「鬼滅の刃」ブームを読めなかった業界人

「サイゾー」の配信記事を取り上げるのは随分と久しぶりです。大手メディアの報道姿勢とは異なる、いわゆる裏読みの記事が多いのが売りですが、ここ数年はサイトにアクセスして読む機会がほとんどありませんでした
さて、「サイゾー」が「鬼滅の刃」ブームに乗り遅れたアニメファンの悲哀を記事していますので、取り上げます
アニメや漫画に関わる業界で商売をしている人たちは、次に来る作品を常に探し回り、いち早くその作品のブームに乗って一儲けしようとアンテナを張っているのでしょう
しかし、そうした目利きを自負する業界人でも「鬼滅の刃」がこれほどまでに大ヒットするとは予測できなかった、との内容です


『鬼滅の刃』大ブームなのに乗っかれない”鬼滅難民“の実態──“古参アニメファン”が阿鼻叫喚
アニメ映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の興行収入が公開から10日間で100億円を突破し、このままいけば2001年に公開されたスタジオジブリの『千と千尋の神隠し』超えもあるのではないかと期待の声があがっている。
これほどまでに大ヒットした『鬼滅の刃』だが、このブームを予測できた人──特に“往年のアニメファン”が、あまりにも少なかったことも関係者の間では話題となっている。
「『週刊少年ジャンプ』での連載中は“そこそこ”の人気でしたが、アニメ化に大成功しコラボグッズなどの関連商品も爆発的に売れるようになった。集英社の担当は1日数百件の関連案件の処理に追われて、死にそうな状態だとか。このフィーバーを取り逃したのが、フジテレビです。
連載中はなんせ“そこそこ”程度の評判だったので、アニメ化の話が出たときにフジテレビは一度蹴ったそうなんですよ。しかし、コロナ禍で在宅作業の人が増えた影響もあり、Netflixなどの配信動画サイトで異様な人気を得ていった。これを受けてフジも慌てて放映権を買い取ったんです。映画公開に合わせた総集編や一挙放送は今年のアニメ放送でもトップの視聴率となりましたが、フジテレビ発のアニメだとは誰も思ってないですし、グッズ販売なんかにもさほど絡むことはできず……結局映画の番宣を手伝っただけみたいな雰囲気もあります」(テレビ局社員)
もともと『ドラゴンボール』や『ワンピース』など、集英社の作品を多数アニメ化してきたフジテレビだったが、「鬼滅はヒットしない」とみて放送を見送り。結局ローカル局であるTOKYO MXなどでの放送となったわけだが、マーケターらの予想に反して『鬼滅』は社会現象に。
ただし、業界全体でもこの現象を予測できた関係者は少なかったわけで、そういう意味ではフジテレビも、なんとかギリギリ映画公開にかかわることができただけ良かったといえるだろう。
「メディアなどでは、『自分はさほどハマれなかったけどアニメ業界のコメンテーターとして仕事がくるので仕方なく』といった感じで概況だけの分析をするにとどまっている解説者が頓珍漢なコメントをしてしまい、ファンから『ぜんぜんわかってない』などとディスられています(苦笑)。原作自体がスタートして4年で終了するほど簡潔な内容なので、歴史的分析なんかもしづらい。今更分析できるような要素が少ないので、往年のアニメファンほど混乱している印象ですね」(広告代理店スタッフ)
(中略)
「『新世紀エヴァンゲリオン』『鋼の錬金術師』『魔法少女まどか マギカ』などのように、いわゆる“アニメファン”たちが好むメタ的な視点があったり、壮大な伏線回収があるというよりは、物語のエモさや簡潔さがお客さんを引っ張ってきた部分があるのが『鬼滅』です。それに対して『深みがない』という見方しかできず、これだけヒットしてもなお『見る気がおきない』なんてひねくれたコメントをする人も多い(笑)。世間はこの話題で一色なのに、ついていけず『鬼滅難民』となってしまっているようです」(同)
興味がわかないのなら黙っておけばいいものを、世間が沸き立つ作品がゆえ無視できず“アニメファン”として一言物申さずにはいられない厄介なオタク心理も働いている様子。深読み好きの彼らにとって、簡潔明瞭な『鬼滅の刃』はまさに鬼門なのかもしれない。


自分は漫画は未読で、テレビアニメの方は視聴しました。分類からすれば鬼滅難民に近い古いタイプのアニメファンでしょう
登場人物に感情移入するほど夢中にはなれず、「ああ、こうした展開の作品なのね」と思って観ていた立場です
ではあるものの、わざわざ「この作品はアニメをよく分かっていない初心者向けだね」などと、したり顔で書いたりはしません
その時代ごと、世代ごとに視聴者に刺さるアニメ(今風の表現を使ってみました)があるのは当然でしょう
「鬼滅の刃」ブームが続くのか、終わるのかは分かりません。ただ、劇場版の自作を期待するのは難しいようです。今回劇場版になった「無限列車編」以降は、グロ描写が増えるため親子で鑑賞できるアニメとは言い難くなるためです
漫画版の原作に依らず、炭治郎たちの5年後を描くオリジナルストーリー、といった続編もありだとは思いますが、さてどうでしょうか?
余談ながら、かつて大ブームを巻き起こした「妖怪ウォッチ」の劇場版アニメーション第6作目、「映画 妖怪学園Y 猫はHEROになれるか」が昨年12月に公開されたのですが、興行収入は7億3000万円にとどまりました。第1作目の「映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!」が興行収入78億円を記録したのに比べると、目を覆いたくなる状況です。が、ブームの終焉とはこうしたものでしょう
社会現象ともなったコンテンツも、時代の経過とともに消費され消耗され、消えてゆくのが常です。近年では特に、コンテンツの賞味期限が短くなっているのかもしれません。厳密に検証したわけではありませんが
さてそんな事情の中で、毎年大ヒットとなる劇場版「名探偵コナン」シリーズ(興行収入60億円から90億円)がいかに化け物であるか、わかります

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座間9人殺害事件を考える 公判で集中を欠く被告

自殺願望のある女性をアパートに誘い込み、次々と強姦した上で殺害した白石隆浩被告の裁判が続いています
被害者の数も多く、なおかつ殺害について被害者側の承諾があったかどうかが争点になっているため、公判では被害者1人づつを取り上げて検察と弁護人が主張をぶつけ合う展開になっているため全部で24回も公判が開かれる予定になっています
そのためと言えるかどうかは分かりませんが、白石被告も集中力を欠いているのか、緊張も緩んでいるのか、言い間違いを繰り返す場面も見られるようです
犯行時は何らかの精神病によって心神耗弱ないし、心神喪失の状態にあったと主張し、減刑を狙っている白石被告ですが、内心では死刑判決は避けられないとの思いがあるのでしょう
公判の場での質疑への回答が、事前の警察の調書での供述と違っていると指摘されても、それを訂正するのも面倒という感じで応対しています
「いまさら、どっちでもいいわ」との心境なのかもしれません


神奈川県座間市のアパートで平成29年、男女9人が殺害された事件で、強盗強制性交殺人などの罪に問われた無職、白石隆浩被告(30)の裁判員裁判の第12回公判が27日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれた。白石被告は5番目に被害に遭った埼玉県春日部市の無職女性=当時(26)=に関する被告人質問で、女性が「私が寝たら殺してください」と発言した可能性があるとする一方、犯行直前に殺害の承諾はなかったと主張した。
弁護側は29年11月の白石被告の供述調書を引用し、女性から「私が寝たら殺してください」と言われ、被告が「分かりました」と答えていたと指摘した。これに対し、被告はやりとりをした可能性があると認めた上で、アパートに向かう道中での会話だったと説明。ただ、犯行直前には殺害の承諾に関する話はしておらず、意識がある状態の女性を襲ったと強調した。
殺害を決意した理由については、女性が電話などでアパートを繰り返し出入りしていたことを挙げ、「放っておいたら帰りそうだなと思い、部屋に戻ったところでいきなり襲いかかった」と述べた。
また、SNS(会員制交流サイト)の2つのアカウントから女性に同時期にメッセージを送っていたことも取り上げられた。被告は「(一緒に自殺したいという)キャラクター設定が女性と相性が良くないと思った」とし、自殺幇助(ほうじょ)や承諾殺人を請け負うとする「首吊り士」のアカウントからも接触したと説明した。
被告は法廷での女性の呼び方を何度も言い間違えて検察官に注意されるなど、集中力を欠いた様子も見られた。検察官が遺族側から強く要望された質問として、「女性が(子供のいる)母親と分かったときにどう感じた」「母親だから、(無事に)帰してあげようという選択肢はなかったのか」と尋ねたが、被告は「別に何も感じなかった。(選択肢は)なかった」と淡々と答えた。
(産経新聞の記事から引用)


週刊女性が拘置されている白石被告に面会し、インタビューした内容を記事にしています。が、目新しい内容は書かれておらず、白石被告の投げやりな、諦観したような受け答えが見られるだけの記事です
連続強姦殺人をしてのけた異常者、という姿を如実に示しているわけではないものの、殺人に対する倫理感が非常に乏しいことが言葉の端々から伺えます
関心のある方は一読ください

《座間9人殺害事件》白石隆浩被告、いまも止まらぬ性欲と「殺人を犯した理由」を語る

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「ノルウェイの森」 直子の人物像について

山崎眞紀子札幌大学教授の論文「直子の乾いた声 : 村上春樹『ノルウェイの森』論、『めくらやなぎと眠る女』とともに。」から引用します
この論文は前段部分と後段部分で異なるテーマが設定されており、読んでいていくつも疑問符が浮かびました

直子の乾いた声 : 村上春樹『ノルウェイの森』論、『めくらやなぎと眠る女』とともに。

論文の前段は「ノルウェイの森」とドイツ(特にヒトラー政権下のドイツ)と関わりが見られるとして、「突撃隊」やハンブルグ空港、強制収容所を示唆するセリフなどピックアップしているのですが、その関わりが何を指し示しているのか、なかなか見えてきません
ビートルズの「ノルウェイの森」に続いて流れる曲がビリー・ジョエルであり、彼がユダヤ系であると筆者は説明します。あるいは小説の中に登場する映画「卒業」に触れ、主演のダスティン・ホフマンがユダヤ系であると筆者は説明していますが、それが「ノルウェイの森」という小説にどう影響し、関与しているのか、自分には筆者の説明が飛躍しすぎているように思えるばかりです。あるいは自分のこれまでの読みが何か決定的な誤りを犯しているのか、見落としをしているのか、とも疑ったほどです
筆者の論じるところ、「ノルウェイの森」おける「僕」の罪の意識がドイツとの関係において、鮮明になるという主張です

(論文5ページ)
彼(ビリー・ジョエル)と同じ年に生まれた「僕」が、戦時中ドイツと同盟を結んでいた過去を持つ日本に生まれ育った「僕」が、いまドイツに着陸しようとしている。「結局は消えてしまった」風景の中で、「起きろ、起きて理解しろ」と頭を蹴り続けるのは、「僕」が死者側にいるのでなく、「ここにいる」生者側にいるための意味、生きていることの意味を理解せよとのメッセージを、戦争の償い活動を行う磁場としてのドイツが彼に働きかけたいるからであると考えられる。

(論文8ページ)
以上のようにナチス・ドイツの影は『ノルウェイの森』に数多く投影されている。そしてこれらは、なぜドイツから物語は始められるのかという疑問への回答、または歴史的な記憶の意味を浮上させていくうえで重要なパン種として機能していると結論づけたい。『ノルウェイの森』の基底にある罪意識のルーツが、このように歴史性を帯び、その歴史を構築している根源的な問題へと錨を下ろしているゆえに、『ノルウェイの森』は胸を打つのだ。

前段の論文の中で、ドイツがナチス政権時代の強制労働について補償を実施するため、官民合同で基金を設置した等について説明があるのですが、それと「ノルウェイの森」がどう結びつくのか(筆者はそのドイツの償いの行動こそが村上春樹に影響を与え、「ノルウェイの森」という作品に結実したと考えている)、自分にはつながりがさっぱり理解できません
なので論文の前段部分について、言えることは皆無です
論文の後段ではタイトルにもある村上春樹の短編「めくらやなぎと眠る女」が、2編存在する点を指摘し、その読み比べから直子とキズキと僕の関係を考察しています
短編小説「めくらやなぎと眠る女」(「蛍・納屋を焼く・その他の短編」収録)と「めくらやなぎと、眠る女」(「レキシントンの幽霊」収録)で、直子の人物像にも変化があります。もちろん、キズキと直子、「僕」と直子の関係にも微妙な変化が生じます
ただ、変化しないものとして直子が病んでおり、深い苦悩を高校二年生時に抱えていたというところです


