立川ホテル殺人を考える 風俗嬢を敵視

立川市のホテルで19歳の少年が風俗嬢を殺害した事件の続報です
被害者の名前を実名で報じたメディアがあった=風俗店に勤務していたという個人情報をメディアが暴露したことへの批判も生じているのですが、そちらは事件と直接関係のない事象なので取り上げません
産経新聞の記事では少年が風俗業を敵視し、標的と考えていた節があると書かれています


ホテル死傷「風俗業いなくていい」逮捕の少年、凶器は昨年購入
東京都立川市のホテルで男女が刺されて死傷した事件で、殺人未遂容疑で逮捕されたあきる野市に住む職業不詳の少年(19)が「風俗業の人間はいなくていいと思った」という趣旨の供述をしていることが3日、捜査関係者への取材で分かった。凶器とみられる包丁を昨年インターネットで購入していたことも新たに判明。警視庁立川署捜査本部は、少年が以前から風俗店従業員らに狙いを絞り、犯行の機会をうかがっていた可能性もあるとみて、慎重に調べている。
捜査関係者によると、少年は風俗業について「あんな商売をやっている人間はいなくていい。風俗の人はどうでもいい」などと供述。スマートフォンの解析などから女性との面識はないとみられ、風俗店従業員の中で無作為に殺害する相手を選んだ可能性がある。
事件は1日午後3時45分ごろ立川市曙町のホテルで発生。少年と室内でトラブルになったとみられる女性(31)が、刃物で全身を約70カ所刺され、死亡した。電話で助けを求められた同僚の男性(25)も腹部を刺され、意識不明の重体となった。
少年は逃走を図ったが、2日、羽村市内で身柄を確保された。所持金は約21万円だった。付近の山林では、ロープとともに血の付いたティッシュペーパーが見つかり、自殺を計画した可能性もある。
少年は当初、女性の殺害についても認めるなどと話していたが、弁護士の接見後は黙秘に転じた。
「いじめ」遭い 高校で急変
「ネットで人を殺す動画を見て刺激を受けた」「女性と無理心中する様子を撮影しようと思った」。警視庁の調べに少年は犯行の動機をこう供述していた。風俗店は数年前に利用していたものの、女性とは面識はなく、無作為に選んだ可能性もある。少年は、なぜこのような「特異」な考え方を持つようになったのか。
女性に動画撮影を打診して断られた少年は、持っていた包丁でめった刺しにした。女性は約70カ所も刺され、致命傷となった胸の傷は深さ約18センチに達していたという。「気が小さいのかもしれない」。捜査関係者は少年の性格についてこう推察する。
少年の親族や知人らも、おとなしい性格だと口をそろえる。ただ、近年は感情面や環境面に変化が生じていたとみられる。
異変が生じたのは、高校入学後。周囲には「いじめに遭った」と告白していた。いわゆる「陰口」の類いだったとされ、次第にクラスで孤立し、そのころから感情の起伏が激しくなったという。退学して通信制に編入、卒業。その後は就職した高齢者施設でもなじめず、上司から病院への受診を打診されるなどし、辞めた。
(以下、略)

外国での殺人事件では、売春する女性をことさら敵視し、殺害するケースが目につきます
ただ、単純に今回の事件も同じだと決めつけるわけにはいきません
以前取り上げた、イギリスの「切り裂きジャック」の研究家スティーブン・グリフィスが売春している女性を相次いで殺害した事件では、グリフィスの母親が売春で稼いでいた背景があり、おそらく彼自身「お前の母親は売春婦だ」と周囲からなじられた経験が山程あったのでしょう。ゆえに売春する女性を敵視し、殺害するようになったと考えられます。が、そこには母親への愛と憎悪が複雑に絡み合っていたと想像します
本件の場合、そうした背景があるとは思えませんので、風俗業や風俗嬢を敵視するに至った理由は別のところにあるのかもしれません
アメリカの作家フォークナーの小説には、黒人の売春婦と交わる白人男性の話が登場します。白人男性は黒人女性を蔑視し、見下しているのですが、それでも黒人の売春婦を求め、性交しようとの欲望を抑えられず、ゆえに苦悩し自己嫌悪に陥ったりする…という傾向が過去にも現在にも見られます
日本では人種的な葛藤というのは考えられないにしても、己の性欲を持て余した十代の少年が、性欲ゆえに風俗嬢を敵視する形はあり得るのでしょう
まだ、そうと断定するだけの材料が揃ってはいませんが
上記の記事で逮捕された少年が弁護士との接見後、黙秘に転じたと書かれています
これは犯行を否認しろ、とそそのかされたのではなく、現時点で思いつくまま警察にべらべらしゃべるのはよくないと注意されたためでしょう
逮捕後、警察の取り調べの場でしゃべったことは記録され、証拠になります。聴取の場では何度も同じ質問を重ね、いつ風俗嬢殺害を思いついたのか、きっかけは何か、どのよう方法で殺害しようとしたのか、問いを重ねます。前回の供述内容と違っていればさらに問い詰めます。供述に矛盾があれば裁判で突っ込まれますので、矛盾点をとことん突き詰め、解消しようとします
ベテランの捜査員に供述調書をチェックしてもらい、「こんな調書じゃ裁判で通用せんぞ」と叱られ、また調書を取り直すのです
こうして供述調書を仕上げる、というのが一人前の刑事になるための関門であり、これができないと刑事捜査の部門には残れず地域課へ戻されて派出所勤務になるわけです

