大友克洋「AKIRA」が名作であり続ける理由

劇場版アニメーション作品「AKIRA」が世界のアニメファンや映画ファンに大きな衝撃を与えた、というのは常套句のように用いられるわけですが、ではいったい何が衝撃だったのでしょうか?
いまさら、という話題ですが、そこに着目してみましょう
クーリエ・ジャポンの記事に、ワシントン・ポスト紙から転載された「大友克洋『AKIRA』が30年間世界に影響力を持ち続ける理由」というのがあります。前段だけ無料で、肝心な部分は有料扱いになっています。折角ですので会員登録をして有料扱いの分も読んでみました
引用は前段部分だけにとどめておきます

大友克洋『AKIRA』が30年間世界に影響力を持ち続ける理由
日本アニメ世界への「入り口」
通りで抗議の声を上げ、来るべき暴力的な攻撃に備え、政府の行き過ぎに対して市民がどう立ち向かうべきかを議論する光景。ここに、30年前の日本のアニメ映画が、今日の米国が抱える問題に今も共鳴し続ける理由がある──。
『アイアンマン』や『スパイダーマン』で知られるスーパーヒーロー映画群、「マーベル・シネマティック・ユニバース」は、日陰にあったポップ・カルチャーの価値をメインストリームへと引きあげた。しかしそのずっと前から、大友克洋の『AKIRA』は、西洋人を日本のアニメーションの世界へ引き込む、導入剤の役割を果たしていた。
1988年7月15日に日本で公開されたこの衝撃的なサイバーパンクアニメは、漫画が文化の垣根を超え、広く社会問題を扱い得るということを、世の中に知らしめた。
その複雑で未来的な都市景観の描写と、テレパシー能力を扱った刺激的な物語は、次世代のアートに影響を与え、カニエ・ウエストのミュージックビデオや、ネットフリックスのSFホラードラマ『ストレンジャー・シングス』といった作品を生み出していった。
(中略:「AKIRA」の粗筋紹介)
30年経っても衰えない影響力
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』では、イレブンという少女が鉄雄と同様に、政府の施設から逃げ出し、超能力を持っていることを悟る。製作者のザ・ダファー・ブラザーズは2016年、『AKIRA』の影響が「とてつもなく大きなものであった」ことを、ネットフリックスのインタビューで語っている。
『スター・ウォーズ / 最後のジェダイ』の監督、ライアン・ジョンソンは、自身のSF映画『ルーパー』の着想源として『AKIRA』を参考にしたという。この映画では、ある少年が、自分を暗殺しようとする相手を念力だけで殺害できる能力を持つ。
ラッパーのカニエ・ウエストは、『AKIRA』を好きな映画の1つであると公言し、ヒット曲『ストロンガー』のミュージックビデオで、映画の鍵となる場面を組み合わせリメイク映像を制作している。さらに、人気のストリートウェアブランド、シュプリームは2017年秋、『AKIRA』の他、大友の作品とコラボしたコレクションを発表した。
(以下、略)


「AKIRA」が音楽、アニメーション、実写映画などに影響を与えたと紹介されています
では、それはなぜなのでしょうか?
有料扱いの部分でも、残念ながら明確な指摘はありません
書かれているのは、そのスケール感、色彩や細密な描画を駆使した独特のリアリズム、そして音楽といった羅列です
注目すべきは、従来の日本アニメーションにありがちな瞳の極端に大きな少年少女、という描写を用いておらず、日本のアニメーションの伝統的な表現方法とは別物、と指摘しているところです
が、これだけでは、「AKIRA」のどこが衝撃的だったのか、十分に解明されているとは言い難いのであり、「AKIRAは飛び切りクールだったぜ。初めて観たときはぶっとんだよ、HAHAHA」と書くのと同じでしょう
唯一、日本のアニメーションを研究しているウィリアムズ大学教授のクリストファー・ボルトンが「さまざまな音楽、クラシックから民族音楽にプログレッシブロックまで混在させた世界観」と語っていますので、和洋折衷の混沌とした作品世界に度肝を抜かれたとも解釈できます
映画「ブレードランナー」(1982年)には歌舞伎町をモデルにした猥雑な街が登場しており、大友克洋もそれを真似てネオ東京を描いているのですから、「AKIRA」が初というわけではないものの、観客を刺激したのは確かなのでしょう
さて、上記のワシントン・ポスト紙の記事は後段、日本のアニメーションをアメリカで実写化する問題について言及していますので、要約します
先に「GHOST IN THE SHELL」の実写化で、スカーレット・ヨハンソンが主人公草薙素子を演じ、轟々たる批判を浴びました。ハリウッドの人間は「原作アニメーションを知らないアメリカの観客に作品を観てもらうためには必要な措置(著名なハリウッド女優を主役に配置する)だった」と釈明しているのですが、こうしたハリウッド流のやり方こそ批判されていると理解できないようです
「AKIRA」の実写映画が近く公開されるとの噂があります。おそらく、ハリウッド流に改変された珍妙な映画になるのでしょう。期待はしません
ぐだぐだになってしまいましたが、「大友克洋『AKIRA』が30年間世界に影響力を持ち続ける理由」がこれで明らかになったとは思えませんので、後日また取り上げようと思います

アキラ AKIRA(1988) 劇場予告編


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