(論文14ページ)
ここに『ノルウェイの森』を重ねて考えれば、直子の高校二年生の夏の段階ですでにキズキと直子は、もはや自我を「お互いで吸収しあったりわけあったり」する関係ではなかったことが読み取れるし、この長い詩におけるやなぎそのものと眠る女両者ともに直子のことだと解釈すれば、直子は地下深くに〈闇〉を抱えていることも窺える。やがて花粉をつけた蝿がやってきて彼女は眠らされてしまうことも予兆しているのだ。彼女がめくらやなぎ自身だとすれば、彼女を眠らせてしまうものは彼女自身=彼女の傷ということになる。では果たして彼女自身の傷とは何なのか。それは「めくらやなぎ」83年版、95年版ともに「僕」の十四歳のいとこを通して抽象的に描かれている。
(中略)
自と他の不一致感に苦しむ敏感な感受性による痛みなのである。直子もこの不一致感に悩まされていた。自己と、他の世界をつなぐための言葉、この二者間が一致せず、次第に言葉が選べなくなるのだ。


ところで作者村上春樹の中で、いくつかの作品に登場する直子という女性の人物像は一貫したものなのでしょうか?
別段、一貫したものである必要はないのであり、その時々に直子が違った色合い、キャラクターで登場しても構わないのでしょう
自分には「ノルウェイの森」前後の作品に登場する直子と名付けられた人物と、「ノルウェイの森」に登場する直子が同一人物として造形されているようには思えません。また、一連の村上作品に登場する「直子」は複数の人物をモデルに構成されているのではないか、というのが自分の考えです
それゆえ、直子にはいくつかに異なる人格が備わっているようにも読めてしまい、「直子は解離性同一性障害ではなかったか」との推論も生まれるのでしょう
村上春樹は「ノルウェイの森」の直子がいかなる病気を抱えていたのか、明らかにしていませんし、特定の病気、症状を想定した上で直子という人物像を描いていたようにも思えません
そこは読者の想像に委ねられている、と解釈します
さて、最後に「めくらやなぎと眠る女」の83年版と95年版の大きな違いを、筆者は以下のように書いていますので引用しておきましょう

(論文16ページ)
95年版では、いとこに直子の痛みを映し出すのではなく、直接的に直子の問題として描き、救えなかった「僕ら」の責任を、いま、僕自身を責めている。そして、さらに大きな相違点は自らを責め混乱に陥った「僕」を、いとこが救う点である。

(論文17ページ)
以上のように、『めくらやなぎ』83年版、95年版の改稿過程を見ていく中で、発表年数から中間に位置する『ノルウェイの森』を経ることによって、95年版では僕の罪意識がより一層明確になっている過程が見えてきたはずだ。『ノルウェイの森』で「僕」が過去に向き合う覚悟を決めてそれを試みたこと、人が生きていく中で忘却せずに記憶し続けることの重要性を、作品を系列的に見ていくことで明らかにできたのではないかと思う。一見わかりにくい高校二年生の夏休みのエピソードは『めくらやなぎ』を通して、直子の問題もクリアに見えてきたと言えるのではないだろうか。


「ノルウェイの森」発表後、村上春樹が「めくらやなぎと眠る女」をわざわざ改稿したのですから、そうしなければならない理由があったのでしょう。それが高校二年生の夏休みのエピソードを整理し、三人の関係と「僕」の罪を鮮明にするためであった、という解釈です
「ノルウェイの森」と「めくらやなぎ」は、村上春樹にとって重要なつながりを持つ作品、と理解して間違いないようです

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作家川上未映子がネットの中傷に賠償求め提訴

インターネット上での誹謗中傷に対し、芸能人や作家が反撃に出るケースが増えています
これまでは有名税だとして誹謗中傷を受け流す対応が一般的でしたが、悪質な行為には断固として反撃し、損害賠償を求めて民事訴訟を提起するなり、名誉毀損で刑事告訴するなりの法的措置を取るように変化していくのでしょう
ですから、従来のようにSNSに中傷する内容を書き込んでも、「特定されないから大丈夫」とはいかなくなります
作家の川上未映子が悪質な中傷行為や殺害予告を繰り返した人物に対し、450万円の損害賠償を求めて提訴し、その第一回公判が開かれたと報じられています


ネット上で中傷や脅迫を受けたとして、芥川賞作家の川上未映子さん(44)が、投稿者に対し約450万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。
第1回口頭弁論が26日にあり、投稿者は請求の棄却を求めた。
訴状によると、2018年10月、川上さんについて「レ(死)んでしまえと思っている。やるっきゃない、さ(刺)すしか」、「(イベントがある)11月18日やろうと思えばやれる」などの投稿がネット掲示板に書き込まれた。警察に相談した川上さんは、イベント出演を急きょ中止。ほかにも、川上さんの小説を「私の書き込みの流用だった」として、川上さんが盗作したかのように読める投稿もあったという。
プロバイダー責任制限法に基づき投稿者の情報の開示手続きをしたところ、書き込みをしたのはすべて同じ人物と判明。(1)危害予告で仕事に支障をきたした(2)オリジナル作品を創作して世に送り出す作家の評価を低下させた――として提訴した。川上さんの代理人弁護士は取材に、中傷や脅迫で「小説家としての活動が実際に制限された。見過ごせない」と話している。
(朝日新聞の記事から引用)


当然ながら民事訴訟を起こす前、加害者が特定された時点で弁護士を介して損害賠償を求めた交渉が行われたはずです。しかし、加害者は賠償を拒否したため、民事訴訟になったのでしょう
示談をまとめる選択肢があったのにそうしなかったのですから、かなり強気のようです。その強気の根拠は不明です
いかに強気な主張をしたところで、脅迫や中傷の事実を裁判所は認定するはずです。損害賠償の額は、請求した450万円からどれだけか割り引かれるとは思いますが、決して安い額にはならないでしょう
まあ、訴訟に負けても払わないという人もいるわけで、そこまで開き直るつもりなのでしょうか?
開き直った挙げ句に刑事事件など起こさなければよいのですが
作家とて生身の人間であり、特別に守られているわけではありません。暴力から身を守るだけの備えを、自身で行う必要があります。創作活動以外にストーカー対応のため目配り、気配りしなければならないというのはかなりの負担でしょう。さらに家族についても守る必要にせまられ、対策を講じなければなりません
川上未映子が長年のストーカー被害について語っている記事がありましたので、貼っておきます

「悪いのは加害者であり、被害者に非はない」ネット危害予告を受けた川上未映子さんが語る
自分の活動を制限されるのはおかしい
「表現を仕事にしていると、ネット上の誹謗中傷などはつきものです。作品であれ私個人にたいするものであれ、結局は嫉妬や妄想がほとんどなので、私には関係ありません。でも危害予告は別です。大勢の人や生活にかかわることです。
私は10年以上、複数のストーカーの問題を抱えていて、弁護士などを通して当該人物たちの動向をチェックしています。ストーカー問題の根が深いのは、時間がたっても「これで終わり」という線引きができないことなんですよね。
よく言われるのは相手を刺激しない方がいいということなんですが、そうすると結果、自分の活動を制限することになる。でもそれはおかしい。悪いのは加害者で、被害者には非はないのですから」

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「鬼滅の刃」実写化という無謀

劇場版アニメ「鬼滅の刃 無限列車編」が大ヒットしていると報じられています。が、ほとんどのメディアは興行収入の伸び、実績が桁違いであると報じるばかりであり、作品の中身に触れようとはしません
つまり、その程度の扱いであり、その程度の見識しか持ち合わせていないと判斷するしかないのでしょう(残念ながら)
せっかく取り上げるのなら、作品の見どころなり面白さについて1行でも言及してほしいものです
さて、劇場版のヒットを受けて「実写化」に向けた話もいくつかメディアが取り上げています
その中からリアルサウンド掲載の記事を紹介します


理想は海外ドラマとして世界配信? 『鬼滅の刃』実写化の可能性と問題点
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(以下、『無限列車編』)が空前絶後の大ヒットとなっており、話題は『鬼滅の刃』一色。そんな中、にわかに盛り上がりを見せているのが、「実写化するなら誰が炭治郎を演じるか?」といった今後のメディア展開についてだ。
すでに『少年ジャンプ』(集英社)での連載が終了していることからも明らかなように『鬼滅の刃』は作者の吾峠呼世晴の意向が強く反映された作品であり、アニメシリーズも原作の良さを再現することを第一に作られている。
今回の『無限列車編』がうまくいったのも、劇場映画にふさわしいエピソードを映画化したからであり、これが映画ありきで、原作のエピソードを省略したり、逆にオリジナル要素を無理やり加えていたら、うまくいかなかっただろう。おそらく作者もジャンプ編集部もアニメ関係者も、連載と同じように、無駄な引き伸ばしは考えておらず、『無限列車編』以降のアニメシリーズを終わらせることしか今は考えてないだろう。
(中略)
まず実写化には映画と連続ドラマの方向性があるのだが、映画を中心に進めるのなら、同じジャンプ漫画の実写化である大友啓史監督の『るろうに剣心』と似た展開になるのではないかと思う。
つまり、最初にキャラクター紹介的な物語を作り、その後、原作のエピソードを順番に作っていくというイメージだ。その際に一番の壁となるのが、出演俳優の問題だろう。
主人公の竈門炭治郎を筆頭とするメインキャラの年齢は原作を踏まえると10代前半だが、うまくハマる俳優がイメージできない。これは他の鬼殺隊や柱(鬼殺隊の最高位の剣士)についても同じことで、殺陣ができて演技もできる10~20代を探すのはとても難しい。
ただ敵対する鬼の側、こちらは30代前後の上手い俳優が演じればハマるのではないかと思う。ラスボスにあたる鬼舞辻無惨は菅田将暉か染谷将太、十二鬼月の上弦の壱・黒死牢は山田孝之か小栗旬、上弦の弐・童磨は高橋一生か中村倫也など、アイデアはいくらでも出てくる。いっそのこと炭治郎たちメインキャラクターは、オーディションで無名の新人を選んでもいいかも。
次に監督だが、漫画を実写映像化する際に一番難しいのは原作漫画の要素をどれだけ残すかだ。表現を漫画に寄せすぎるとコスプレ感が強くなってしまうし、逆にリアルに寄せすぎると、全く違う作品になってしまう。
その意味で絶妙なのが、前述した『るろうに剣心』の大友啓史監督だろう。『キングダム』の佐藤信介監督や、『無限の住人』の三池崇史監督も(作品によって、そのバランスは大きく変化するものの)漫画原作をリアル寄りに仕上げるのがとてもうまい。
(以下、略)


ファンがもっとも危惧しているのは、炭治郎らの役にジャニタレが起用され、どうしようない実写映画になってしまうことでしょう
過去にジャニタレ起用で台無しになってしまった「実写化」がいくつもあります
そこまでして「実写化」する必要を自分は感じないのですが、ビジネスの場は違います。ヒットした漫画なりアニメなりを実写化すれば客も入って簡単に儲けられる、と考える輩が大勢いるのでしょう
かくして人気漫画、アニメの実写化は失敗作だらけになっています
なので、「鬼滅の刃」をあえて実写化する必要性はどこにあるのか、と言いたくなります。コミックは売れているし、劇場版もヒットしました。それで十分なのでは?
安易にジャニタレを起用し、原作ファンからそっぽを向かれる企画がこれまで何本あったことやら
上記の記事にもあるように、十代で炭治郎を演じられる役者など実在しないのですから実写化に執着する必要などない、と言いたくて書きました(まあ、ハリウッドなら白人の30歳近いオッサンが炭治郎を演じる、などというおバカな企画を実現させるかもしれませんが)

