スタジオジブリ 女性に監督は無理と語り批判浴びる(2016年)

本日は国連の「世界女性の日」なのだとか
それに因んだわけではありませんが、2016年にイギリスの新聞「ガーディア」での取材において、スタジオジブリにかつて在籍していた西村義明プロデューサーの発言が切り取られ、女性差別だとバッシングを浴びた件を取り上げます。古い記事ですが、話の中身自体は今日的な課題を有していると思い取り上げます
西村義明のスタジオジブリでのポジションを確認しておくと、2013年の高畑勲監督「かぐや姫の物語」でプロデューサーを務め、2014年の米林宏昌監督「思い出のマーニー」でもプロデューサーをしています。この「思い出のマーニー」はイギリスの作家ジョーン・G・ロビンソンにる児童文学の名作です。「思い出のマーニー」は米アカデミー賞の長編アニメーション映画賞にノミネートされました
以上の経緯があって、西村義明はスタジオジブリで宮崎駿や高畑勲の後を引き継ぐ人物と見なされており、「ガーディアン」がインタビューをしたのでしょう


ジブリ作品のプロデューサー、英紙での発言が性差別と批判 「女性は映画監督には現実主義すぎる」
6月6日(現地時間)に掲載された英The Guardian紙によるインタビューで、スタジオジブリが「性差別的」な発言をしたとして、各所で批判の声があがっています。
タイトルは「‘Women are realistic, men idealistic’: Studio Ghibli on why a director's gender matters(“女性は現実主義、男性は理想主義”:スタジオジブリ、なぜ監督の性別が重要なのか)」で、これはインタビュー内の「ジブリは女性の監督を雇わないのか?」という質問に対する、西村義明さんの回答を受けたもの。西村さんは、「かぐや姫の物語」「思い出のマーニー」といったジブリ作品のプロデューサーを担当していました。
西村さんは、「それはどんな映画を撮るかによる。ライブアクションとは違って、アニメーションでは現実の世界を簡素化しなくてはいけない。女性は現実主義な傾向があり、日々の管理がとてもうまい。これに対して男性はより理想主義な傾向があり、そしてファンタジーには理想主義的なアプローチが必要だ。男性が多いのは偶然の一致だとは思わない」と答えています。
さらに、このインタビューは7日に英The Independent紙でも取り上げられ、「スタジオジブリが男性監督を雇うのは彼らが女性よりもファンタジーにアプローチするために“より理想主義”だからだ」というタイトルが付けられました。
これに対して、海外では性差別であると批判的な反応が続出。Twitter上でも「ジブリの発言は自尊心を傷つけるもの」「しばらくトトロの人形にパンチする」「西村、マジかよ」「待ってくれ、ジブリの西村は性差別主義者なのか?」など、失望したり驚いたりするツイートが飛び交いました。


「ガーディアン」のインタビューで、「スタジオジブリは女性監督を起用しないのか」との質問は数ある問いの中の1つでしたが、西村の答えが記者の心に突き刺さったのか、そこだけが大きく切り取られてしまった感があります
ただ、「男性の方が理想主義的傾向があり、ファンタジー作品には向いている」と発言したのは事実であり、後日、西村は釈明と謝罪をしています。「男性は観念的な傾向が強く、現実を生きる力は女性の方が長けている。そういう差別的で偏った考えは、確かに自分の中にありました。反省し、勉強します。映画を作るのに性別は関係ありません。深くお詫びいたします」との内容です
ただし、西村義明治はこの取材を受けた時点(2015年9月)でスタジオジブリをすでに退社しており、西村の発言を「スタジオジブリの社是」であるかのような扱いをしたイギリスのメディアの側にも問題があります
女性がアニメーション作品の監督に適しているか、いないかなどという質問そのものが愚問の類です
スタジオジブリは宮崎駿と高畑勲の2枚看板でやってきた(その間、近藤喜文や宮崎吾朗、米林宏昌が監督を務めた作品もありますが)のであり、内外から女性監督を起用して制作を委ねる必要性はなかった、というのが現実でしょう。西村義明がそう説明していれば、騒ぎにはならなかったのでは?
だから「ガーディアン」の記事だけで女性差別だ、と決めつけるのはどうかと思ってしまいます
スタジオジブリは別にして、アニメーション監督で男性が多いのが現実です。カナダのように、会社の管理職は男女同数でなけれなならないと法律で定めている国も存在しますが、それが本当に解決策であるのかどうか?
例えば「プリキュア」シリーズのように、脚本、演出、絵コンテ、作画監督に女性が手腕を振るっている作品もあるのですから、この先、女性の監督が増える可能性はあると思います。ただ、興行収入が期待外れだったり、視聴率が低迷した場合、監督は矢面に立たされるのであり、責任重大であるため、監督を引き受けるのを躊躇う人も少なくないのでしょう
さて、現在NHKで放送中のアニメ「映像研には手を出すな!」は、女子高生がアニメ作りに奮闘する物語です。何よりアニメ作りに情熱を傾ける彼女たちの姿が生き生きしており、日本のアニメーション作りの基本的な考え方や映像技術、演出方法などのネタも満載です。「ガーディアン」の記者にも、「これがあなたの質問に対する答えだよ」と見せてあげたい気分になります(納得するとは思えませんが)

TVアニメ「映像研には手を出すな!」PV 第3弾



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