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「人財教育」を持ち込む小学校 7つの条件

J-CASTニュースの記事に、北海道の小学校で校長が研修会で聴き込んだ「人財教育」をやっている、との記事がありましたので取り上げます
教育委員会が校長を集めて研修会をやり、そこへ人材教育のコンサルタントが講師に招かれて「人財となるには7つの条件がある」と吹き込んだのでしょう
調べてみると、2010年以前から企業相手に「人財教育」やら「7つの条件」といったセミナー、講習会が行われており、「7つの条件」を並べたポスターを販売している会社もあるのが分かりました
個人のブログでも、「7つの条件を満たして人財と呼ばれるようになろう」と呼びかけているものが散見されます
自分は経営コンサルタントとか人材教育コンサルタントと称する人物が大嫌いなので、批判する内容を以下、記述します


「YESが0の人は『人罪』」小学校だよりが物議 書いた校長「7つの大事なことを伝えただけ」
「YESが7の人は『人財』であり、会社が求めているよい『じんざい』」
「人財になるための7つの条件」。同校の学校だよりでは2021年5月28日、こんなタイトルを付けて、校長名の文を載せた。人財とは、財産になる人材という意味で使っているらしい。
それによると、校長は、道立教育研究所の学校経営力向上研修に参加し、7つの条件について講義を受けた。条件とは、「明るく、元気な挨拶ができる」「言われなくても、自分で考え、行動できる」「人が嫌がることでも、進んで取り組める」などだ。
これに基づいて、校長は、「いくつクリアできているか」を教職員に提示したという。それは、次のような内容だった。
「YESが7の人は『人財』であり、会社が求めているよい『じんざい』であり、自分で考えて成果をあげられる人だそうです。YES が4~6の人は『人材』であり、会社が求めているふつうの『じんざい』であり、言われたことなら、自分でやりきれる人だそうです。 残念ながら、YESが1~3の人は『人在』、YESが0の人は『人罪』となるそうです」
条件は、社会人の指標だったが、校長は、「本校児童の状況を確認します」といい、例えば、「明るく、元気な挨拶」は二極化しており、教職員や保護者が適切な対応をすれば改善できるとした。そして、子供たちを「人財」に近づけるには、身近な大人の存在が重要だと述べた。「7つの条件の備わっている子どもの多い学級は軌道に乗っている」とも書いている。
校長を研修した講師「子供に使われたとすれば、本意ではなく、違う」
学校だよりの内容は、6月1日になって、会社が求める資質で教職員や児童をランク付けするショッキングなものだとツイッターで指摘され、波紋が広がった。
この投稿は、3000件以上もリツイートされており、様々な意見が寄せられている。
批判的な声は多く、「人罪か、、、教育に関わる人が使う言葉としてひどすぎる」「会社、社会、体制に従順な人材を欲しているんでしょうか」といった反応が出ている。
一方で、「この社会で生きていく以上、使える、使えないとか生産性とか嫌でもつきまとう」「教師は一般企業で働いたことがない、社会を知らない、となじり続けた結果では?」と一定の理解を示す声もあった。
校長が受けたのは、道立教育研究所が4月28日にオンラインで行った研修ではないかとみられている。この研修では、道商工会議所連合会の福井邦幸政策企画部長が「組織を活性化させるマネジメントと人材育成」と題して講義していた。
福井氏は6月3日、J-CASTニュースの取材に対し、知り合いの研修講師から借りた資料を使って、7つの条件について校長らにレクチャーしたことを認めた。
「この条件は、本などいろんなところに出ており、校長はどうあったら資質が向上するかを話すときに、1つの指標として使いました。学校経営で、教頭以下の組織マネジメントをどうするかということです。『人罪』は、極端の例としてあるだけで、そのまま人に使うのはダメですね。著作権の問題がありますので、受講者にペーパーを渡しておらず、スクリーンの画面で見せました」
校長が条件を子供たちに当てはめたことについては、こう話す。
「子供に使うとは一切話しておらず、使うものではありません。そういうふうに使われたとすれば、本意ではなく、違うのではないかと思います。条件は、経営者の心構えを説いたもので、人に使うべきではなく、自分に当てはめてほしかったですね」
(以下、略)


自分も過去にこの手のセミナーへの参加を命じられ、仕方なく出席した経験が何度かあります
経営コンサルタントは「3つのMが大切です」などと称しMで始まる単語を並べてあれこれ語るわけですが、それが本当に妥当なのか、意味があるのか、といつも疑問に思います。研修という場を乱すような真似はしたくないので反論したり、疑問を投げかけたりはしないよう心がけていましたが
こうした場で反論したりすれば、講師は「メンドクサイ奴だな」と思うだけでしょう。自分が受け売りしている組織論やら人材論を疑ったりはしませんし、妥当性を検証する気もないのですから
さて、校長は心底、この「7つの条件」を素晴らしいと感じ、学校でも使えると思ったのでしょう。なので、いまさら抗議を受けたとしても、撤回するのは自分のプライドが傷つくので拒絶するはずです
教育者として「人罪」という定義を疑問にも思わなかったというのは致命的欠陥であり、所詮はその程度の校長であったと解釈するしかありません。児童にどのような影響を及ぼすか、想像もしなかった、できなかったということです
校長だからといって人格者であるとは限らず、いじめ事件を隠蔽して保身に走ったり、買春で逮捕される校長もいるのですから
「学校だより」に掲載する前に、周囲の意見を聞くなどしておけば騒動にならなかったのでしょうか?
おそらく周囲の教員も校長のアイディアに異議を唱えるような真似はせず、忖度して賛同したと想像します
経営コンサルタントや人材教育コンサルタントの説く話を鵜呑みにせず、妥当なのかどうか、自身で考え検討する態度を身につける必要があるのですが、大学の講義を聴いてそのまま受容する(無批判に享受する)ような人物が教師になるのでしょうから、難しいのかもしれません

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