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ひきこもり支援施設を「拉致・監禁」と提訴

大人のひきこもりに対して介入し、自立を支援するという団体・施設が全国各地にあります。NPOという法人格を有していたり、あるいは法人組織ではないものまでさまざまですが、現時点でどこかの省庁が所管しているわけでもなく、いわば野放し状態です
活動内容からすれば厚生労働省が監督すべきなのでしょうが、その気はないようです。また、地方自治体も監督責任を果たす気はないのでしょう
よって、ひきこもり支援施設はどこからもチェックを受けることなく、虐待や暴行が蔓延する異常な事態に陥っていたりします。あるいはひきこもりの大人を1人、引き受けるについて法外な料金を徴収していたりと、活動内容や運営実態にさまざまな疑惑が持たれる場合もあります


ひきこもり自立支援施設の手法は拉致・監禁、元生徒7人が初の集団提訴へ
https://diamond.jp/articles/-/252344
ひきこもりや無職等の状態にある人の自立支援施設として知られる「ワンステップスクール(以下、ワンステ)」を運営する、一般社団法人若者教育支援センター(東京都港区、広岡政幸代表理事)とそのスタッフに対し、今月28日、関東在住の元生徒7人が集団で提訴する。
広岡代表の著書によれば、同校は2008年設立で、神奈川県中井町や静岡県御殿場市に主な拠点を構える。元生徒7人は、ある日突然、自室に現れたスタッフらに、ひきこもりや無職等の状態であることを理由に、同社の施設で自立支援を受けるよう迫られ、「強引に連れ出され、抑圧された生活を強いられた」などと主張している。
集団提訴に踏み切る元生徒7人は、関東在住の20〜40代の男性。入寮は17〜19年とバラつきがあり、サポート期間も、最短で3週間あまり、最長で2年2カ月と幅がある。
同センターは「ピック」と称し、家族の依頼を受けた数名の男性スタッフが支援対象者本人を予告なしにいきなり訪れ、そのまま寮に連れ出す手法を用いる。このため、俗に「引き出し屋」などとも呼ばれている。
元生徒7人のピック場所は、東北地方から沖縄本土にわたり、同センターの活動範囲の広さを物語る。そのうち5人は、17年11月から19年12月までに中井町の湘南校からそれぞれ脱走し、福祉施設に保護された経緯がある。また、サポート期間中に、湘南校から神奈川県内の精神科病院に医療保護入院をさせられた30代男性もいる。
筆者は広岡代表に対し、意に反して連れ出すピックや、自由を奪って生活を強いる支援に関する違法性の認識について問い合わせたが、23日(金)17時の期限までに回答を得られなかった。同代表はこれまでも、本人の意に沿わない引き出し行為について、自著やメディア各社取材で繰り返し否定しており、訴訟の争点の1つになるとみられる。
同様の支援手法を用いる業者は各地に存在するが、なかでもワンステは、突出して被害を訴える元生徒の数が多い。ある日突然のピックのみならず、主な拠点である湘南校や、職業訓練校である御殿場校での寮生活やプログラムについても、元生徒たちから批判の声が上がっている。
(以下、略)


これまでにも裁判沙汰になったケースもあり、ひきこもり支援施設はさまざまな問題があります
外部によるチェックが入らない状況は早急に改善する必要があり、そうしない限りは施設運営が正常化されないでしょう。施設を運営する側がいくら善意をアピールしようとも
今回のように訴訟に巻き込まれたなら施設の信用も揺らぐはずであり、「自分たちのやっているのは人助けだ」と主張したところで疑いの目を向けられるのは避けられません
拉致・監禁だけでも犯罪です。ひきこもっている大人を更生させるためだ、と主張しても通用しません

【特集】中高年の引きこもりの実態と支援活動


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村上春樹「風の歌を聴け」 自我の語りと沈黙

村上春樹の初期作品をブログで取り上げるため、古くなった文庫本を引っぱり出してきてパラパラと読み返す作業が個人的には随分と楽しい時間に感じられます。同時に懐かしくもあり
読み返してまた新たな楽しみを味わえるというのは、何だかとても得をした気分になるもので、だからこそ誰かに伝えたくなるのかもしれません
今回は太田鈴子昭和女子大学特任教授による論文「村上春樹『風の歌を聴け』論ー内面を語るまいとする自我ー」から引用します
冒頭、太田教授は遠藤周作の評を引用していますので、まずはそこから取り上げます


「村上春樹『風の歌を聴け』論ー内面を語るまいとする自我ー」
(遠藤周作の評)
村上氏の作品は憎いほど計算した小説である。しかし、この小説は反小説の小説と言うべきであろう。そして氏が小説のなかからすべての意味をとり去る現在流行の手法がうまければうまいほど私には「本当にそんなに簡単に意味をとっていいのか」という気持ちにならざるをえなかった。
と言っている。「小説のなかからすべての意味をとり去る現在流行の手法がうまければうまいほど」としたのは、『風の歌を聴け』とほぼ同時代の小説に、まったく言うべきものを持たないものが登場し、この作品もまた何も言おうとしていないと感じていたからであろう。飽きずに見てしまう、確かにおもしろいと感じる、男女の新しい関係に興味を引かれる、だが考えさせられることやペーソスは全くないテレビドラマや舞台劇は、『風の歌を聴け』以降、しだいに増えているように筆者は思う。


筆者が指摘しているのはトレンディドラマのような、男女の関係を描くにしてもシチュエーション主体の話作りに偏り、物語に深みも奥行きもない作品を念頭に語っていると推測されます
対して、筆者は次に群像新人文学賞の選考を務めた佐多稲子の言を取り上げます。佐多は『風の歌を聴け』を読んでいて楽しい小説と表現し、青春の夏の日を定着させた作品であり智的な抒情歌と評価している、と紹介します
以下、『風の歌を聴け』は遠藤周作の指摘するような「語るべきなにものない小説」ではなく、語ろうとして語れない、語りそこねる小説であると見るのが筆者の論文のタイトルの由来なのでしょう
『風の歌を聴け』の冒頭から始まる、語ること、書き記すことの困難さを告白する内容は、それ自体一種のフィクションなのですが、もちろん村上春樹の作為であり、戦術と解釈できます


あたかもラジオのDJが、オンエアーの時はすべてのリスナーに声が届くよう気を使い、ことばに気を付けているように、「僕」もまた自我を見せないように努めているのではないだろうか。DJが、放送中でも音楽がかかっている間を自分の欲求を吐露するOFFの時間としているように、小説のどこかに「僕」の内面を見せる瞬間が潜んでいるのではないか。そう仮定すると、1章での、結局自分の語りたいことが語れなかったとする言い訳は、自我を語らないことのカモフラージュだとも読める。それは「僕」がすべてを認識しているのに語らないということではないし、自分を正直に語ろうとしないということでもない。それは、今の自分の内面を人に語るまいとする自我の現れなのである。


当ブログでたびたび取り上げている宮崎駿の漫画版「風の谷のナウシカ」の中に、庭園を管理するヒュドラと問答を重ねるナウシカがヒュドラに対し「沈黙もまた答えです」と申し向ける場面があります。これは極めて精神分析的な洞察であり、大好きな場面です
精神分析の立場からすれば雄弁に語る内容、自己主張にほとんど意味はないのであり、むしろ言い澱み、言い間違え、沈黙する場面にこそ重要な主張が潜んでいると考えます
その見方からすれば、『風の歌を聴け』で「正直に語るのは難しい」と前置きしつつ語られる内容自体に重要な意味はないのであり、言い澱む部分こそ重要なテーマ、エピソードが隠れていると解釈できます
例えばそれは「自殺した女の子について」です。作品の中で彼女について字数は多く費やされているものの、ほとんどが外形的なエピソードであり、そこは重要ではありません。しかし、彼女の死の原因についてはひどく簡略に触れるのみです


「僕」は、自殺した三人目の彼女について繰り返し多くを語っているのだが、その死を語ることばには、彼女の死によって彼女を認識できたというような自信が感じられない。
「死んだ人間について語ることはひどくむずかしいことだが、若くして死んだ女について語ることはもっとむずかしい。死んでしまったことによって彼女たちは永遠に若いからだ。」
その死について自分の認識を正直に語ることができない言う。祖母に対する無常観とはずいぶん違っている。彼女の死が特別なものとして語られている。


作品中、「彼女たちは永遠に若いからだ」などと書かれているものの、本質的には無関係な発言であり、はぐらかしている風に聞こえてしまいます。続く部分では「彼女は決して美人ではなかった云々」とも書かれているのですが、これもある種のはぐらかしでしょう
本当は彼女の死についてもっと書くべきことがあったはずであり、それを書こうとして書けなかったという告白、と受け止めます
なお、『風の歌を聴け』で書くことができなかった「彼女の死」が、『ノルウェイの森』として結実するのは言うまでもありません
さて、語ろうとして語れない話の代替として、語る必要もない話が饒舌に盛り込まれています。その1つがアメリカの作家デレク・ハートフィールドに関するエピソードです(これもどこまで重要視するか、さまざまな説があるところです)
確か「ユリイカ」の村上春樹特集号だったと思うのですが、ロシアの文芸評論家がアメリカの作家デレク・ハートフィールドから村上春樹はどれだけ影響を受けたか、との論評を書いたとのエピソードが紹介されていたように記憶しています(間違っていたらごめんなさい)
もちろんデレク・ハートフィールドなる作家は実在しないのであり、村上春樹の創作した人物です。おそらく上記のエピソードを聞いた村上春樹はニヤリとしたに違いありません
さて、デレク・ハートフィールドのエピソードに仮託して何を言いたかったのか、自分は明快な解釈ができません
太田論文でもデレク・ハートフィールドのエピソードに関し、何度か言及はしているものの特別な解釈は示されていません。これは今後の課題にします

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静岡の中学教頭が少女を誘拐し逮捕

今月初旬、静岡県沼津市内の公立中学校教頭が少女を誘拐した容疑で逮捕される、との報道がありました
週刊女性が以下のような記事を掲載し、「真面目な先生。何かの間違いでは?」との見方を提示していました


いつまでも帰宅しない少女。心配した親は警察に通報し、周囲も心当たりを捜し回った。一緒にいたのは「生徒指導に熱心」と評判のいい公立中の先生だった。
「逮捕は何かの間違いではないかと思っている。生徒や保護者から絶大な信頼を集めていたあの先生に限って……」
と、容疑者を知る男性は事件を信じられない様子。
まじめで実直な先生「もうすぐ校長だった」
その先生は、静岡県沼津市立中学校の教頭・山本英仁容疑者。9月下旬に県東部に住む10代の少女を車に乗せて誘拐し、車内に監禁した疑いが持たれている。
「少女の話から関与が浮上し、未成年者誘拐と逮捕監禁の疑いで10月4日に逮捕、翌5日に送検された。警察は被害者が特定されるおそれなどがあるとして、少女との関係性や犯行の詳細、容疑を認めているかどうかも明らかにしていない」(地元記者)
少女の親から「娘が帰ってこない」と110番通報があり発覚。関係者によると、事件や事故に巻き込まれたのではないかと周囲が心配して行方を捜すなか、少女は歩いて無事帰宅したという。
年の離れた山本容疑者との接点はどこにあったのか。
冒頭の男性は言う。
「山本容疑者は以前、少女が通う中学で教頭を務めていたことがある。少女にケガはなく、事件翌日も普段どおりに登校したと聞きホッとしている。誘拐目的が明かされていないが、やましくない事情があったのではないか。なにしろ、まじめで実直な先生だから」
つまり、「教頭と生徒」の関係だったということ。
(以下、略)


どうにも記事の書き方がすっきりしません。読み解く限り、被害者は山本容疑者が以前勤務していた中学校の生徒か、あるいは卒業生なのだろうと推測できます
被害者を保護するため、特定されないよう静岡県警が情報を規制するのは分かりますが、週刊誌の方も切り込み不足で何とも歯がゆい記事です
「真面目な先生だから冤罪の可能性もありえる」と筆が鈍ったのでしょうか?
しかし、静岡地検沼津支部は山本容疑者を起訴しています。起訴後、釈放したのか、勾留を続けているのかは不明です


静岡地検沼津支部は23日、同県東部の10代女性を車に乗せ誘拐したとして、未成年者誘拐と逮捕監禁の疑いで逮捕された同県沼津市立中の教頭、山本英仁容疑者(53)=同県富士市森島=を起訴したと明らかにした。ただ、同支部は「被害者の保護のため」として、罪名や起訴内容を明らかにしていない。
9月下旬に県東部で女性を車に乗せて誘拐し、車両内に監禁したとして静岡県警が10月4日に逮捕していた。
(産経新聞の記事から引用)


罪名や起訴内容を伏せている以上、憶測するしかないのですが、まずは起訴して有罪(判決)に処すのが相当と検察が判断したのであり、山本被告の行為は犯罪に該当するということです
なので、上記の週刊女性の記事になる「真面目な先生だから、何かの間違い」ではないと考える必要があります
一般論として教師が若い女性(元生徒)を誘拐したのですから、わいせつ目的なのでしょう。性行為に及んだかどうかは分かりません
教頭という立場なら、教師を指導するのが仕事です。全国で教員によるわいせつ事件が繰り返され、綱紀粛正を教育委員会は繰り返し呼びかけているところですが、教頭がわいせつ事件(であるかどうか、現時点では不明ながら)を起こすようでは何とも示すがつかないのであり、関係者は頭を抱えているのでは?

