「エヴァンゲリオン」 精神分析と思春期理解

この記事を書いている途中、下書きとして保存していたのですが、ログインが切れてしまい再接続したら下書きが保存されておらず、消えていました。なぜ、こんなことが起こるのか、がっかりです
ともあれ、愚痴っていても仕方がないので、もう一度書き直します(この台詞を書くのも2度目です)

岡山県に就実大学というのが存在するのを、この論文を見て初めて知りました。創立は1979年なのだそうで、もう40年を超える歴史を有しているのだとか
さて、今回取り上げる論文は2019年2月の紀要に掲載されたものですから、新しい部類に入ります
ただ、論拠としているのは劇場版アニメーションではなく漫画版の方です。自分は漫画版を未読なので、テレビアニメーションのシリーズや、その後の劇場版などと比較し、どこがどう異なるのか正確には理解していません
が、前置きでダラダラ書くより、まずは論文を読んでいきましょう

漫画『新世紀エヴァンゲリオン』からみる思春期のこころ-情緒的ひきこもり状態を呈する思春期男子の精神分析的一考察ー
(前略)
そこで本論文では、思春期のこころの発達を理解することを目的とし、その手掛かりとして漫画『新世紀エヴァンゲリオン(貞本,1995-2014)』を取り上げたい。さらに、思春期のこころを理解する視点として精神分析を取り上げ、この物語を主人公シンジの夢とみなすことで、対象喪失や強い孤独感によって情緒的ひきこもり状態となった思春期男子の理解を深める。

平たく言えば、シンジという症例を読み解こうとする試みです
シンジが14歳の、思春期まっただ中の少年にありがちな症例と決めつけられるものではありませんし、シンジという症例を読み解いたからといって、中学生から高校生の、扱いづらい少年少女への理解が容易になるというわけでもありません
ただ、読み解くための方法論(当論文の場合はフロイトの精神分析、そしてフロイトの精神分析をさらに発展させたメラニー・クラインの抑うつポジション等の考えをバックボーンにしている)は、役に立つと考えます

(論文8ページ)
4.シンジの物語からみる思春期のこころ
漫画『新世紀エヴァンゲリオン』から思春期のこころを理解するにあたり、この物語をシンジの夢として捉えることができる理由と、精神分析における夢の位置づけ、および解釈の視点について説明する。
物語終盤の章、サード・インパクトによってシンジとレイは融合する。その中で、レイが「もとの世界に戻るのね」とシンジに問い、シンジが葛藤に満ち溢れた世界に留まる覚悟を決めたところで、この章は幕を閉じる。そして、最終章に入ると辺りはすっかり冬景色となり、シンジはアスカやケンスケと出会うがお互い覚えていない。このことから、ネルフで起きた一連の出来事は、今の世界とは全く別のところで起きた出来事であり、シンジの夢である可能性がうかがえる(実際に、アニメ版のエヴァンゲリオンは明らかに夢オチで終わっている。)
Freud(1900)は「夢は無意識への王道である」と記し、夢の内容を解釈することで人の無意識に接近できると考えた。さらに、後に Klein は夢が人の内的世界を描写していることを示唆している。また、精神分析では、人のこころの中にはいくつかのパーソナリティの部分が存在し、それらが複雑に絡み合うことで個人が形成されていると考えられている。例えば、Bion(1967)はパーソナリティを精神病部分と非精神病部分に、Meltzer(1968)は他者との現実的な関りを経験できる部分と自己破壊的態度へと誘う部分に区分し、患者のこころの状態を理解している。したがって、本論文ではこの物語を夢と捉えて内容を理解するだけでなく、この物語に現れる登場人物をシンジのこころのパーソナリティの一部である、との視点を踏まえながら考察する。

ジョン・シュタイナーの「病理的組織化」という概念を自分はよく理解していません。シュタイナーの著作は日本語訳が出版されているのですが、「こころの退避―精神病・神経症・境界例患者の病理的組織化」(岩崎学術出版)は2万5千円もするので手が出ません。しかもレビューによれば、誤訳が多いと指摘されています
物語の進行に伴ってシンジの示すさまざまな表情、反応、言動というものから一つの症例として読むのですが、14歳のシンジはまだ自己同一性を獲得していませんし、心の揺らぎはとても大きいと見なければなりません
矛盾するような言動があったとしても、それはそれでシンジのもの、と見て解釈する必要があります。物語の上でも、あるいはシンジの見ている夢の世界であるとしても、同じです

