秋葉原17人殺傷事件を考える17 事件から4年

加藤智大(ともひろ)がレンタカーで秋葉原の歩行者天国に突っ込んで多くの人を跳ね飛ばし、さらに刃物で無差別に斬りつけるという凶行に至った、秋葉原無差別殺人から4年の歳月が流れました
各メディアがこの事件について報道しているのですが、風化させてはいけないとの口調が目立ちます。しかし、どのような事件も歳月の経過とともに忘れられるのは避けられません
朝日新聞の事件当初の報道を引用して、いまいちど事件の概要を振り返ってみましょう

東京・秋葉原の電気街での無差別殺傷事件で、殺人未遂容疑で逮捕された派遣社員加藤智大(ともひろ)容疑者(25)が警視庁の調べに、「仕事がうまくいかず、むしゃくしゃしていた」「仕事に不満があった」などと供述していることがわかった。仕事上の問題が事件につながった可能性もあるとみて、警視庁は調べている。
加藤容疑者は人材派遣会社の日研総業に登録し、関東自動車工業の静岡県裾野市の工場に塗装工程の作業員として派遣されていた。日研総業などによると、事件3日前の今月5日朝、勤務先の工場で、作業着をめぐって加藤容疑者が職場で激高するトラブルがあったという。
同僚や派遣会社などによると、加藤容疑者は5日午前6時すぎ、早番勤務で出勤。更衣室で「おれのつなぎ(作業服)がない」と怒り出し、「この会社はなめている」と言い残して早退したという。
だが、実際には加藤容疑者の作業服はラックの中にあった。派遣元の社員が同日午前中に自宅を訪ね、「作業服はいつもの場所にあった」と伝えたが、「今日はもう休みます」と答えた。翌6日は初めて無断欠勤したという。
加藤容疑者は同日、電車を使って福井市を訪れ、事件に使われたとみられるナイフと特殊警棒、計約3万円分を購入したと警視庁の調べに話しているという。
また、加藤容疑者が働いていた工場では6月末に、派遣社員を減員する計画が持ち上がっており、工場にいる約200人の派遣社員を50人に減らすことになっていた。
派遣元は違うものの加藤容疑者と同じ塗装工程で仕事をし、自らリストラ対象となった男性によると、リーダーから「契約は6月まで」と言われた際、加藤容疑者も通告を一緒に聞いたという。この時、加藤容疑者も「青森に帰ってバイトでも探すかな」と話していたという。
ただ、日研総業によると、加藤容疑者は勤務態度がよかったことから継続を決めて3日に本人に伝えたという。
警視庁の調べにも加藤容疑者は「契約継続を知っていた」と供述。しかし、逮捕直後は「仕事はやめた」と話していたといい、同庁は職場への嫌悪感が事件の背景にあったとみて調べている。
(朝日新聞の記事から引用)


「加藤君が真実を語り、そこから社会が教訓を得なければ凶行は繰り返される。決して風化させてはいけない」との切実な訴えには胸を打つものがあるのですが、残念ながらこうした特異な殺人事件というのは非常に稀なケースであり、ここから世間一般に通用する普遍的な教訓を導き出すのは不可能だと自分は考えます
科学の実験で1万回試みて同じ結果が得られるのであれば、そこから物理法則を導き出されるわけですが、数年に1度しか起こらない異常な無差別殺人から世間一般に通用するなにがしかの教訓を得ようとするのは無理な話です
「事件の被害を無駄にせず、何らかの教訓を得て2度とこのような悲劇が起こらないようにすべきだ」という、被害者や遺族の方の切実な気持ちには敬意を払うのですが、こうした無差別殺人は犯人の特異な思考や被害妄想などなどの結果ですから、「未然に防ぐための手立て」を用意するのは非情に困難です
もちろん幾つかの無差別殺人を分析し、共通項を取り出したり、犯行に至る経緯をパターン化するなど研究は行われているのですが、「Aという人格の持ち主がBという負因を抱え込んだ結果無差別殺人に走る」などと単純に図式化するのは不適切であり役に立ちません
秋葉原の事件では一部のジャーナリストや評論家が、「派遣切りに遭った若者の怒りだ」と発言していました。しかし、加藤智大本人は「派遣先をクビになったのが事件の原因ではない」と否定しています
仕事も私生活も、何もかもうまくいかないと絶望した結果、その怒りをたまたま大量無差別殺人という行動で発現させたように見えて、実は加藤智大が心の中に抱えていた母親への怒りが根源にあると自分は考え、これまでにブログに書いてきました
ただ、加藤智大の裁判で母親は証言台に立とうともせず、出張尋問による証言が公開されただけです
加藤智大の本当の狙いは裁判の場で母親に対する恨みつらみをぶつけ、過去の自分への仕打ちを謝罪させようと意図があったのでしょう
しかし、それは事件後、裁判を迎えるにあたって加藤智大の中で頭をもたげてきたものであり、事件を計画した段階で明確に意識していたものではありません
また、母親への恨みが根源にあると説明されても、被害者や遺族は納得できないはずです
そんな個人的な理由・事情のために、あれだけの惨劇に巻き込まれてしまったと言われても、受け止めようがないのですから

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