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セクハラ初鹿明博衆院議員 ようやく辞職

強制わいせつ容疑で書類送検されていた初鹿明博衆議院議員について、東京地検は今年9月に不起訴処分としていました。不起訴の理由は公表されていませんが、被害者との間に示談が成立したからなのでしょう
むしろ、示談が成立するまで東京地検が処分を保留していた、と表現した方がよいのかもしれません
当然ながら示談の内容等は公表しないとの条件付きでしょうから、詳細は藪の中です


旧立憲民主党に所属していた昨年12月に強制わいせつ容疑で書類送検された無所属の初鹿明博衆院議員(51)=比例東京=は22日、議員辞職願を衆院に提出した。その後、国会内で記者会見し、「自らの意思で議席を返上することが党や有権者に対するけじめだ」と辞職の理由を説明した。政治活動は今後も続けると強調した。
初鹿氏は「不起訴になったが、告訴されるということは私の言動に相手を不快にさせる原因があった。真摯(しんし)に反省し、辞職を(相手への)けじめとしたい」とも述べた。「支援者の信頼を著しく欠いた。政治家全体のイメージダウンにもつながったと感じ、大いに反省している」と陳謝した。
また、国会議員の特権意識があったのではないかとの指摘を周囲から受けたと明かし、「議員辞職することで、自分の体にまとわりついてしまった特権意識という衣を捨て去らなければならないと思った」と心境を語った。
次期衆院選に出馬するか否かに関しては「全く決めていない」と説明した。
初鹿氏は平成21年初当選で当選3回。27年5月にタクシー車内で同乗していた知人女性にキスを迫ったり、下半身に相手の顔を押し付けたりするなどした疑いで、昨年12月、書類送検され、旧立民を離党した。先月、不起訴処分が決まった。
議員辞職に伴い、29年の前回衆院選の比例東京ブロックで同党名簿順位で次点で落選した松尾明弘氏(45)が繰り上げ当選する見通し。
(産経新聞の記事から引用)


検事は「示談が成立し、被害者が被害届を取り下げなければ起訴する」との見解を初鹿議員側に伝えていたはずですから、弁護士を使って何が何でも示談に漕ぎ着けようとしたはずです
不起訴処分が伝えられた時点で初鹿議員は、「相手の方に不快に思わせた点があったとすれば申し訳ない」と謝罪した上で、「相手の認識と私の認識に違いがあり、考え方を改めるべく自分を見つめ直している途上です」とのコメントを出しています
議員辞職が示談の条件だったのかな、とも思いましたが、何とも言えません
コメント自体は、「わいせつ行為はしていない。合意の上だった」との主張が含まれているように聞こえ、反省などしていない印象がありありです
いずれにせよ、「わいせつ議員」とか「セクハラ議員」との悪評が確立してしまったのですから、次の選挙で当選する見込みは皆無ですし、どこの政党も初鹿明博を公認したり、推薦しないと分かったはずです
東大卒で早くから政治家を志し、都議会議員を経て衆議院議員になった人物ですが、これまで2度のわいせつ事件があり、口先では理想を説きながら下半身は下卑た欲望に満ち満ちているのでしょう
東京都の有権者はこのような人物に票を投じないよう、心してもらいたいものです

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宮崎駿「風立ちぬ」は戦争賛美アニメか?

宮崎駿の「風立ちぬ」については幾度も言及したところですが、公開から数年を経過しどう評価が定まったのか、気になるところです
作品の内容云々よりも、太平洋戦争に突入してゆく時代の、戦闘機の設計者を主人公にしたがゆえに戦争賛美する作品であると決めつけられ、批判を浴びました。特に中国や韓国で、さらにはこれまでジブリ作品を愛好してきたと称する日本人からも批判を浴び、宮崎駿としては憤懣やる方ない気分だったはずです
当然ながら「風立ちぬ」を制作する前に批判があることは想定していたのでしょうし、それを踏まえてもなお「風立ちぬ」を制作するべきと判斷した上で取り組んだはずです
しかし、想像以上の批判を浴びてうんざりしたのか、批判の中身のなさに失望したのか、宮崎駿は弁解や釈明を放棄してしまった感がありました。スタジオジブリは韓国メディアの記者を集め、宮崎駿が会見を行ってまで作品に対する誤解を解こうと試みましたが、失敗に終わっています。実際、批判する人を相手に何を言ったところで折り合えるはずもなく、妥協も和解も成立しなかったでしょう
本日は「偏屈文化人のブログ」さんから引用させていただきます


『風立ちぬ』再論 宮崎駿『風立ちぬ』にみる科学技術と倫理
反戦映画なのか、戦争賛美映画なのかとの論争
(前略)
様々なメディアでの批評の嵐は、『風立ちぬ』も例外ではなかった。この作品の批評が始まったのはテレビやラジオといったメディアよりも、ネットメディアであった。そもそもジブリ映画は、アニメーションということもあり、比較的若い世代に人気がある。ネットで言論を述べているのも若い世代であるから、以前からジブリ映画に対する様々な書き込みが見られた。公開されるやいなや、通称「ネトウヨ」と言われる、ネット上で右翼的な発言をしている人たちが、この映画について過激な批評を繰り出してきた。この映画が「戦争賛歌」だという解釈である。
また、この作品は公開前から問題視され、韓国のメディアは「(ゼロ戦を製造した)三菱重工は朝鮮人を強制連行し、労働力を搾取した」「(映画に登場する)関東大震災で朝鮮人の大虐殺があった 」とかなり厳しい批評を寄せた。ただ、同記事によると公開前に批判的なコメントの多かった韓国メディアは、公開されると特に作中に問題場面が見当たらないのか特に問題は生じなかった。
『風立ちぬ』は当初、韓国や中国、アメリカといった戦争をめぐる関係国からは歴史認識を問う問題が発生すると思われたが、公開してみるとそうした問題はほとんど生じなかった。その代わり、国内からの批判が相次いだ。本論にも関わってくる指摘をしている佐藤優氏は精神科医の斉藤環氏の「宮崎駿の最大の問題が、彼の敬愛するサン=デグジュペリや宮沢賢治にも親和性が高い生命論的ファシズムである」という部分を引用し、この作品を「堀越二郎が開発する飛行機全体が生命体であり、この飛行機を制作するチーム自体が生命体であることは、このアニメから容易に読み解くことができる」 と述べている。宮崎駿が機械を生命体と考えていることについては私も賛成するが、詳しくは後で述べる。ただ、その考察をしたうえで、佐藤氏は「この作品において、重慶で爆撃される側の人々が完全に捨象され、爆撃機を制作する技師たちの美学に吸収されている。「風立ちぬ」を見て、爆撃される側の気持ちを追体験する人がどのくらいでてくるであろうか」と評価している。私はこの点には賛同しかねる。
(中略)
なので、この映画が戦争賛美だという批評は的が外れていると私は考える。宮崎駿が描き出したかったのは、技術それだけでは無である。機械は少しは命を持っていると宮崎駿は考えているが、しかし、技術にしても機械にしてもそれを操るのは人間である。その使用方法を間違えればどうなるかということを問うているのであろう。
『風立ちぬ』は宮崎が、どのように機械に命が込められていくのかという過程を描いた作品であり、それを使用して戦争に向かって行った歴史に対しては何も述べていない。沈黙しているというのはただ無批判だということではなく、無言の抵抗だと考えたほうがいいだろう。
(以下、略)

文中に引用されている斎藤環と佐藤優の対談は「反知性主義とファシズム」(金曜日刊)として出版されています。佐藤優は「『風立ちぬ』が本当にファシズムだなと思う理由は,大衆を束ねちゃっているわけですよね。主人公の堀越二郎の仲間に対しては優しい眼差しで描かれているんですけれども,重慶の市民は視界から消えているわけです」と述べ、宮崎駿を「ふやけたファシズム」と断じています
佐藤優が言うところは、「戦争を賛美する意図を持たずに作られたアニメーション作品であっても、結果として戦争推進に組みした人物を主人公に据えた以上、その作品の公開をもって大衆を誘導する役割を果たすことになる」というものでしょう
大御所宮崎駿に忖度せず、ばっさりと言い切ってるところが佐藤優らしい気がします
ただ、そうした知識人の冷徹な見方に賛同する人が多いとは限りません
また、もう一つの佐藤の批判「爆撃を受けた側の重慶市民が描かれず、存在しないことになっている」については、何を描くかは監督(宮崎駿)の選択・判斷に委ねられているのであり、部外者が決めることではありません。もちろん、その結果としての作品批判を引き受けるのも監督ですが
もし、韓国が彼らの言う正しい歴史観を日本人に知らしめたいのなら、その正しい歴史観に基づいたドラマなり、アニメーションを作ればよいのであり、宮崎駿に「韓国の歴史観に基づいた作品を作れ」と命じられるはずはないのです(当たり前すぎて、書くのも嫌になります)
宮崎駿が堀越二郎と堀辰雄の人生を重ね、一つの物語を描こうとした意図は、決して彼らには理解できないのでしょう。それこそが文化の差異であると自分は感じます

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http://05448081.at.webry.info/201312/article_23.html
「火垂るの墓」を語る
http://05448081.at.webry.info/200903/article_22.html
映画「火垂るの墓」 海外での反応
http://05448081.at.webry.info/200906/article_53.html
映画「火垂るの墓」を極右映画だとして上映中止にした韓国
http://05448081.at.webry.info/200909/article_39.html
ワシントンでの「火垂るの墓」上映に激怒する韓国メディア
http://05448081.at.webry.info/201508/article_25.html
「風の谷のナウシカ」 王道と倫理
https://05448081.at.webry.info/202010/article_33.html
赤坂憲男「ナウシカ考」を読む その2
https://05448081.at.webry.info/202010/article_15.html
赤坂憲男「ナウシカ考」を読む その1
https://05448081.at.webry.info/202009/article_17.html
「風の谷のナウシカ」と自然・環境問題 その2
https://05448081.at.webry.info/202009/article_13.html
「風の谷のナウシカ」と自然・環境問題 その1
https://05448081.at.webry.info/202009/article_11.html
「風の谷のナウシカ」 その世界観を問う
https://05448081.at.webry.info/202009/article_7.html
「風の谷のナウシカ」 死と再生を考える
https://05448081.at.webry.info/202009/article_4.html
ナウシカの正義とサンデル教授「白熱教室」
https://05448081.at.webry.info/202008/article_23.html
「風の谷のナウシカ」に見る宮崎駿の矛盾
https://05448081.at.webry.info/202008/article_13.html
「風の谷のナウシカ」は愚行と矜持を描いた叙事詩か
https://05448081.at.webry.info/202008/article_11.html
ナウシカとマルクス主義
https://05448081.at.webry.info/202008/article_6.html
「ナウシカとニヒリズム」を考える
https://05448081.at.webry.info/202008/article_3.html
ナウシカに学ぶ女性リーダーシップ論
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「ナウシカ研究序説」を読む
https://05448081.at.webry.info/202007/article_17.html
ナウシカの辿り着いた場所 漫画版エンディング
https://05448081.at.webry.info/202007/article_11.html
「風の谷のナウシカ」の神話学を考える
https://05448081.at.webry.info/202007/article_2.html
構造主義の立場で「風に谷のナウシカ」を語る その1
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構造主義の立場で「風に谷のナウシカ」を語る その2
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防弾少年団の魅力 韓国評論家によるBTS論