(論文10ページ)
物語の登場人物をシンジのパーソナリティの一部と考えると、情緒的絆を感じるパーソナリティが動き始めたとき、その関係を破壊しようとするパーソナリティが活動している、と理解できる。これは上述した「病理的組織化(Steiner,1993)」の病理である。また、Rosenfeld(1964)によると,病理的に組織化された状態では、悪い対象が理想化されることがあると考えられている。実際に、シンジはカヲル(使徒)に急接近する時期があり、一方的に心情を吐露したり一時とても頼りにしていたことから、悪い対象(使徒)が理想化されているところも垣間見える。
さらに、Steiner(1993)によると、病理的な組織化を形成している人には、こころの中に退避所があるとされる。そして、その退避所はこころの成長を伴わない不毛な場所と考えられている。物語を振り返ると、シンジは自らのこころが傷つくようなできごとに触れるとすぐに挫折し、叔父家族のもとに帰ろうとしている。シンジにとっての退避所は、叔父家族だったのかもしれない。しかし、叔父家族のところは心理的温かさを感じられるような場所ではなく、こころの成長は生じ得ない。したがって、この視点からも、シンジが病理的な組織化を形成している状態であることが支持される。

思春期に自分の理想と見なせる大人に出会えるかどうか、というのは人生に大きな影響を与えます
シンジにとって父ゲンドウは理想の大人ではなく、加持が一時期は理想ともいえるカッコいい大人でした
そしてカヲルが目の前に現れると、シンジは惹かれていきます。それは友人とか親友とかいうレベルを超え、「理想の自分」を見つけたかのように。そんなカヲルが使徒だったわけで、随分と大胆な設定です。もちろん、カヲルが唐突にネルフ内部に出現し、エヴァンゲリオンのパイロットとして訓練を受ける様にはある種の違和感が伴い、カヲルが使徒ではないかと視聴者にほのめかされるのですが(TVシリーズの話です)
上記の論文では「悪い対象が理想化される」と書かれていますが、これをカヲルに当てはめるのは違うと思うのですが
「悪い対象が理想化される」とは、「ヤクザに男らしさを見てしまう」とか、「暴走族の先輩にあこがれてしまう」ようなケースを言うのでは?

(論文11ページ)
Steiner(2011)によると、病理的な組織化を形成した人が心的退避所から抜け出したとき、圧倒的な劣等感や無力感にさいなまれ、「恥」の気持ちを抱くとされる。実際にシンジは、使徒との戦いやアスカとの比較の中で自分の無力さを知り、強い劣等感を抱いていた。また、アスカと協同して使徒を倒す際、シンジは強い「恥」の感覚を抱くこともあった。
先に述べたように、情緒的ひきこもり状態を呈する思春期の理解において、そのひきこもりが病理的組織化に由来するのか、それともアイデンティティの拡散あるいは混乱に由来するのかを把握することは難しい。Rosenfeld(1964)によると、病理的組織化の背景として自己愛の傷つきが想定されている。さらに、Kohut(1984)は自己愛が傷つく一因として母子関係における外傷的な共感不全を挙げている。シンジの養育環境を振り返ると、彼は幼いころに母親を亡くし、その後、叔父家族のもとに預けられていることから、自己愛が傷つきやすい環境であった可能性がある。したがって、シンジの情緒的ひきこもり状態は、病理的組織化に由来するのかもしれない。

シュタイナーの病理的組織化を理解する上では次の記事が参考になります。東京オリンピックや戦前の大日本帝国を例に挙げて説明しています
自分もこの記事を書いている途中に読んで、腑に落ちました

今のうちに言っておきたい、東京五輪への「大きな違和感」

シンジのひきこもり状態ですが、これを自分は上記のようなアイデンティティの混乱によるものと解釈してたように思います。それを病理的組織化によるもの、とする解釈は新発見です。この論文を取り上げた意義はそこのあるといえます

(論文11ページ)
4-3.心理療法への示唆
以上のことから、漫画『新世紀エヴァンゲリオン』は、情緒的な引きこもり状態、すなわち病理的な組織化を形成している思春期男子が、自身の心的退避所から抜け出し、他者と情緒的に接触することや他者に依存することの難しさを感じながら、先送りしていた心理的課題であるエディプス・コンプレックスに向き合い、思春期の課題とされるアイデンティティの獲得に取り組む様を描いた物語といえる。
(中略)
以上より、情緒的ひきこもり状態を呈する思春期の心理療法において、心理臨床家はまず彼らの親子関係を精査し、次いで先送りしている心理的課題を検討しながら多角的なアセスメントを実施したうえで、思春期の発達課題「アイデンティティの獲得 対 アイデンティティの混乱・拡散」に共に向き合う必要がある。このような取り組みは、寄る辺ない不安を抱える彼らの支えとなり、成人期に向かう新たな一歩、すなわち彼らの「新世紀」への旅立ちを後押しすることとなるだろう。

