芥川賞作家西村賢太のインタビュー 放言も味

「苦役列車」で社会の底辺に生きる若者を描き、芥川賞を受賞した西村賢太のインタビューがなかなか面白いので取り上げます
「苦役列車」にこじつけて、「格差社会の代表」とか、「底辺生活層の代弁者」であるかのごとく持ち上げる安易な企画にはうんざいりしますが

芥川賞作家「ネットで格差社会恨む人は努力してないだけ」
それに小説界も格差社会ですよ。小説の実力云々というより、上の引きとか作家同士の関係性で小説の判断がされてしまう。誰が気に入るとか気に入らないとか、それだけで小説の格差が付けられるのが、ここ10年くらい顕著ですね。
発言力ある作家は徒党を組み、配下の作家を推して、自分が興味のない作家については編集者に「あれはダメだ」とかささやく。それが小説の格差を生み出している元凶になっているし、実際僕自身もいろいろいわれています。そういう読者不在の雰囲気って違うんじゃないのかなと思いますね。

と、インタビューの中で文壇批判を展開しています
「ロンパリの」と揶揄しているのは芥川賞の選考委員である池澤夏樹を指しているのでしょう
芥川賞の選評で池澤夏樹は長文を書いていますが、中身は全部朝吹真理子の「きことわ」に言及したものであり、西村賢太にはまったく触れていません
ですから西村賢太が、「あの野郎」と憤慨するのも無理からぬところでしょう
作家福永武彦を父に、詩人原條あき子を母に持つ池澤夏樹が、文学者の家系に生まれた朝吹真理子にシンパシーを感じるのは頷けるところであり、逆にどこの馬の骨だか分からない西村賢太を蔑視するのも理解できます
互いに相容れないものがあるのでしょう
西村賢太には西村賢太の言い分があり、選考委員としての立場上、受賞作品に何らかの言及をするのが責務だと考えているのかもしれません
といって、池澤夏樹に褒められたいと思っているわけでもないはずです
個人のブログを引き合いに出すのは恐縮ですが、西村賢太の「苦役列車」を読んではいけない駄作とこき下ろしている方がいます

読んではいけない!? 西村賢太の「苦役列車」

ブログ主は、「読者に対するセクシャル・ハラスメントとも言えるような下品な描写が含まれています」と書いていますが、いまどき小説の読者で「苦役列車」の表現を「読者に対するセクシャル・ハラスメント」だと受けとめ不快に思う人がいるのでしょうか?
「芥川賞の選考委員10名のうち4名が女性なのですが,偏見を承知で言えば,高樹のぶ子さんも川上弘美さんも小川洋子さんも,「苦役列車」を楽しんで読むことはできなかったのではないでしょうか」との指摘もブログ主の過剰反応に見えます
ブログ主がこうした描写の小説を苦手にしているのは十分に伝わってきますが、だからといって「セクシャル・ハラスメントだ」と騒ぐのは不可解な反応です
池澤夏樹は西村賢太のこうした下品な表現を嫌ったのではなく、おそらく反りが合わないと感じたところが大だったのでしょう
それは池澤夏樹と西村賢太の生い立ち、読んできた本、文学観や人生観、価値観の違いによるものであり、下品な表現が決定的な要因ではないはずです
自分としては池澤夏樹に何も期待しませんが、西村賢太の次回作は読んでみたいと思います
池澤夏樹については以前、「イラクの小さな橋を渡って」を取り上げました。わずか2週間ほどのイラクに滞在した見聞をまとめ、「イラクの人々は平和を愛する素朴な人たち」だと断じた池澤夏樹の見識に疑問を感じたものです
そんなイラクの素朴な人たちはスンニ派とシーア派に分かれ、爆弾テロの報復合戦をしているわけですが、池澤夏樹は何を感じているのでしょうか?

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