「防弾少年団」という珍奇な名称のグループは世界的な人気を誇るK-POPのスターなのだとか
自分は正直、その魅力がどこにあるのかさっぱり分かりません。一見して整形した顔と映るメンバーが揃っており、作られた人形という不気味なイメージが湧くだけです
歌にしろダンスにしろ、何が優れているのやら
雑誌「AERA」に韓国人音楽評論家による「本格的BTS論」というのが紹介されていますので、取り上げます


「人としての魅力で熱狂的ARMY生み出す」 韓国人音楽評論家による初の“本格BTS論”
世界各地に熱狂的なファン「ARMY」を持つ「BTS(防弾少年団)」について、米韓で活躍する音楽評論家が彼らの音楽と人気を論じる、初の本格的BTS論『BTSを読むなぜ世界を夢中にさせるのか』が刊行された。著者のキム・ヨンデさんに、同著に込めた思いを聞いた。
*  *  *
韓国が生み、世界が育てたボーイズグループ「BTS(防弾少年団)」。8月にはデジタルシングルとして発売された「Dynamite」がK-POPとして初めて米ビルボードのシングルチャート「Hot100」で、1位となる快挙を成し遂げた。
本書は今やまごうことなき世界のトップアーティストになったBTSの音楽と人気の秘密について論考した、初の本格的評論だ。
「彼らの魅力、成功の理由は単純ではありません。私はこの本でBTSとメンバーがリリースした16枚のアルバムのレビューにもっともページを割きました。曲が持つ意味と魅力を音楽の観点から徹底的に読み解くと同時に、BTSを初めて聞く人にとってガイドとなるような視点を生み出したかったからです」
そう語るキム・ヨンデさん(42)は、2007年から米シアトルに暮らし、様々なメディアに音楽評論を寄稿してきた。BTSのライブやイベントにも参加してきた、目撃者でもある。
キムさんはBTSのアルバムを時系列に追いながら、ヒップホップジャーナリスト、BTSのコンテンツ翻訳アカウント運営者やグラミー賞投票メンバーといった人びとへのインタビューを実施。BTSに関わった人びとの視点が複合的に示される構成になっている。
「BTSはアイドルの新しいモデルを作りました。ヒップホップグループをめざしたBTSは、地方出身であるというアイデンティティーを隠さず、彼ら自身のストーリー、自分の悩みや苦しみ、嘘のない姿勢をファンに見せました。また、ソーシャルメディアでファンダムと交流することで、ARMY(アーミー)(熱狂的なファン)を生み出した。皆さんご存知のように、ソーシャルメディアでは発言する人のボイスが伝わってきます。こうしたやりかたは人間としての魅力を持っているBTSだから可能だったわけで、形だけ真似ることはできないでしょう」
去る9月、BTSは国連総会のバーチャル会合に出席。18年に続いて、2度目となるスピーチを行い、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を述べながら「人生は続く。一緒に生きていこう」と呼びかけた。
「BTS現象の本質は、観る人の共感と癒やしを引き出す、彼らの豊かな音楽とパフォーマンスにあります。それは既存のシステムが持つ権力ではなく、BTSの音楽の普遍性とファンとの関係のシナジーがともに作り出したものなのです」


以上は「BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか」(柏書房)の宣伝なのでしょう
しかし、これでは肝心のBTS論の中身がさっぱり伝わってきません。記事をまとめたライターがおそろしく無能なのか、あるいはキム・ヨンテの著作に元々中身がないのか
国連総会でスピーチしたから、それが何か重要な意味があるのでしょうか?
誰かがお膳立てをし、機会を与えたからこそ国連総会の場でスピーチができるのであって、重要なのはスピーチをした「防弾少年団」ではなく誰が何を狙って差配したかでしょう
機会を与えたならグレタ・トゥーンベリ嬢でもスピーチできます
「人生は続く。一緒に生きていこう」という防弾少年団のメッセージが凡庸すぎて、何か特別なものを期待していた人はがっかりしたのでは?
「防弾少年団」が何か特別なグループであるという具体的な例示があるならともかく、上記の記事からは伝わってきません
ソーシャルメディアでファンと交流していると指摘しても、そうした活動をしている芸能人は少なくないのであり、彼らだけが特別とは言えないのであり、「こうしたやりかたは人間としての魅力を持っているBTSだから可能だったわけで、形だけ真似ることはできないでしょう」と表現されても、意味不明です
さて、「防弾少年団」の所属する芸能事務所が株式を公開し、初日こそ買いが殺到して値上がりしたものの、その後は売りを浴びて値下がりを続けています。公開時の時価総額と比べ、2360億円も減少してしまったそうです。それでもまだ時価総額は5000億円以上を維持しているのだとか
事務所で売れているのは「防弾少年団」だけ、という実態からすれば時価総額5000億円というのは過大な評価であり、まだまだ値下がりするものと思われます

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「風の谷のナウシカ」 王道と倫理

角一典北海道教育大学教授の論文「ジブリ映画のメタファー : 科学技術と倫理をめぐって」を引用します
村上春樹の小説「海辺のカフカ」で、大島さんがカフカ少年に向けて言うところの「ゲーテが言っているように、世界の万物はメタファーだ」との表現が好きで、この角論文に惹かれた、という単純な理由です
宮崎作品における機械文明やテクノロジーに関する角教授の考察も十分検討に値するのですが、今回は論文の後半部分にある「風の谷のナウシカ」におけるクシャナと王道についての考察を取り上げます
このクシャナと王道の関係は以前にも取り上げ、自説を述べたところです。ただ、もとより自説に執着するつもりはなく、他の方の考察にも耳を傾けようと思い、再度取り上げます


ジブリ映画のメタファー : 科学技術と倫理をめぐって
(前略)
3.3 「王道」を歩むために 再び『風の谷のナウシカ』へ
ここまでの考察で、ジブリ映画において科学技術、そして魔法は、権力の源泉として位置付けられ、大きな力を持つ存在になればなるほど、倫理観とも呼べるような自制の心が必要となるというメッセージを垣間見てきた。
本稿を締めくくるにあたって、コミック版『風の谷のナウシカ』を手掛かりにしながら、力を持つものが追求すべき『王道』について、簡単にまとめてみよう。
(中略)
船を借りることのできたクシャナはシュワの地で墓所の崩壊を目の当たりにし、また、父ヴ王の末期に遭遇する。ヴ王から王位継承を告げられる。それに対し、クシャナは以下のように返す。
「私は王にはならぬ。すでに新たな王を持っている。だが帰ろう!!王道を開くために」
クシャナの人生はつらく苦しいものであり、また、大切なものを次々と失う悲しいものでもあった。土鬼の皇帝ミラルパやナムリスのように、絶望や虚無に屈する可能性すらあった中で、ナウシカやユパなど、様々な人々の導きで王道のなんたるかを理解し、それを実践する選択をした。
王道にとって最も必要なものとは何であろうか。それはおそらく友愛の精神である。コミック版『風の谷のナウシカ』では、巨神兵誕生の寸前に初めて友愛という言葉が使われる。
腐海の生物はひとつの生態系として「全てにして個、個にして全」の存在である。人間はその生態系外の存在であり、敵として存在し得るが、王蟲の心はそうした敵/味方の意識を超越したところに位置している。衝動的な怒りをコントロールできずに攻撃をすることもあるが、あらゆる生命の消滅に対して王蟲は悲しみの感情を覚えるのである。それは、憎しみはさらなる憎しみの連鎖しか生まないこと、そしてより多くの不条理な死を生み出すことを知っているからに他ならない。時空を超えて意識を共有できる種である王蟲にとって、憎しみの連鎖は忌むべきものであり、苦しみの源泉である。墓所の主に対して「王蟲のいたわりと友愛は虚無の深淵から生まれた」と強く言い返すナウシカも、土鬼によって引き起こされた大海嘯の最中、死に満ち満ちた世界とその元凶である人間に絶望し、王蟲とともに森になろうと決意した。
そして、王蟲の心の深淵に達し、さまざまな人々や動物たちにも導かれ、そこから期間したのである。
ナウシカのような経験は誰にでもたやすく乗り越えられるものではないが、ユパが言うように「ナウシカになれずとも同じ道は行ける」。クシャナが開こうと決意した王道とは、ナウシカが到達した王蟲の友愛であり、欲望や憎しみの連鎖からの解放である。


鳩山由紀夫の登場以来、自分は「友愛」という言葉が大嫌いになりました。なので、ブログでも日常生活でも「友愛」という言葉は使いませんし、今後も使う気にはなれません
なので、この「風の谷のナウシカ」に「王蟲のいたわりと友愛」というセリフが出てくると、どうにも居心地の悪い気分になってしまいます
もちろん、宮崎駿は鳩山由紀夫に影響されて「友愛」と言ってるのでありませんし、鳩山由紀夫に漫画版「風の谷のナウシカ」は理解できないでしょう
ただ、ナウシカは少数部族の族長の娘、という立場ですからクシャナのような王位継承候補者とは違います。そしてナウシカは超能力者でもなく、魔術師でもないのですから彼女に「王道」を歩む資格があるのかと問えば、ないはずです
ですが、物語の中でナウシカを多くに人の心をつなぎとめ、影響を与え、結びつける役割を果たしています。挙げ句に巨神兵というとんでもない化け物を手なづけ操るのですから、カリスマと表現して不足はないのでしょう
王位を継承する資格のない者が王位に手をかければ梟雄とか、簒奪者と批判されるのが常です
しかし、ナウシカは王にもならず、救世主や英雄にもならない道を選択するのであり、そこはクシャナと異なります。クシャナは代王としてではありますが、トルメキアを率いる立場に就くのですから。代王としてのクシャナが「ナウシカになれずとも同じ道は行ける」を実践したのは間違いないでしょう。そしてトルメキアが王を持たない国となるのはクシャナの死後と考えられます
さて、話を戻してナウシカが身を持って示したのは、友愛による共存の道であると考えられます(友愛、とは何かという問題も残るのですが)
それがかの世界に平和と安定をもたらしたのかどうか、定かではありません
推測するに、トルメキアも土鬼も多くの国民が大海嘯とそれにまつわる戦乱に巻き込まれて亡くなり、生き延びた国民の数が少なく、かつてのように「寸土を争って多くの血を流す」事態は避けられたのと思われます
生き延びたものの、毒によって赤子は育たず、人口の回復も国力の回復もままならない状況が続いたのではないでしょうか?
クシャナとナウシカのその後を考えると、友愛の精神によってすべてが上手く展開するとは限らないのであり、両者とも苦難続きであったに違いないと想像します

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東海大学野球部 大麻使用で活動停止

東海大学野球部の学生複数名が大麻を使用していたとして、神奈川県警の調べを受けていると報じられています
体育会系の学生が気軽に大麻を吸引するようになっては、部の活動を維持するのも困難になります(多くは連帯責任として部の活動を停止せざるを得ないので)


東海大硬式野球部で、部員が寮内で大麻の疑いがある薬物を使用したとして無期限活動停止となった。今年に入って名門運動部の薬物事件が相次いでいるが、氷山の一角との見方もある。SNSなどを通じて薬物が入手できてしまう容易さに加え、大学スポーツ界の構造的な問題を指摘する識者もいる。
東海大野球部で薬物使用を認めた部員は5、6人。大学側が全部員128人を対象に使用の有無のほか、寮内で薬物使用を見聞きしたことがないかどうか調査したところ「噂はある」「そういうことを聞いたことがある」などの回答があったという。
神奈川県警は16日に大麻取締法違反容疑で寮を家宅捜索。関係者によると、室内で薬物を使用したとみられる痕跡が見つかった。県警は採取した物質の鑑定を進めるとともに部員から事情を聴くなどして調べている。
大学の運動部では、日本大のラグビー部員が大麻所持で逮捕された。近畿大でも男子サッカー部員による大麻使用が発覚。部員の1人はツイッターで知り合った人物から購入していたという。
警察庁の統計では、大麻事件の検挙者は2019年まで6年連続で増え、20代以下が約6割を占める。大学運動部にも薬物汚染が拡大している可能性がある。
元千葉県警刑事課長の田野重徳氏は、「大麻はゲートウェイドラッグ(入門薬物)という位置付けで、大麻をきっかけに覚醒剤などより強力な違法薬物に手を出す恐れがある。大麻自体にも幻覚などを誘発する可能性がないわけではない」と解説する。
薬物を使っていた疑いのある野球部員はどうなるのか。大麻事件では現行犯逮捕のケースが多いが、田野氏は「大麻を所持していた当時の状況を裏付けたうえで通常逮捕に踏み切った経験もある」と語る。
一方、スポーツジャーナリストの小林信也氏は、「日大ラグビー部は無期限活動停止が明け、活動を再開した。東海大も他の部員への薬物検査や聞き取り調査を行い、再発防止策を整えたうえで比較的短期間で活動を再開するのではないか」とみる。
そのうえで、大学運動部が抱える構造的な問題についてこう指摘した。
「東海大野球部は110人が寮で生活するが、試合に出場できるのは20~30人程度。残りの大多数は、試合に出られないのに『野球しかしていない』ともいえる。彼らが大学で何を学ぶのかを考えることも大学スポーツの課題ではないか」
(産経新聞の記事から引用)


