村上春樹「ハナレイ・ベイ」 深い余韻と波

動画配信サイト「GYAO!」で村上春樹の小説を映画化した「ハナレイ・ベイ」が7月20日までの間、無料公開されています
以前から見たいと思っていた映画でしたので、さっそく朝から視聴しました
何と言っても主演の吉田羊が圧巻です。残念ながら映画館で公開されたときには話題にもならず、興行結果もいまいちだったのですが
原作「ハナレイ・ベイ」は村上春樹の短編集「東京奇譚」に収められた一編で、読んだ後に深い余韻が胸中に残る不思議な小説です
話のあらすじを「GYAO!」のサイトから拾うと、以下のように書かれています


シングルマザーのサチ(吉田羊)は、息子のタカシ(佐野玲於)がハワイのカウアイ島にあるハナレイ・ベイで亡くなったことを電話で知らされる。大好きだったサーフィン中に大きなサメに襲われ死んだという。彼女は、彼が命を落としたハナレイ・ベイへ向かい、海辺近くの大きな木の下で読書をして過ごした。毎年、この「行為」は続いた。同じ場所にチェアを置き、10年間。だが、彼女は決して海には近づかない。ある日、サチは2人の若い日本人サーファーと出会う。無邪気にサーフィンを楽しむ2人の若者に、19歳で亡くなった息子の姿を重ねていくサチ。そんな時、2人から“ある話”を耳にする。「赤いサーフボードを持った、片脚の日本人サーファーを何度も見た」と……。サチは決意する。もう一度、息子に会うために──。

映画の予告と、上記と同じように「GYAO!」のサイトにあるイントロダクションを貼っておきます
映画『ハナレイ・ベイ』予告編


伝えたい。どんなにあなたを愛しているかを。
時代に刻まれる名作・話題作を発表し続ける作家、村上春樹。単行本と文庫本あわせ累計70万部を超えるロングセラー『東京奇譚集』(新潮文庫刊)の一篇である「ハナレイ・ベイ」は、ファンの間で村上文学史上屈指の名作として語られており、この度待望の実写映画化となる。主人公のサチを演じるのは吉田羊。主演から脇役まで目覚ましい活躍をみせ、まさに今最も輝く女優の一人である彼女が、本作では“これまで誰も見たことのない吉田羊”と評されるにふさわしい、圧倒的な存在感を放つ。サチの息子タカシを演じるのは佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)。近年は俳優としても頭角を現す彼の、全く新しい一面を本作で目にするだろう。また、サチがハナレイ・ベイで出会う日本人サーファーの高橋には、抜群の感性と自然体な演技で最注目の若手俳優、村上虹郎。監督は『トイレのピエタ』が批評家から絶賛され、日本映画界の新鋭として期待を集める松永大司。


最近のテレビドラマのように、役者が機関銃並みに台詞をまくし立てたりはしません。ハワイの波の音や鳥のさえずりが響き、海辺で吉田羊が椅子に座って本を広げている…。テレビドラマに見慣れてしまった方は、あまりに台詞が少なくてドラマを見ている気がせず、「もっと説明しろよ。もっとしゃべれよ」と突っ込みを入れたくなるのではないでしょうか?
今のテレビドラマは何でもかんでも台詞で説明しようとするため、ともかく役者がしゃべりまくらないとドラマが成り立たない傾向があります
「ハナレイ・ベイ」は逆に、登場人物たちの台詞は最小限であり、立ち姿、表情、視線で物語が進められます
なので、視聴した後、久し振りに映画らしい映画を観た気分になりました
物語は深い喪失感を胸の内に宿したサチが、ハナレイ・ベイの浜に息子の姿を探し求めるものであり、いつもの村上春樹の小説にある「喪失」がテーマです
ただ、サチだけが特別というのではなく、サチが出会うハワイの人たちもそれぞれに身内を失った悲しみを内に宿しています。ただ、彼ら彼女らの悲しみをサチは受け入れらず、「自分とは関係ない」と当初、切り捨てています。そこは台詞ではなく、吉田羊が表情のみで表現しています
そして本当の悲しみは後から、静かな波のように押し寄せます。片足で浜に立つ日本人サーファーの噂を耳し、サチは懸命にその姿を捜すのですが、彼女にだけはその姿が見えない。どれだけ求めても
もちろん、いつかはサチの目の前に彼(息子)が現れるかもしれない。そのためにサチはまた、ハナレイ・ベイを訪れるのでしょう
原作小説とは微妙に異なりながらも、味わい深い映画になっています

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