大阪幼児餓死事件を考える8 多重人格を否定、起訴へ

大阪のマンションに幼児2人を置き去りにして餓死させた下村早苗容疑者が、解離性同一性障害(いわゆる多重人格)の疑いで精神鑑定を受けていた話は前に書いたところです
大阪地検は精神鑑定の結果、解離性同一性障害ではなく責任能力に問題はなかったとして下村容疑者を起訴する方針だ、と報じられています

23歳母、殺人罪で起訴へ 鑑定で多重人格を否定

「こどもが死んでも構わない」という未必の故意があったとは、つまり殺意があったという意味です
裁判で下村被告は争うのでしょうか?
2人のこどもが餓死したという事実は明らかであり、下村容疑者が保護者としての責任を放棄していた点についてはどう釈明しても通用しません
弁護人があくまで解離性同一性障害説に固執するなら、再度の精神鑑定を要求する展開になり、裁判は長引きそうです
無残な死を迎えた2人のこどもはそんな母親をどう思うのか、と痛まし気持ちでいっぱいです
さてこの解離性同一性障害ですが、日本ではテレビドラマなどで「二重人格」としてたびたび取り上げられているとの話は前にも書きました
そのため現在でも解離性同一性障害との名称より、多重人格あるいは二重人格と表記される場合が多いのが実情です
ですが、その名称が多くの誤解を生んでいる事実を指摘しなければなりません
繰り返しになりますが、解離性同一性障害は1人の人間に2つ以上の人格が存在する病気ではありません
虐待をうけているこどもが、「いまこの事態は自分の身の上に起こっているのではない。本当の自分は別な存在なのだ」と考え、別の人格を作り出すことで辛い現実をやり過ごそうとする心のメカニズムが生み出す症状だと考えられます
そのため、過去に多重人格とされたケース(1人の中にいくつもの人格が存在すると判断されたもの)でも、その症例は検証しなおす必要があると考えられます
1人の中に複数の人格が存在していたのではなく、別人格を演じわけていた可能性があると見られるためです
余り適切な例ではありませんが、19世紀末から20世紀初頭にかけて世間の注目を集めた霊媒師エレーヌ・スミスの話を書きます
本によってはへレーネ・スミスと表記されたり、エリーズ・ミュラーと書かれていたりします。彼女はインドの女王の生まれ変わりと称したり、火星語で語ったり(火星人という設定なのでしょう)、マリー・アントワネットの生まれ変わりと称した人物で、彼女が書いた「インドから火星へ」は1900年に出版され、世間を驚かせました
貧しい家庭に生まれ、高等教育を受ける機会のなかった彼女がインドの宮廷の話をしたり、サンスクリット語を話したりするんのですから、インドの女王の魂が転生したか、別の人格として彼女の中に存在しているかのように思われたのでしょう
種明かしをすれば、彼女は高等教育こそ受けていませんが知的好奇心の旺盛で読書好きであり、インドの宮廷を舞台にした物語やマリー・アントワネットの物語を読んで情報を得ていたとされます
火星語と称する彼女の言語は、幾つかのヨーロッパの言語を混ぜあわせたものとされています
貧しい生活の中で、彼女は異国の物語に心惹かれ、自分がインドの女王になったという夢想に浸って憂いを紛らわせていたのでしょう
そうした夢想がやがて固着し、もう1人の人格として見てきたように語り始めるに至ったと思われます
下村早苗容疑者にしても、こども時代に別の自分を心の中に作り出していた可能性は否定できませんが、彼女は法廷でそうした事実を語るのでしょうか?
裁判の展開に注目しましょう

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