東海大にはプロ入りを志望した選手が複数名いるとの報道もあります。プロ入り後、大麻使用が明らかになったのでは話にならないので、プロ野球各球団は東海大の選手を指名するのを躊躇するかもしれません
あるいは実業団入りが内定している選手でも、そのまま実業団入りがかなうかどうか
そして来春、東海大進学を考えている高校生も、進路の変更を検討するかどうか、頭を悩ませるでしょう
大学でレギュラーの座を確保し、将来はプロ入りを考えている高校生もいるのですから
現時点では逮捕されず、警察による任意での事情聴取が続いているようですが、容疑が固まれば逮捕するはずです。すでに複数名の名前を挙げているメディアもあり、実名が明かされるのは時間の問題でしょう

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宮崎駿「風たちぬ」研究 夢見る権利

宮崎駿の作品「風立ちぬ」について書かれた論文を引用し、考えようという企画です
映画や小説の感想をブログやSNSに書く人は多いのですが、作品を対象とした学術論文を俎上に載せて語ろうという人はほとんどいないところに目をつけ、やっています
さて、今回は立教大学などで教鞭をとる今村純子講師の「夢見る権利 宮崎駿監督映画『風立ちぬ』をめぐって」を取り上げます
この論文に特に引かれたというわけではなく、Bingで検索をかけたら1番上に表示されたという即物的な理由によります(1番上に表示されるからには、検索されて読まれている論文なのでしょう)

「夢見る権利 宮崎駿監督映画『風立ちぬ』をめぐって」
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/27832/jinbun0001000200.pdf
この論文、「夢見る権利」について以下のように書かれています。「夢見る権利」とは唐突な感があるものの、そこは筆者なりの考え、ロジックがあるのでしょうから、まずは黙って読み進めましょう


11本のアニメ作品で国内外の広い人気を博し、『風立ちぬ』(2013 年)をもって引退宣言をした宮崎駿監督作品のなかで、一見したところ互いに異なるテーマを扱う作品を「夢みる権利」という視点から捉え直すならば、この個から普遍への展開の宮崎監督ならではの文様がうっすらと浮き彫りになってこよう。
(中略)
彼女たちを救い,彼女たちを支えるのは、苛酷な現実から目を背けず、それをありのままに受け入れる瞬間に、内側から発揮される彼女たち自身の 想像力であり、そのイメージの世界の豊かさである。どのように苛酷な現実に直面していようともわたしたちは自らの想像力によって「夢みる権利」がある。このことを宮崎監督のアニメ作品はつねに鮮烈に描き出している。
この「夢みる権利」という視点は『風立ちぬ』に至るまで一貫している。
だがこの映画は、それまでの宮崎の作品とは一線を画している。それはこの映画がファンタジーではなく、実在の人物が生きた10 年余りの年月を描いているということである。しかもその人物とは、爆撃機、わけても多くの若者を死に追いやった零戦(零式艦上戦闘機)の設計家として名高い、堀越二郎(1903~82 年)だということである。この強烈な負の刻印を超えて、いかにして堀越二郎その人に肉薄し、その人の生、その人の息遣いを描き出すことができるのであろうか。


宮崎駿が一貫して描き続けたもの、と問われても「はて?」と考え込んでしまいます
良くも悪くも宮崎駿はアニメ屋であり、思想家ではありませんし、グレタさんのように他国の政治家を罵倒して拍手喝采を浴びる社会活動家でもありません。「夢見る権利」を一貫して描き、主張してきたと言われても「へぇ?」と思うだけです
もちろん、筆者はそのような前提に立っているわけですから、そうだと仮定して先へ進みましょう
「風立ちぬ」の中で女性差別、階級差別というものを宮崎駿は描いており、貧しくとも差別されようとも「力を尽くして生きる」ことの大切さを訴えていると筆者は書きます。さらにその困難さ、残酷さについても


他方で、時代を正確に描写する本作品で着目すべきは、「この国はどうしてこう貧乏なんだろう」と、主人公がしばしば口にする「貧困」である。そして、「一等車と二等車」、「お嬢様と女中」の対照にあらわされる歴然とした階級性の存在、さらにはヒロイン菜穂子が、父親には「お父様」、夫・婚約者には「あなた」と呼びかけるのに対して,父親ないし夫が娘ないし妻に対して「お前」と応答する女性の社会的地位の低さ、また、二郎やその友人・同僚の本庄のような希少なエリートの存在とそのエリート意識の高さといった、今日とは全く異なる様々な階層における差別や差異の存在である。
そしてまたこれらは重層的に絡まり合いつつうごめいて当時の社会を構成している。このことは映画中盤、二郎の夢のなかで「君はピラミッドがある世界とピラミッドがない世界とどちらが好きかね」とカプローニが問うのに対し、「僕は美しい飛行機を作りたいと思っています」と二郎が応じる禅問答のようなやりとりを際立たせる。ここで銘記すべきは、自分の個性と資質に忠実に「力を尽くす」とはきわめて残酷で冷徹なありようを呈してしまうということである。
(中略)

それゆえ文化の創造には万人の幸福と相反してしまう不平等や差別がどうしようもなく孕まれることになる。「力を尽くす」とはそのような残酷さや冷酷さを引き受けることでもあり、またこの事実をわたしたちは端的に肯定することはできない。ただ「文化の創造」とはそうしたものだとしか言い得ないのである。そのことを映画は二郎の矛盾した生きざまのうちに描き出してゆく。

「ピラミッドのある世界」との喩えで何を言い表そうとしたのか、解釈が分かれます。往年の解釈からすれば、ピラミッドとは絶対的な権力者が多くの奴隷を酷使して建造した力の象徴という意味です。不平等な社会、格差社会を指し示す喩えなのでしょう。しかし、現代の研究ではピラミッドは奴隷労働によって建造されたのではなく、給与がきちんと支払われる職人集団によって建造されたものであると結論付けられています
これとは別に、ピラミッドのある世界=高度なテクノロジーの存在する世界(なおかつ分断され埋めがたい格差を伴う社会)を意味し、ピラミッドのない世界は原始的で牧歌的な世界(階級社会ではなく、貧しくとも平等な社会)を意味していると解釈する人もいます
文脈からすれば、筆者はピラミッドのある世界=差別のある奴隷労働の社会と解釈しているのでしょう。しかし、二郎は階級社会云々に関心はなく、問いに対してただ「美しい飛行機を作りたい」と語るのみです
この噛み合っていないやりとりを禅問答と筆者は表現します。ただし、航空技術者は社会学者や労働運動専従者ではないのであり、エリート技師である二郎が社会の格差に無関心、無頓着であるのは何も奇異なことではありません。が、筆者はこれを矛盾した生きざまと解釈しています
付け加えるなら、ドイツにおける空軍パイロットは貴族の仕事、役割とされ、上流階級出身者が多かったという事実があります。かつては騎兵の将校が上流階級出身者で占められた時代があり、馬が飛行機に代わったというわけです
さらに本題から逸脱してしまいますが、過去に取り上げた韓国メディアによる一連の「風立ちぬ」批判は作品の中身や、構成、表現などには一切触れようともせず、「零戦の設計者を描き、日本の戦争遂行を美化しているからけしからん」という主張ばかり繰り返されていました
翻って見れば、韓国メディアや中国メディアによる宮崎駿称賛は、1本のアニメーション作品で100億円単位の金を稼ぐからこそ、褒め称えているのであり、その描き出したもの、描こうとするものを称賛していたのかどうか怪しく思えてきます
当然ながら韓国のメディア関係者が堀辰雄の小説を読んでいるとは思えないのであり、その文学作品の価値など理解もしないまま「零戦の設計者を描くなどけしからん」と叫んでいたのでしょう
もちろん、戦闘機や爆撃機を開発した経験もない韓国ですから、航空機設計者の苦悩も喜びも理解できないし、共感もできないと想像します
最後に、揚げ足を取るような真似をする気はありませんが、論文の中で「そもそも飛行機を『美しい』と感受するのは、堀越二郎やジャンニ・カプローニといったごく一部の人間に限られるのであろう。それは万人に共通する感覚ではない」とあるのですが、この考えには賛同できません。多くの男の子は戦闘機であれ旅客機であれ、そのフォルムを美しいと感じるから好きなのです。女の子である筆者には理解できないのかもしれませんが(性的な差別をする意図はありません)
結論として、宮崎駿が「夢見る権利」の大切さを一貫して描き続けてという筆者の主張は新鮮に感じるものの、疑問符がつきます
宮崎駿が良くも悪くもアニメ屋であるように、二郎も良くも悪くも飛行機屋であり、男の子のままというのが自分の感想です

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http://05448081.at.webry.info/201308/article_29.html
「風立ちぬ」の公開を悔しがる韓国
http://05448081.at.webry.info/201308/article_25.html
「風立ちぬ」への批判が続く韓国
http://05448081.at.webry.info/201308/article_13.html
「風立ちぬ」 宮崎駿の思想を論じる中国メディア
http://05448081.at.webry.info/201308/article_10.html
「宮崎駿こそ日本のジレンマと矛盾」と書く論評
http://05448081.at.webry.info/201308/article_4.html
「風立ちぬ」を褒める岡田斗司夫
http://05448081.at.webry.info/201307/article_24.html
ゼロ戦復活を日本の再軍備と批判する朝鮮日報
http://05448081.at.webry.info/201707/article_17.html
日本を「零戦ブーム」と表現する韓国メディア
http://05448081.at.webry.info/201312/article_23.html
「火垂るの墓」を語る
http://05448081.at.webry.info/200903/article_22.html
映画「火垂るの墓」 海外での反応
http://05448081.at.webry.info/200906/article_53.html
映画「火垂るの墓」を極右映画だとして上映中止にした韓国
http://05448081.at.webry.info/200909/article_39.html
ワシントンでの「火垂るの墓」上映に激怒する韓国メディア
http://05448081.at.webry.info/201508/article_25.html
「風の谷のナウシカ」 王道と倫理
https://05448081.at.webry.info/202010/article_33.html
赤坂憲男「ナウシカ考」を読む その2
https://05448081.at.webry.info/202010/article_15.html
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構造主義の立場で「風に谷のナウシカ」を語る その1
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構造主義の立場で「風に谷のナウシカ」を語る その2
https://05448081.at.webry.info/202007/article_1.html

池袋暴走事故 無罪主張の狙い

池袋暴走事故で在宅起訴された飯塚幸三被告の裁判が始まっていますが、初公判で過失は一切ないと全面否定しています
車(プリウス)に何らかの異常が生じたため、と主張しているのですが、飯塚被告にしろ弁護人にしろ、それを立証するのは困難と考えられます。昔ならば、「車に何らかの異常が生じた可能性を否定できない」と、異常発生を100%否定できないのならば被告人の利益にするべきだとの考えで無罪を言い渡したのかもしれません
しかし、現代ではプリウスに事故直前、運転者がアクセルやブレーキを操作したかどうかデータとして残っているため、車本体に異常はなかったと推認できるのであり、飯塚被告の主張は無理筋です


