各被害者宅を訪れ、殺害後に自殺しようと山中に入っており、善悪を認識する能力も、その認識に基づいて行動する能力も欠如したり、著しく減退したりしていない。被告は当時、完全責任能力を有していた」

被害妄想を抱いていたが、犯行時に完全責任能力があったという判断です
なお、控訴した広島高裁では3度目の精神鑑定を行おうとはせず、1日で結審し、事実上の門前払いの判決を下しています。これは無罪を証明する新たな証拠や証言を弁護側が提示していない…と裁判官が判断したためでしょう
保見被告以外の誰かが5人を殺害し、2軒の家に火を放ったとは考えられない以上、保見被告の犯行であると判断するのは当然です
妄想から犯行に至る経緯を保見被告が語らないのですから、検察官が想像して起訴状を書き、裁判官が判決文にしたためる(これも創作めいた行為です)しかないのですから、その創作の優劣を批判しても仕方ありません
一審段階でせめて精神鑑定だけでなく、心理鑑定くらいは行っておいてもよかったのではないか、と思います

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