職場不適応

社内の異動で入社以来勤務していた部署を離れ、新たな仕事についた女性

から、「どうしても仕事になじめない。人間関係もうまくいかないので元の部署

に戻してもらえるよう頼んでみたい。それが駄目なら会社を辞めたい」という

内容の相談を受けました

若い女性は特にそうなのですが、防衛の構えが強くてなかなか率直に内面を

明かしてはくれません。彼女の抱えている問題が職場への不適応だけとは感

じられなかったので箱庭を使ってみました

箱庭は四角い箱に砂を敷き、そこに人形や動物、家のミニチュアを並べてそ

の人なりの世界を作ってもらう技法です。心理療法として、あるいは心理テス

トとして利用されます

彼女は箱庭を前にすると時間を置かず、動物や植物、家などのミニチュアを

棚から選び出して配置しました。家の周囲を二重に柵で囲み、その外側に牛

や馬などの動物がいる構図です

箱庭の解釈にはグリュンワルトの空間象徴理論を使います。箱庭の空間そ

れぞれに象徴的な意味があるとの考えです

彼女が砂の上に置いた家は彼女自身を示していると解釈するのですが、場

所は箱庭の左下隅でした。ここは退行、あるいは幼児期への執着を意味す

る場です

箱庭で描き出された世界を手がかりに、なぜ彼女が幼児期への執着を抱い

ているのか、こどもの頃のエピソードを訊ねました

聞き得た情報では、彼女には年上の姉がいてこどもの頃から仲がよかった

そうです。その姉の結婚が決まり、準備に向けて家庭の中が慌しくなってい

るとの話です

このケースについての自分は、社内異動に伴う職場での不適応が直接の原

因ではなく、仲のよい姉の結婚に触発された意識化されていない苛立ちや寂

しさによるものだと解釈しました

彼女にとって姉は自分のモデルであるとともに、身近にいてくれる存在です。

その姉が結婚し嫁いで行くのを妹として当然祝福しているのですが、無意識

下では「姉が自分を置き去りにして別の世界へ行ってしまう」ことへの不安と

不満があるのです。この不安や不満は意識されないよう封じ込められていま



さらに言うなら、成熟した女性として自立すべき時期にさしかかっているのを

彼女自身うすうす感じつつも、不安を感じて踏み出せずにいるわけです

幼児期への執着は仲のよかった姉と離れる不安や自立へのためらいに由

来しているのでしょう

さて、以上のような解釈がどこまで妥当であるかは彼女自身が判断するも

のです

しかし、最初の相談の内容(新しい職場になじめない)だけに着目し、「もっ

と上司と話し合った方がよい」とか、「仕事に取り込む心構えが足りない」な

ど助言していたのでは何の解決にも結びつかないおそれがあります

相談を持ちかけてくる人が何を悩み、何を不安に感じているのか、すべて

を言語化して語れるとは限りません。むしろ、言語化されない(無意識の中)

にこそ問題が隠れていたりするのです

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箱庭療法の基礎 (1984年)
誠信書房
岡田 康伸

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