池袋暴走事故の飯塚被告は実刑判決でも「執行停止」か…90歳以上で初収監の前例は?
昨年4月、東京・池袋で乗用車が暴走し11人が死傷した事故で過失運転致死傷罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(89)が初公判で「車に異常が生じた」として自身の無罪を主張した。その姿勢に批判の世論が高まっている中、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は16日、当サイトの取材に対し、飯塚被告が仮に実刑を受けても「年齢の壁」によって執行停止となり、「収監されない可能性が高い」と指摘した。
(中略)
刑事訴訟法第482条では、「懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者」について以下に列挙したケースがある時は「執行を停止することができる」とされている。
(1) 刑の執行によって、著しく健康を害するとき、又は生命を保つことのできないおそれがあるとき
(2)年齢70年以上であるとき
(3)受胎後150日以上であるとき
(4)出産後60日を経過しないとき
(5)刑の執行によって回復することのできない不利益を生ずるおそれがあるとき
(6)祖父母又は父母が年齢70年以上又は重病若しくは不具で、他にこれを保護する親族がないとき
(7)子又は孫が幼年で、他にこれを保護する親族がないとき
(8)その他重大な事由があるとき 
飯塚被告の場合は(2)に該当する。
小川氏は「刑事訴訟法428条では『70歳以上』となっているが、今は70代になって初めて刑務所に入る人は多く、珍しくはない。車いす生活の人もいれば、医療刑務所に入ることもできる。法務省の関係者に聞いたところ、『刑事収容施設法』では90歳などと年齢は明文化されていないが、実務上、収監されない可能性がある。
(以下、略)


上記の記事にあるように、90歳を超える高齢者であれば収監される可能性はほぼないと言えます
ですが、飯塚被告は「有罪判決を受けたけれども刑務所には収監されない」という扱いすら我慢できないのでしょう
高級官僚としてのキャリアに一点の傷もあってはならないと考えているのか、とことん無罪を主張し、東京地方裁判所で有罪判決が下されたなら控訴し、それでもダメなら最高裁にまで持ち込む気だと思われます
裁判中に死亡すれば、有罪判決は確定しないまま裁判は終了します。現在89歳ですから、最高裁まで争い判決が下されるのは2年先か、3年先になるか?
どれだけバッシングを浴びようと、考えを変える気はないのでしょう。あらためて業の深さを感じます
当然ならが被害者遺族側は過失を認めようとしない飯塚被告と示談に応じるはずはなく、交渉は暗礁に乗り上げたままでは
事故の後始末もしないまま飯塚被告が死亡するとなれば、何とも迷惑な話です

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「海辺のカフカ」を巡る冒険 性と暴力の神話として(2)

遠藤伸治県立広島大教授の論文「村上春樹『海辺のカフカ』論ー性と暴力をめぐる現代の神話ー」を引き続き叩き台にさせてもらいます
論文は以下のアドレスからダウンロードできます

村上春樹『海辺のカフカ』論 : 性と暴力をめぐる現代の神話

前回は遠藤論文の中の、小森陽一による「海辺のカフカ」批判について触れた部分ばかり語って終わってしまいましたので、今回は別のテーマでいきます
「海辺のカフカ」の物語は、その前提としてギリシア悲劇であるオイディプス王の神話が使われています
村上春樹は「海辺のカフカ」を執筆にするにあたって、オイディプス王の神話をベースに用い、しかもそれとは異なる展開の物語にしようと企図したのでしょう
田村カフカの父親は息子に対し、繰り返し「お前はいつかその手で父親を殺し、いつか母親と交わることになる。また、姉ともいつか交わる」と繰り返し申し向け、呪いのようにカフカ少年の意識に刻み込んだ
「父は、自分を捨てて出ていった母と姉に復讐をしたかったのかもしれない。彼女たちお罰したかったのかもしれない。僕という存在を通して」というのが「海辺のカフカ」の物語の序盤の骨子です。
遠藤論文は以下のように考察しています


一 暴力の再生産装置
確かに、〈父〉が言い聞かせた〈予言〉は、「オイディプス王が受けた予言」と同じである。しかし、一方〈僕〉の語る〈物語〉は、オイディプス王の神話とは異なっている。したがって、オイディプス王の神話とこの神話の近代バージョンとも言えるフロイト的心理学や人間学を、『海辺のカフカ』という作品に単純にあてはめるべきではない。逆に、男女の役割が変化しつつある現代にあっても持ちこたえている王ディプス王の神話のフロイト的解釈、フロイト的人間学に対する批評性、それらからの逃走こそ、この『海辺のカフカ』という作品の意義は見出される。
(中略)
それゆえ〈僕〉は、〈カフカ〉と名乗り、自然的生得的な〈無意識〉についてではなく、人為的に作られた〈装置〉、〈処刑機械〉について語る。カフカの〈流刑地にて〉に登場する「複雑で目的のしれない処刑機械は、現実の僕のまわりに実際に存在したのだ」と。〈父〉こそが、最初から所有も、支配もできなかった〈母/姉〉に対する欲望と憎悪を〈息子〉に投影し、破綻したエディプス的三角関係を言葉によって捏造し、〈父殺し〉という暴力と、〈母/姉〉に対する所有・支配という欲望とを〈僕〉の中に無理やり再生産しようとするのであり、そのような〈僕〉を通して、タブーを犯した〈母/姉〉を〈罰〉し、〈処刑〉しようとする暴力的存在以外の何者でもないのだと。


こう端的に語ってしまうと身も蓋もない物語のように映ります
酒によっては暴力をふるい、刑務所に出たり入ったりする父親が、息子をそそのかし挑発して悪の道へ追い込んでしまう話、みたいな
さて、カフカ少年の父親はなぜ息子に対し、「お前はいつかその手で父親を殺し、いつか母親と交わることになる。また、姉ともいつか交わる」との予言(予言と呼ぶべきものかどうか、そこにもさまざまな解釈があります)をしたのか?
その物言いは父親殺しをそそのかしているようにも読み取れます。ならば処罰すべき対象は〈母/姉〉ではなく、〈父〉自身ということになります
ただし、その父親殺しをカフカ少年の手で実行させたのなら、今度はカフカ少年が裁かれる結果を生じるのであり、何の救いもない展開です
上記の遠藤論文では父親=暴力的存在以外の何者でもない
なので、カフカ少年に父親殺しをそそのかすような言動を繰り返した理由も、それで何の利益が得られるのかも不明なままです
以前、当ブログでは自分の解釈として「母や姉の行方を捜し、再会してはならない」との警告ではなく、「母や姉の行方を捜し求め、会いに行け」とのメッセージであると受け取れると書きました
母や姉との再会に重点を置いてあの予言を解釈するなら、「父親殺しをする前に家を離れ、母を捜しに行け」との意味でしょうか?
物語でカフカ少年は四国行きのバスで偶然姉と乗り合わせるとか、立ち寄った図書館に母親がいるという御都合主義すぎる展開もあれですが、オイディプス王の神話そのものが旅先で偶然父親と出会いそうと知らないまま殺害したり…という御都合主義的展開なのですから、「海辺のカフカ」の方にも違和感はありません
その辺りは村上春樹が意図してやっているのでしょう
「エディプスコンプレックス」を話に織り込んだ上で、なおもオイディプス王の悲劇とは別の展開を模索し、描いた(遠藤論文の言うところの「エディプスの三角関係から逃走した」)と解釈できます
ただし、ジョニー・ウォーカーに擬えたカフカ少年の父親は殺害されてしまうので、本当の意図が何であったかは不明のままです。読者の想像に委ねられた、と判斷するしかありません
もちろん、暴力の再生産という悪循環を断ち切ってそこから逃げ出す展開こそが物語の本筋ですから、父親の意図はどうでもよいことになってしまうのですが(それを問うのは、神話に登場する神様に向かって「なぜ、そうしたのか?」と問うのと同じです)

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韓国の仮想戦記小説 日本を植民地に

時折、韓国で「日本に勝って支配する」という設定の仮想戦記小説がブームになります
古くは金辰明の小説「ムクゲの花が咲きました」が有名です。日本に核ミサイルを撃ち込むというストーリーがウケて、韓国では450万部も売れる大ベストセラーとなり、テレビドラマ化もされました
今度はジャーナリストとして東京特派員も経験した人物が書いた「韓日戦争未来小説2045年」が話題になっていると報じられています
元記事が韓国語なので、いつものようにインターネットの掲示板「5ちゃんねる」に貼られた蚯蚓記者の翻訳を引用させてもらいます


東京特派員出身の現職ジャーナリストが挑発的な小説を出して話題になっている。
2031年独島(ドクト、日本名:竹島)上空で起きた韓日戦闘機の偶発的交戦から小説は始まる。独島戦争が全面戦争に広がり、その時、南北統一直前段階の韓半島北部司令部から東京に向かってミサイル攻撃が降り注ぐ。
東京市内の官庁街と皇居が廃墟になり、結局、日本は降伏、韓国の植民地に転落するという挑発的なストーリーが展開する。
韓国の暴力団が列島に進出してヤクザを掌握、韓国警察の指図を受けた暴力団がヤクザを率いて皇居に侵入、皇后を暗殺して天皇は米国大使館に逃げて身を守るなど過去、大韓帝国で起きた歴史が逆に再現される。
また、日本で大地震と原発爆発が相次いで発生し、放射能解毒剤が韓国人だけに普及するとすぐに怒りが爆発、日本独立運動が野火のように広がる内容も入れられた。
独立軍の韓国軍部隊奇襲に続きついに大統領府襲撃まで。追って追われる戦闘場面も目の前に繰り広げられるように生々しく描写される。やがて2045年、日本独立軍は米国に助けを乞うて覇権を失った米国が東京湾空襲を試みるが中国、ロシア軍の介入で第三次大戦が勃発する。
結局、日本は三つに分かれて分割統治される境遇に転落するというあらすじだ。
各エピソードごとに20世紀初期に韓半島で起きた過去の歴史の既視感がある。韓国人読者なら誰でも息づまる展開を手に汗を握って痛快に読むことができる。
著者は2019年夏、日本の輸出規制措置で触発された韓日経済戦争が始まるとすぐにこの小説を書く気になったと話す。「有り得ない話だが、ただ想像の翼を広げて書いた虚構」としながらも「むしろ日本人たちに読んで欲しいと思う」と話す。
「実際の皇后殺害場面だけはあまりにひどいと言って手で遮る日本人の知人には、その内容は小説にすぎないが、百年余り前、日本人の浪人が大韓帝国皇宮に侵入して明成皇后を残忍に殺害したのは実際にあった歴史だ、と言うとすぐにどうしていいか分からない表情になった」として苦々しいと言った。
それでも著者は話す。「歴史を逆に書いた虚構の未来小説を通じて韓日両国国民が過去を反すうし、平和な協力関係を構築していくことを希望するだけです」
特にこの小説は読者の意見を反映して書いた点が目につく。小説をブランチに連載しながら40人余りの読者・知人たちにエピソードごとに次のストーリーの方向を選択するよう投票に任せる方式を選んだ。以前、人気連続ドラマが視聴者たちの反応と要請を反映されたように、この小説もそれと類似の方式で展開した。
YTN東京特派員を過ごした著者ユン・ギョンミンは現在、京畿(キョンギ)大学政治専門大学院で国際政治学博士課程を経てLGハロービジョン地域チャネルで報道局長として働いている。
(後略)
ソース:文化ニュース(韓国語)東京特派員出身現職ジャーナリストの挑発的な小説'韓日戦争未来小説2045年'


記事の中で作者ユン・ギョンミンは「むしろ日本人に読んでほしい」と発言しているのですが、日本語に翻訳出版されてもウケる可能性はないのであり、一部のマニアが読む程度でしょう
閔妃暗殺事件(韓国では明成皇后暗殺)の意趣返しのつもりで書いたと思われますが、この事件に関して韓国側の見解は大間違いであり、史実を無視したものです
そもそも李氏朝鮮末期はそのでたらめな政治によって国民が窮乏し、国家財政も破綻状態にありました。が、閔妃はロシアから借金をするなどして贅沢な暮らしを続け、国民を顧みなかった人物です。ところが韓国では、国民に慈愛を示した「国母」という扱いで、悲劇のヒロイン状態になっています
閔妃が王宮の警備についていた兵士への給与支払いを渋ったため、兵士らは警備をボイコットし、そのため日本の大陸浪人や朝鮮人の無頼漢、日本軍兵士らがやすやすと王宮に入り込んで閔妃を暗殺した、という解釈があります(さまざまな説があって確定したわけではありません)
ともあれ、そうした歴史を反芻したところで現代を生きる日本人として得られるものはないのであり、ましてや韓国が都合よく書き換えてしまった嘘の歴史を受け入れる気にもなりません(作者ユン・ギョンミンは、歴史を知れば日本人は反省するだろうと思い込んでいるのでしょうが)
詳細は未読なので不明ながら、万事が韓国側に都合よく展開し、日本が降伏する話なのだと思われます

