「セーラームーン」百合カップルは放送NG

タイトルに放送NGと書いたのはもちろん日本ではなく、北米での話です
以前、「カードキャプターさくら」で、北米での放送コードの問題を取り上げました。アメリカでは保守層の人たちが、「同性愛は神の教えに背く行為である」という強固な観念をもっており、こども向けアニメといえども例外扱いしません
むしろ、こども向けアニメだからこそ、「こどもに不道徳な同性愛表現を見せるのはけしからん」との思いがあるのかもしれません
日本では「カードキャプターさくら」におけるさくらと知世、小狼と雪兎の同性愛的なシーンをこどもたちが笑って見ていたのですが、北米ではシリーズ全70話のうち半分しか放送されないという徹底ぶりで、しかも放送された分もさまざまな改変が加えられるというありさまでした
文化、宗教、社会的な価値観の違いといえばそれでまでですが、日本人が鈍感すぎるという面は否定できません
さて、「美少女戦士セーラームーン」のTVシリーズも、同じく北米では規制の対象となっています
言わずもがなの、天王はるかと海王みちるのカップルです


セーラームーンには海外で設定が変更されたキャラがいる。文化と宗教って難しい…。
「セーラームーン」シリーズでは、セーラーウラヌスに変身する天王はるかと、セーラーネプチューンに変身する海王みちるというキャラクターが登場する。この2人はいつも一緒で、どことなく同性愛的な表現も目立つ。
それもそのはず。原作者の武内直子(たけうちなおこ)は、そういった関係を意識して、2人の距離感を描いていたのだ。
しかし、この同性愛的な関係が、アメリカやカナダではNGだった。今ではLGBTに関して寛容となったが、当時放送された際は、天王はるかと海王みちるの関係を変更する必要があった。
どのように変更されたのかというと、「いとこ」。つまり、親戚となってしまったのだ。これは、「同性愛のヒーローがアメリカ人の親には受け入れられない」という大人の事情が含まれた変更である。
子供向けアニメなので、同性愛的な表現は過激と捉えられるかもしれないという理由もあったのだろう。当時の話なので批判しすぎるのは間違っているが、どことなく納得がいかないのは私だけだろうか?
ちなみに、天王はるかを演じた声優の緒方恵美(おがためぐみ)は、当時アメリカのアニメ雑誌のインタビューで、「あなたは同性愛の役を週末のゴールデンタイムOAの作品で演じて、宗教的に糾弾されなかったのですか?」と尋ねられたことをツイッターで語っている。


緒方恵美がどう答えたのか、記事では触れていません
ともあれ、同性愛を目の敵にする強烈なキリスト教信者がアメリカには大勢いますので、LGBTの権利を主張して理解を得るのはアメリカにおいても相当に難しい、と分かります
他方で、であるからこそ「セーラームーン」など日本の漫画やアニメの改変されない原盤が、アメリカやカナダの子女には自由で生き生きとした表現に映ったといえるのでしょう
日本では書店で販売されている漫画も、アメリカに持ち込もうとすれば児童ポルノ法に触れるとして逮捕されかねません。BLも未成年が登場するならアウトです
さて話を戻して、自分は「セーラームーン」の熱心な視聴者ではなかったのですが、天王はるかと海王みちるが登場する幾つかの放送回は見ており、随分と違和感を覚えたものです。「セーラームーン」のフォーマットを利用してまったく別のアニメが始まったかのような
漫画作者の武内直子にすれば新キャラ投入で新展開が狙いだったわけであり、視聴者が当初は違和感を覚えてもついて来るはずとの自負があったと思われます
さらに、この2人を百合カップルと設定したのも計算の上であるとすれば、男女の性差で縛られない世界を描こうとする意図が武内にあったわけです

Sailor Moon Crystal Sailor Uranus & Sailor Neptune Transformation

上で引用させてもらった記事の続きとして、「セーラームーン」の映画化のトリビアが盛り込まれています
ハリウッドから映画化のオファーがあったものの、原作側はこれを断ったというものです。その理由について、原作編集者の小佐野文雄は、「実はハリウッドの映画化って難しいんですよ。原作をどういじっても良いという契約をさせられるので危険なんです」と語っています
もし承諾していたなら、最近公開された映画「ワンダーウーマン」のように、女性ボディビルダーのようなムキムキのセーラー戦士が大暴れするとんでもない「セーラームーン」になっていたものと思われます
最後におまけとして、海外のBL事情を紹介したサイトの1つを貼っておきます。昔、日本のテレビアニメが規制を受けた時代とは大きく変わっているようにも思いますが、あくまでも成人向けの話です。こどもたちが視聴するテレビ放送で規制が撤廃されたわけではありません

腐女子ならぬ「腐男子」が急増中。アメリカで盛り上がるBL事情とは?

(関連記事)
「セーラームーン」から考える少女と通過儀礼
「セーラームーン世代」の特性を考える
「セーラームーン」の時代変化 美少女と恋愛
「セーラームーン」と美少女アニメを考える
「カードキャプターさくら」 日本版と北米版の違い
イギリスで「日本漫画大討論会」
日本の少女マンガに女性像の未来を見ようとするアメリカ
日本のロリータ・ファッション文化が世界を侵食
ドイツ版「セーラームーン」OP曲はテクノ風
韓国魔法少女アニメ「フラワーリングハート」
フランス・東映アニメ合作 アホ毛の変身美少女アニメ「Ladybug」
フランスの魔法少女アニメ「W.I.T.C.H.」は悩める十代
中国の魔法少女アニメ「巴拉拉小魔仙」
アニメ「ベルサイユのバラ」オープニングを絶賛するフランス人
韓国にも魔法少女アニメあり 「Spheres(スフィアズ)」
女の子に人気のアニメーション「プリキュア」のヒット戦略
「魔法少女モノ」アニメ-ションの人気ランキング
論文紹介「魔法少女と原子爆弾の精子:アメリカの日本アニメ」
コミックマーケットに見る日本の底力
英BBCが「漫画は児童ポルノ」と批判
斎藤環著「戦闘美少女の精神分析」を語る
セカイ系アニメ 戦闘少女とダメ男
セカイ系アニメ 戦闘少女とダメ男(2)