バイロイト音楽祭 2003年

音楽つながりで話題を一つ

小泉首相は2003年、ポーランドやドイツを巡る外遊に出発し、ドイツのシュレーダー首

相の招待でバイロイト音楽祭を訪れました

日本のメディアの中には自民党国会議員の口を借りて、「政府専用機でオペラ見物にで

かけるとはいい気なものだ」と批判する記事を掲載したところもあります

しかし、現地ドイツでの反応は違ったようです

バイロイト音楽祭は作曲家ワーグナーが自分の楽劇を上演するために開催したもので、

専用の劇場でワーグナーの作品のみが取り上げられます

かつてはナチスのヒトラーがワーグナーの音楽に惚れ込み、ドイツ精神文化の聖地と

いう扱いでバイロイト音楽祭を利用しました

そのためもあり、戦後ドイツの首相がバイロイト音楽祭に赴くのはタブーとされてきた

事情があります

「ドイツの首相がワーグナーの楽劇を鑑賞して何の問題があるのか」と思うのですが、

やはりナチスと絡めた政治問題扱いされる懸念が強く残っていたようです

2002年のバイロイト音楽祭でワーグナー家はシュレーダー首相を公式に招待したので

すが、シュレーダーは参加を躊躇し断ってしまいます

これでワーグナー家側との関係がこじれてしまいました

そこへ日本の小泉首相が登場します。オペラ好きである小泉首相をバイロイト音楽祭へ

誘い、これをエスコートする形でシュレーダー首相もバイロイト音楽祭へ出向きました

戦後、長くタブーとされた政治問題を打破して政府首脳によるバイロイト音楽祭参加を実

現させ、日本の首相まで伴ってみせることでシュレーダー首相は面目を保ち、ワグナー家

とも和解できたようです

「オペラ鑑賞など道楽」だと決めつける日本の政治家には、今回の小泉首相によるバイ

ロイト訪問のもたらした政治的・社会的な影響は到底理解できないのでしょう

ドイツにおける戦後問題の解決という大事の中に日本の首相がいたという事実(それは

決して意図したものではなかったにせよ。いや、意図したものではないからすごい)

中国の国家主席や首相が欧米を訪問しても、「金の話しかしない」と批判されます。フラ

ンスを訪れた温家宝首相は首脳会談を拒否してパリを素通りしてみせました

もしも温家宝がパリのオペラ座に足を運び観劇を楽しんだなら、欧米のメディアや政治家

も彼を見直したのではないでしょうか

日本の政治家も金の話をするだけでなく、訪問国の文化や芸術に関心を示すくらいのパ

フォーマンスはしてもらいたいものです

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バイロイト音楽祭の100年 (1976年)
音楽之友社
山崎 敏光

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