中国映画 朝鮮戦争を美化した「長津湖」

殺人事件の話題ばかり続きましたので、ちょっと空気を変えましょう
久しぶりにエンターティメントの話題を取り上げます
中国では建国を祝う国慶節の週、映画館では愛国を訴える作品が人気を集めたと報じられています。まあ、いつものプロパガンダです
中でも朝鮮戦争を舞台に、中国義勇軍が北朝鮮支援のため参加した戦闘「長津湖の戦い」を描いた作品が特に観客を集めたのだとか
朝鮮戦争において中国は中立の立場を表明していたのですが、アメリカ軍を主力とした国連軍が北朝鮮軍を押し返したのを見て態度を変え、中国国内に居住する朝鮮族からなる義勇軍を派遣します。もちろん義勇軍というのは建前で、中身は中国人(漢族)の兵士からなる正規軍です
彼らが暴虐の限りを尽くす国連軍に奇襲攻撃を成功させ、撃退する様を描いたのが映画「長津湖」です
この作品がでたらめなプロパガンダであると韓国が反発している、との記事をレコードチャイナが配信しています


ドイツメディアのドイチェ・ベレは15日付で、中国国内で大ヒットした朝鮮戦争を描いた「長津湖」に対して、韓国では「歴史を歪曲」、「危険だ。一般の中国人は、これが宣伝だと知ることができない」などとして、強い反発が発生していると紹介した。
作品が扱ったのは、1950年11月末から12月にかけて発生した「長津湖の戦い」だ。この戦いは、米軍を中心とする国連軍と中国人民志願軍の初めての交戦だった。国連軍はそれまでに、北朝鮮軍を中朝国境近くまで追いつめていたが、中国の参戦により国連軍は大きく後退せざるをえなくなった。
「長津湖」は中国国内で興行収入の記録を更新しつつあり、全世界における2021年通年の興行収入トップになる可能性が出てきたという。
ドイチェ・ベレ記事によると、多くの韓国人は同作品について「中国政府が資金援助した、事実とは異なる歴史に満ちた、もう1本の宣伝映画だ。その目的は、若い世代に強烈な愛国感情を呼び起こすことだ」と見なしているという。
「もう1本」というのは、同じく朝鮮戦争を扱った映画作品で、2021年9月に韓国国内で公開予定だった「金剛川」(邦題:バトル・オブ・ザ・リバー 金剛川決戦)が、韓国の退役人員と政治家からの強烈な反対により公開が取りやめになったことによる。
ドイチェ・ベレ記事によると、ソウル市内で国際業務を扱う法律事務所に勤務する韓国人女性は「中国は経済面で強大であり、隣国に対してますます攻撃的になっている。中国人は、強大な国力は歴史を変える権利を持つと考えているように思える」、「この作品は、中国軍が朝鮮戦争の重要な戦いで、犠牲を顧みずに最終的に米軍の阻止に成功したことを描写しているが、戦争は朝鮮軍の南への侵攻で勃発したことについて、ほとんど説明していない」と批判したという。
また、戦争勃発時には10歳だったという韓国の元外交官は、同作品を「うそ八百のプロバガンダ」と批判。さらに「中国軍は北朝鮮のために戦って米国の侵略を阻止したと言うが、中国中央は自らの利益のために行動したのだ。彼らは国境の向こうの朝鮮半島が、米国の支援を受けて統一されることを望んでいなかった」と指摘した。
記事によると同元外交官は、「中国当局は戦争前と戦争時期に発生したことを変更しようとしている。とても危険だ。なぜなら、一般の中国人はこれがプロバガンダと知ることができないからだ」と指摘し、さらに自分自身が住んでいた村やその周辺地域の人々は戦闘をはっきりと覚えており、「われわれ韓国人は、北朝鮮人と中国人による攻撃と侵略に遭遇したと知っている」と述べたという。
(レコードチャイナの記事から引用)

The Battle at Lake Changjin 「長津湖」


中国側は長津湖の戦いで連合軍兵士(主力は米海兵隊第1師団、米陸軍第3歩兵師団ら10万人)のうち、1万4千人を戦死させたと発表しています
上記の映画では描かれていないのでしょうが、中国側の戦死者も約3万人とアメリカ軍は公表しており、決して中国軍の一方的な勝利とは言い難い戦闘だったのでしょう
朝鮮戦争における中国軍の犠牲者は最終的に11万人以上(中には40万人の戦死者が出た、と推計する人もいます)であり、これは数で圧倒しようという人海戦術方式のため、戦死するのも構わず兵員をどしどし投入したためです
また、民間人の犠牲者が多かったのも朝鮮戦争の特徴で、南北併せて200万人以上が犠牲になっています
戦闘の激しさの例としては、米軍が太平洋戦争中に日本を空爆した際に使った爆弾の3倍の量を、朝鮮戦争では使っています。空爆の対象は敵陣地のみならず、町や村など民間施設も含んでおり、徹底した破壊が行われたのです
韓国の人々にすれば、朝鮮戦争は国連軍の参戦によって金日成を追い詰め勝利を迎えるはずだったのに、中国軍の参加によって泥沼化した戦いであり、これを中国が映画で美化するなどとんでもない、との思いがあるのでしょう
「たかが映画くらいで」とは済まされない因縁があるわけです

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