日本アニメは文明の衝突? 「カウボーイビバップ」コケる

事件続きのため、すっかりサブカル評論を紹介する機会が減ってしまいました。本日は久々に実写版「カウボーイビバップ」などを巡る話題です
人気漫画やアニメを実写化する流れは日本だけでなくハリウッドも、Netflixのようなインターネット・メディアでも行われています
最近ではNetflixで配信された実写版「カウボーイビバップ」が話題にこそなったものの、失望の声と批判が相次ぐ事態となり、第一期放映分をもって打ち切りと報道されています
週刊プレイボーイに掲載されているジャーナリスト、モーリー・ロバートソンの連載でこの事象を取り上げ、日本アニメと世界との温度差や価値観の違い、そして「文明の衝突」であると書いていますので紹介します
連載の中で継続して取り上げられているようですが、今回はその一部分だけ引用します。全容を読みたい方は週刊プレイボーイのサイトへアクセスしてください


どこまでいくんだ? ジャパンアニメvs欧米リベラル、文明の衝突・最新章
https://wpb.shueisha.co.jp/news/society/2021/12/20/115097/
(前略)
先に白状しますが、僕はNetflix版を見たものの、原作アニメはきちんと見ていませんし、「いかに原作の世界観に忠実か」といった議論に首を突っ込むつもりはありません。むしろそういった議論と、実写版制作チームがキャラを変更した背景、そこに込めた意図との間にズレがあるように感じるのです。
これは単に"ポリコレ"が厳しくなったという話ではなく、今や日本発のアニメを見て育った、世界中のさまざまな文化圏で暮らす多様なクリエイターたちが、作品の"再構築"に携わる年齢になっています。
その結果として、純粋無垢(むく)に原作を愛する日本の漫画・アニメファンにとっては、違和感を覚えるようなケースが今後も増えていくだろうということです。
海外の価値観で原作をゆがめられるのは勘弁してほしいという意見もわかりますが、現実問題として日本の作品(特に少し前の時代のもの)には、今の欧米リベラルの基準では「そのまま出せない」表現や、「引っかかってしまう」設定が多いのも事実です。
例えば"児童ポルノ的"な表現について、日本は世界基準に比べて異様にユルいということは、多くの方が薄々気づいているでしょう。表現の自由は確かに大事です。しかし、それだけを盾にして、例えば「未成年みたいに見えるけどアンドロイドだから問題ない」とか、そういった本質的ではない議論でけむに巻き続けるのはおそらく難しくなるだろうと思います。
「人種」の描き方もそうです。これは日本発の問題というより、過去のハリウッド作品などからの"無自覚・無批判な輸入"だと思いますが、黒人のキャラをあまりにもステレオタイプに描いた漫画・アニメ作品は枚挙にいとまがありません。
最近、米カンザスシティのローカルメディアに、ある黒人アニメクリエーターのインタビューが掲載されました。彼が育った黒人コミュニティでは、マッチョなものがよしとされる風潮が強かったものの、彼自身は少年時代からアニメが大好きだった。
ただ、自分が愛してやまない日本のアニメには、潜在的な人種差別があったことも事実だと彼はいいます。『カウボーイビバップ』のオリジナル版にしても、黒人のカルチャーであるジャズとヒップホップの要素がちりばめられているのに、それでもステレオタイプな描き方が残っていたと。
自分がアニメクリエーターになったのは、そうした偏見を大好きなアニメの世界からなくしたかったからだ――そう語る彼は今、黒人を主人公にしたオリジナルのアメコミ作品を創作しているそうです。
■"再構築"イコール原作への冒涜、ではない
一方で、日本のアニメ作品が海を渡った先で、その国や地域のファンに「勝手に解釈される」こともあります。
『VOGUE JAPAN』のインタビューで、『セーラームーン』が心の支えだったと語っているのは、ベルリン国際映画祭で、LGBTQをテーマにした作品に贈られる「テディ賞」で長編映画賞などを受賞したドイツの映画監督ファラズ・シャリアット氏。
イランからの移民2世でクィア(Queer)という、出自も性的にもマイノリティとして育ったシャリアット氏は、セーラームーンについてこう答えています。
〈特に変身のシーンは好きでたまりません。普段は泣き虫で大食いのヒロインが、魔法を使って世界を救う存在になる。大胆不敵な魔法少女は、愛をもって平等のために戦っていく。でも彼女がそういう存在だということは、両親はもちろん誰にも知られてはいけない。そこに自分の姿を見たんです〉
(以下、略)


モーリー・ロバートソンの結論として、「世界市場に乗り出すからには日本アニメが原作至上主義に拘泥し、日本ならでは価値観、文化に執着していては太刀打ちできない。変容が必要だ」とする趣旨を述べています
まあ、それこそ自分が最も疑問に思うところであり、ディズニーやピクサーのような毒にも薬にもならないアニメを日本が作る必要があるのかと言いたくなります
世界標準の価値観や倫理観に裏打ちされたアニメ?
そんなものは所詮、アメリカの基準にすぎません
モーリー・ロバートソンの言うところの、世界市場で売って稼ぐならディズニーのパチモノ作品をやればよいのでしょう。韓国や中国がやっているように
ただ、日本のアニメファンが求めているのはそんな作品ではないわけで
「セーラームーン」が全世界の女の子(一部は大きなお友だち)に与えた衝撃は、ディズニーのアニメでは表現できないものです
見る人によってはエログロすぎるとか、こどもに見せるのにふさわしくない、暴力描写が多すぎると非難されるほどとんがった表現があるからこそ、こどもたちに深く刺さったのでしょう
繰り返し書いていますが、ディズニーに「エヴァンゲリオン」は作れないのであり、「エヴァンゲリオン」のような作品を生み出すからこその日本アニメです
日本アニメが日本アニメを辞めてまで、世界市場で売れる毒にも薬にもならない作品を手掛ける必要はない、というのが自分の意見です
ビジネスとして語るなら、モーリー・ロバートソンの指摘は正しいのでしょうが

『カウボーイビバップ』予告編 - Netflix

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