「新世紀」への旅立ちと書いていますが、思春期の混乱を抜け出すことが輝かしい未来につながるというものではありません。思春期特有の万能感を断念し、自分が何者でもないと認め(ヒーローにはなれないと認め)、平々凡々たる人生を受け入れることでもあります
3度の書き直しはさすがにきついので、ここで終わりとします

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渡辺直美をブタに 組織委員会が文春にブチ切れ

東京五輪・パラリンピックの開会式や閉会式の演出を巡る不明朗な決定を暴露する記事を掲載した週刊文春に、組織委員会がブチ切れ、「雑誌を回収しろ」とか「文春オンラインの記事を削除しろ」と要求しているのだとか
佐々木宏によるバカな演出の問題もそうですが、組織委員会として何も明らかにせず、すべては「機密事項」であるからと闇に葬る態度は大いに問題でしょう。オリンピックもパラリンピックも国民あっての行事であり、組織委員会による組織委員会のための行事ではありません。何を勘違いしているのか、と言いたくなります。この場合の組織委員会の意思表明は、武藤敏郎事務局長の意向と解釈して間違いないでしょう


東京五輪・パラリンピック組織委員会は1日、3月31日の文春オンライン、1日発売の週刊文春が五輪開閉会式の演出内容を明らかにした記事を巡り、「極めて遺憾」とし、発行元の文芸春秋に対して書面で厳重抗議したと発表。内部資料を掲載して販売することは著作権の侵害にあたるとして掲載誌回収などを求めた。
「文春」では、開閉会式演出の責任者を一時務めた振付師のMIKIKO氏らが国際オリンピック委員会(IOC)にプレゼンした280ページに及ぶ内部資料(昨年4月6日付)を入手したとして、資料に記載された演出内容に言及し、また、一部の画像も掲載した。
組織委は、掲載内容について「極めて機密性の高い組織委員会の秘密情報で世界中の多くの方に開会式の当日に楽しんでご覧いただくもの」と事前の公表で演出の価値が大きく毀損(きそん)され、報道が業務を妨害していると指摘。「この内部資料の一部の画像を本件記事に掲載して販売すること及びオンラインに掲載することは、著作権を侵害するものです。同社に対しては、当該の掲載誌の回収、オンライン記事の全面削除、及び、資料を直ちに廃棄し、今後その内容を一切公表しないことを求めています」と“全面戦争”の姿勢を示した。
内部資料流出も深刻に受け止め「営業秘密を不正に開示する者には、不正競争防止法違反の罪及び業務妨害罪が成立しうる」と、警察とも相談の上、守秘義務違反を含めた徹底的な内部調査に着手。開閉会式の業務受託会社である電通に対しても、同様の調査と報告を要請すると同時に、演出内容を知りうる全ての関係者に守秘義務の順守徹底を求めるとした。
開閉会式を巡っては3月に、総合統括だった佐々木宏氏の不適切な演出プランが文春の報道で表面化し、結局辞任。MIKIKO氏が責任者を辞任に至る経緯なども、同誌が報じていた。
(スポーツ報知の記事から引用)


演出の変更を巡る不明朗な決定より、「関係者間のやりとりや資料が部外に漏れたことの方が問題だ」という感覚に唖然とします
大勢の人が関わっている以上、完全に情報を遮断し、外部に漏れないようにするなど不可能です。それに外部に漏れて困るような機密事項があるのか、と言いたくなります。それこそ、不都合な事実だけでしょう
記事では、「営業秘密を不正に開示する者には、不正競争防止法違反の罪及び業務妨害罪が成立しうる」などと書いていますが、これも不可解な言い分です。オリンピックの開会式は「営業上の秘密」なのでしょうか?
組織委員会はオリンピックを金儲けの場として、いかの儲けるかに執心していでしょうか?
すでの週刊文春は発売済であり、多くの読者が記事を読んでいます。文春オンラインとて同じであり、これを非公開にして、今後一切公表するな、などと要求する組織委員会の態度に何様のつもりか、と思うばかりです
組織委員会の演出問題を巡る決定のプロセス(誰が最初の演出案を白紙撤回し、別の演出案に差し替える決定を行ったのか。その決定がMIKIKO氏に事後通知されたのはなぜか?)を明らかにしないまま、情報を文春に売った犯人探しに躍起になっている風を装っているのですから、頭は大丈夫かと心配したくなりほどです
もちろん、情報の出どころがMIKIKO氏だとわかっているはいるものの、彼女を犯人として告発すれば「藪をつついて蛇を出す」結果となり、さらなる不都合な事実が暴露されかねないので放置しているわけです

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