飲酒運転で幼児3人死亡事故 懲役20年確定へ

平成18年に福岡市の職員が飲酒運転で追突事故を起こし、相手の車を海に転落させ乗り合わせていた幼児3人を死亡させた事故について、最高裁判所は危険運転致死罪を適用して懲役20年とした福岡高等裁判所の判決を支持し、被告今林大の上告を退ける決定を言い渡しました
この事故は今林被告が飲酒・酩酊の上で車を運転し事故を起こしたものですが、一審である福岡地方裁判所が危険運転致死罪の適用を見送り、懲役7年6月の判決を言い渡したため、裁判所の判断に批判が殺到しました
せっかく飲酒運転による死亡事故への罰則を強化する危険運転致死罪が新設されたのに、福岡地方裁判所が「危険運転致死罪を適用するには当たらない」という、旧来の司法判断の枠組みを踏襲した判断を下したところが大いに疑問でした
また、3人の幼児を死亡させた今林被告の開き直りとも取れる言動に、批判が寄せらさました
一瞬の事故で幼いこども3人を亡くした両親の無念が晴れるとは思えませんが、この判決が飲酒運転に寛容な日本社会への警鐘となれば、多少なりとも両親の慰めになるのではないでしょうか?


福岡市で2006年、幼児3人が死亡した飲酒運転追突事故で危険運転致死傷罪などに問われた元同市職員、今林大被告(27)の上告審で、最高裁第3小法廷(寺田逸郎裁判長)は2日までに、被告側上告を棄却する決定をした。同罪を認定し、懲役20年とした二審・福岡高裁判決が確定する。
故意犯にあたる危険運転罪は「アルコールや薬物の影響で、正常運転が困難な状態で運転する行為」などが対象。一審は罰則が軽い業務上過失致死傷罪にとどまり、一、二審で判断が分かれたことから、危険運転罪を適用するかが最大の争点だった。
同小法廷はまず、適用基準について職権で検討。「事故の態様、飲酒量、酩酊(めいてい)状況、事故前の運転状況、事故後の言動、飲酒検知結果などを総合考慮すべきだ」とし、適用対象には「アルコールの影響で、前方を注視し危険に対処できない状態も含まれる」との初判断を示した。
そのうえで、被告が当時、焼酎のロックを8、9杯とブランデーなどを飲み、酔っていた状況を駆けつけた警察官も確認したことから「相当の酩酊状態にあったことは明らか」と認定。制限時速50キロの道路を約100キロで走りながら、事故直前の約8秒間、被害車両に気付かなかった点を「終始前を見ていなかったか、見ていても車両を認識できなかったかのどちらかで、いずれにしても異常」として、危険運転罪が成立すると結論付けた。
5人の裁判官中4人の多数意見。田原睦夫裁判官(弁護士出身)は「事故前に狭い道を事故なく走っており、飲酒検知の結果も微酔かほろ酔いにすぎない。構成要件を極めて緩やかに解釈するもので容認できない」との反対意見を付けた。
08年1月の一審判決は「漫然と脇見運転をしたことが事故の原因で、高度に酩酊した状態ではなかった」として業務上過失致死傷罪を適用し、懲役7年6月とした。
09年5月の二審判決は「現場には勾配があり、長時間の脇見運転は不可能。前に視線を向けながら被害車両を認識できなかったのは、飲酒の影響以外に考えられない」として危険運転罪を認定、懲役20年を言い渡した。
(日本経済新聞の記事から引用)

この事故をきっかけに、公務員の飲酒運転について厳重な懲戒処分を行う地方自治体が増えました
それまでは飲酒運転が発覚しても、重い懲戒処分を課す地方自治体は少なかったわけであり、飲酒運転に極めて寛容だったのです
飲酒運転はけしからんが、酒を飲んでちょっと運転したくらいで懲戒処分(停職、あるいは懲戒免職)は行き過ぎだとする風潮が日本の社会にはあったのです
事故当時、3人の幼児の母親である大上かおりさんは夜の真っ暗な海に何度も潜り、転落した海底の車の中からこどもたちを救い出そうとしました
その様子は検事調書に以下のように書かれています


かおりさんは、割れた車の後部窓から入り、紗彬ちゃん、倫彬ちゃんを次々に引き揚げた。「みんなで生きて帰る」。再度潜って車内中を手探りしたが、紘彬ちゃんの体に触れられない。「自分の息が途絶えても、絶対にあきらめない」
再び海面で息をしようとした時、立ち泳ぎしながら2人を抱きかかえていた夫が沈みかけていた。
紘彬ちゃんを救出するか、力尽きようとする夫の手助けに向かうか、「恐ろしく、悲しい選択だった」。「絶対に誰も死なせない。こんなところで死んでたまるか。哲ちゃん、生きるよ」。思いもむなしく、子どもたち3人は息絶えた。
変わり果てた子どもたちを受け入れられず、ほおずりをしたり、乳を含ませようとしたりした。


この検事調書を読み上げる際、検察官は何度も言葉をつまらせ、涙を止めることができなかったそうです
大林被告は常習的に飲酒運転を繰り返していた人物です。3人のこどもの命を奪った自らの行為の重みを刑務所の中でじっくりと反芻し、反省できるのでしょうか?
交通事故くらいで懲役20年は重すぎる、と不満たらたらなのかもしれません
飲酒運転による事故は「たまたまの過失」などではなく、卑劣な犯罪です
これを許さない風潮が社会に確立しない限り、飲酒運転の車によって殺される人は減らないのです

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