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ワタミの「24時間働け思想」復活

居酒屋「和民」で働いていた女性が過労のあまり自殺してしまった件では、運営会社ワタミが和解に応じたため決着しました
しかし、参議院議員をしていた創業者渡邉美樹が6年の任期を終え、再選を望まないとして政界を引退し経営に復帰してからは、昔のように「24時間働け、365日働け」という理念に舞い戻っていた…と文春オンラインが報じています
従業員を自殺に追い込み、謝罪の弁を口にしたものの渡邉美樹は自分の理念に執着し、「オレは間違っていない」と叫び続けていたのでしょう
もちろん、ワタミとそのグループ会社の幹部たちは皆、渡邉美樹の理念に共鳴した者で占められているのでしょうから、彼らも皆、渡邉の正しさを称賛し、賛同したと想像します


「365日24時間働こう」……ワタミの“思想教育”はいまも続いていた
創業者・渡邉美樹氏の「お言葉」の感想強制も
ワタミ株式会社の労働問題に関する告発が続いている。10月2日、「ワタミの宅食」営業所の所長が、労働基準監督署からの残業代未払いの是正勧告、月175時間を超える長時間労働、上司によるタイムカードの改ざんを次々と公表したのだ。
(中略)
毎月、営業所には渡邉美樹氏が出演する「ビデオレター」が提供された。人気テレビ番組「情熱大陸」のナレーターが起用され、渡邉美樹氏が毎回出演し、ワタミの事業の素晴らしさを説く30分間の映像である。
この映像についても、毎月の感想が義務付けられていた。しかも書くのは所長だけではない。個人事業主であるはずの配達員までも、毎月ビデオレターを視聴して感想を書くことが契約に盛り込まれていた。
配達員たちは、営業所でこの映像を見せられると、所長と配達員の名前が羅列されたシートの自分の感想欄(60字ほどは書けるスペースがある)に、手書きで感想を書かされる。なお、配達員は配達先1軒あたりの報酬が百数十円しかないが、この映像視聴や感想を書くことによる新たな報酬は一切ない。
(中略)
月の残業時間が150時間を超えたころ、Aさんは長時間労働について「私が悪い」と思い詰めていた。多すぎる業務量はワタミの責任なのに、そこは「思想教育」のために受け入れてしまい、むしろ仕事が遅いせいだと自分を責めるようになっていたのだ。
そんなとき、新しく入った配達員の一人が、深夜まで働くAさんを見て心配し、単刀直入に指摘してくれた。
「Aさん、『洗脳』されてるんじゃないの?」
当初、「失礼な人だ」と憤ったが、何度もこの配達員が親身になって指摘してくれるうちに、「私、おかしいのかも」と思い始めるようになっていた。
また、単身赴任中だった配偶者が、コロナ禍によってテレワークで自宅勤務をするようになっていた影響も大きかった。Aさんが深夜や休日も延々と働く姿を見て、目を覚ますよう何度も説得したという。
最後に、Aさんは筆者が代表を務めるNPO法人POSSE、そして個人加盟の労働組合のブラック企業ユニオンに辿り着き、ワタミの労働問題を大々的に告発することを決意した。こうして、周囲の人たちに恵まれ、支援者に出会えたことで、Aさんはワタミの「洗脳」を脱し、これまでの労働問題を直視できるようになったのだ。
Aさんはいま、自分がワタミの労働問題に加担したのではという自責の念を抱いている。「ひとつ間違えば、私も上司と同じことをやったと思います」。自分の責任を果たすべく、これからもAさんは、ワタミの告発を続けていくつもりだという。


従業員を使い潰す体質に何一つ変わりはなく、自分たちは社会に貢献しているのだと歪んだ理念で覆い隠すつもりなのでしょう
企業経営者が自身の掲げる理念に酔いしれ、思想家にでもなった気でいるなど滑稽な限りです
しかもワタミの企業活動を身内同士で褒め合うなど、醜悪でしかありません。どこの企業にも大なり小なり問題はあるのですから、それを互いに忌憚なく指摘し合い、改善を検討するべきでは?
従業員が1人や2人自殺したくらいでは、何も変わらない、変われないという見本なのでしょうか

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村上春樹「一九七三年のピンボール」研究

村上春樹の小説を続けて取り上げています
「一九七三年のピンボール」は初期の村上作品の中でも、自分が最も好きな小説です。その理由については以前、当ブログで書きましたので繰り返しません
いつもなら誰かの論文を引き合いにして語るところですが、いくつか検討したものの使うのに適切なものがなかったので断念します
この小説は昭和55年上期の芥川賞候補に挙げられたものの、受賞は逃しています(最終的にこの期は該当作なし、になっています)
そこで当時の選評を引用します
選考委員のうち、言及している方とその内容は以下の通りです


「よいと思つた」「古風な誠実主義をからかひながら自分の青春の実感である喪失感や虚無感を示さうとしたものでせう。ずいぶん上手になつたと感心しましたが、大事な仕掛けであるピンボールがどうもうまくきいてゐない。」(丸谷才一)
「三篇(引用者注:「闇のヘルペス」「一九七三年のピンボール」「羽ばたき」)のいずれが入賞しても不満でないと考えていたが、またそれらいずれにも積極的に賞へと推すことにはなにか不充分な思いが残るのでもあった。」「前作につなげて、カート・ヴォネガットの直接の、またスコット・フィッツジェラルドの間接の、影響・模倣が見られる。しかし他から受けたものをこれだけ自分の道具として使いこなせるということは、それはもう明らかな才能というほかにないであろう。」(大江健三郎)
「おもしろかった。」「この時代に生きる二十四歳の青年の感性と知性がよく描かれていた。」「(引用者注:同棲している)双子の存在感をわざと稀薄にして描いているところなど、長い枚数を退屈せずに読んだ。」(吉行淳之介)
「筋のない小説で、夢のようなものだ。主人公は英語とフランス語の飜訳事務所を開いているとあるが、生活は何も書いてない。」(瀧井孝作)
「ひとりでハイカラぶつてふざけてゐる青年を、彼と同じやうに、いい気で安易な筆づかひで描いても、彼の内面の挙止は一向に伝達されません。現代のアメリカ化した風俗(引用者中略)を風俗しか見えぬ浅薄な眼で捕へてゐては、文学は生れ得ない、才能はある人らしいが惜しいことだと思ひます。」(中村光夫)
「予想通り(引用者中略)最後まで残った。」(遠藤周作)
「新しい文学の分野を拓こうという意図の見える唯一の作品で、部分的にはうまいところもあれば、新鮮なものも感じさせられるが、しかし、総体的に見て、感性がから廻りしているところが多く、書けているとは言えない。」(井上靖)


吉行淳之介は村上春樹が前作「風の歌を聴け」で群像新人賞を受賞した際の選考委員でもありましたので、村上に注目していたのでしょう
前回の芥川賞選考時、辛辣な評をしていた大江健三郎は宗旨変えをしたかのように高く評価をしており、興味深く感じられます。それでもまあ、大江特有の皮肉と受け取らなくもないのですが
中村光夫は全否定、という感じでよほど感性が合わなかったのでしょう
井上靖にすれば、彼の作風と真逆とさえ感じる村上春樹(饒舌にして軽薄とさえ感じられる文体)ですから、芥川賞に値するとの評価にはならないと想像します
「一九七三年のピンボール」はおそらく選考に関わる作家にしても、読んだことのないタイプの小説でしょう
しかも、途中に差し込まれたピンボールに関する蘊蓄に興味も関心も抱けないとなれば、読んでいて苦痛でしかないのかもしれません
(ピンボール愛好者の自分にとってはそこが面白く、興味深かったのですが)
ですから、この作品を評価しろと提示された作家や評論家が戸惑い、あるいは嫌悪感を示すのも無理からぬところがあったと思われます
さて、小説の作風自体、前作の「風の歌を聴け」と微妙に変化していますが、内容としては前作と本作で1つという格好です
ただし、村上作品人気投票では「風の歌を聴け」が「ノルウェイの森」に続いて2位に位置するものの、「一九七三年のピンボール」は11位となっており、意外なほど人気がありません
村上春樹の人気書籍ランキング!みんながおすすめする作品は?
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頭の固いベテラン作家にはウケが悪くても、当時の若い世代にはすんなり受け入れらたのではないかと思ってのですが
まあ、上記のランキングは必ずしも作品発表当時の反応を示すものではないので、そこは保留しておきましょう
言えるのは、今回「一九七三年のピンボール」についての批評、論文をGoogleやBingといった検索エンジンを使って調べたものの、件数が非常に少ないという事実です
なので、研究対象から漏れている、あるいは研究対象から外している実態が伺えます。評論家、研究者の側からすると扱いにくい作品なのかもしれません
もう少し調べてみて、何か面白い評論でも見つかれば再度、取り上げたいと思います
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中学教師体罰 全治3カ月の重傷で逮捕

いまどき生徒に体罰を加えた教師が逮捕されるという、時代錯誤みたいな事案が兵庫県宝塚市でありました
体罰は教師による暴力であり、怪我をさせたなら傷害という刑法犯になります
そんな当たり前のことをわきまえていない教師がまだいるのであり、唖然とさせられます


中学教諭、生徒の背骨折り逮捕
中学校の部活中、部員の男子生徒2人に体罰を加えてけがを負わせたとして、兵庫県警宝塚署は12日、傷害の疑いで、宝塚市立中学校教諭の男(50)=西宮市=を逮捕した。
逮捕容疑は、9月25日午後4時半ごろから約30分にわたり、同校の道場で、顧問を務める柔道部の1年生男子部員2人に対し、投げ技をかけて両頬を数回殴ったり、寝技をしつこくかけたりしてけがを負わせた疑い。12歳の生徒は背骨を折り全治約3カ月の重傷で、13歳の生徒は首に軽いけが。調べに対し、「おおむね間違いありません」と容疑を認めている。
同署によると、道場にある冷蔵庫で保管していたアイスクリームがなくなっていた事案が発生。男らが部員を対象に聞き取りをした結果、2人が食べたことを認めたため、部員らの前で暴行を加えたという。2人の両親が数日後に同署に相談。10月に入って被害届を出した。
同署によると男は2016年から同校で勤務。当時から柔道部の顧問を務めていたという。
宝塚市教育委員会によると、事案が起きた9月25日、学校側から市教委に報告があったという。
同校は10月12日午後7時から、保護者会を開いて説明。その後、午後9時すぎに同校から市教委に逮捕の連絡があったという。同市教委は「まずは事実確認を進めたい」とした。
宝塚市内では、今年6月にも市立中学校で女子生徒に対して厳しい指導をしたとして、生徒が所属する部活動の男性顧問が停職1カ月の処分を受けている。女子生徒は指導を受けた後に校舎から転落し、腕の骨を折る重傷を負った。
(神戸新聞の記事から引用)


記事では教師の名が伏せられていますが、上野宝博であると露見しています
背骨を折って全治約3カ月の重傷と記事には書かれているものの、別の報道によればコルセットで患部を固定し学校に通っていると伝えられており、怪我の程度には不明な点があります
ともあれ、どう見ても傷害事件であり、逮捕して身柄を取るのは警察として当然の対応でしょう(罪証隠滅のおそれや、逃亡のおそれがあるかどうかはともかく)
なので、事案はすでに中学校や教育委員会の手が届かないところに至ってるわけです。警察は必ず身柄付きで送検するはずです。今後、勾留するかどうかは検察の判断になります
上野宝博容疑者は過去にも体罰で訓告2回、減給処分1回があり、札付きの暴力教師と呼んで差し支えないでしょう
そのような人物を柔道部の顧問に据えていた学校長の判斷も適切であったか、問われなければなりません
率直に言って過去に3度、体罰で処分を受けているのですから教師としては不適格であり、早々に辞めさせるべき人物です。今回どのような刑事処分が下されるかはまだ分かりませんが、免職するのが相当です。でないと、次は生徒を柔道技で絞め殺すかもしれません
最悪の事態に至る前に教師を辞めさせ、生徒の命を守る必要があります
上野宝博のやっているのは教育ではなく、私怨による暴力です。それを彼自身抑えられないのですから、教師失格だと自分は思います

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