福岡女性転落殺人を考える6 控訴審でも懲役22年

すでに福岡地裁で懲役22年の有罪判決が下された佐久田なつき被告ですが、これを不服として福岡高裁に控訴していました
が、福岡高裁も「1審の判決に誤りがあるとは言えない」との判断で、佐久田被告に懲役22年を言い渡しています
控訴審の模様を伝える報道が見当たらないため、佐久田被告と弁護人がどのような主張を展開したのか不明です。が、逆転無罪を勝ち取れるような新たな証拠、証言を提示できなかったものと考えられます
弁護士ドラマでは若手イケメン俳優演じる弁護士が駆け回り、新たな目撃証言を掘り起こしたり、警察の捜査ミスを発見して裁判で大逆転を演じるわけですが、現実はそのような展開になりません
事件の経緯はこれまでにも書きましたので省略させてもらいます


6年前、八女市の山の中で当時25歳の女性を橋の上から転落させ殺害した罪などに問われた被告の裁判で、2審の福岡高等裁判所は「被害者が死亡する直前に一緒にいたのは被告以外に考えられず、1審判決に誤りがあるとは言えない」として1審に続き懲役22年を言い渡しました。
住所不定・無職の佐久田なつき被告(34)は6年前、以前同居していた池田麻里さん(当時25)に睡眠薬を飲ませて八女市の山の中に連れて行き、高さおよそ55メートルの橋の上から転落させ殺害した罪などに問われました。
1審の福岡地方裁判所は佐久田被告が殺害したと認定して懲役22年を言い渡し、被告側が控訴していました。
きょうの2審の判決で福岡高等裁判所の半田靖史裁判長は「意識がもうろうとしていた被害者は他人の介助なしに橋の欄干を乗り越えられなかった。被害者が死亡する直前に一緒にいたのは被告以外に考えられず、1審判決に誤りがあるとは言えない」などとして1審に続き懲役22年を言い渡しました。
(NHKの記事から引用)


前回も書いたように、佐久田被告はテレビドラマで見たのか、解離性同一性障害との診断書を絶対的な切り札のように思い込み、人格の交代によって別人格がやった犯行だと主張すれば無罪判決が出る、と信じていたのでしょう
もちろん、実際の刑事裁判で解離性同一性障害が認定された判例、否定された判例など読んでいないと思われます
ですから1審判決で、「解離性同一性傷害であると被告人は主張するが、犯行への影響はほぼ認められない」と裁判官からばっさりと切り捨てられてしまい、なおかつ「犯行の動機は不明だが被害者に落ち度はなく、被告には人の命を奪ったことへの反省が認められない」と厳しく批判されてしまいました
「解離性同一性障害だから」、「別人格による犯行だから」という佐久田被告の主張が、かえって裁判官に不快感と不信感を与えてしまったのでしょう
控訴審でも同様の主張を繰り返したとすれば、まさに地雷を踏みに行ったようなものです
そして佐久田被告は、解離性同一性障害による人格交代の様を証言してくれる友人、知人を証人として立てられなかったのかもしれません
まあ、友人・知人の前で別人格と入れ替わったような演技を披露していなかった、と言い換えた方がよいのでしょう
いずれにせよ、テレビドラマのようにはいかなかった、と
解離性同一性障害を巡る刑事裁判の判例研究としては、以下のようなものがあります
被告にはこどもの頃からアスペルガー障害とされ、特異な精神状態にあったと認められているわけですが、それでも「解離性同一性障害による別人格による殺人、遺体損壊であるから無罪」とする弁護人の主張は退けられ、懲役12年の判決が下されています
ゆえに、日本の司法では解離性同一性障害による減刑の判断はあっても、無罪にするのは非常にまれ、だと知る必要があります

判例研究「解離性同一性障害と刑事責任能力」

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