「日本アニメはディズニーを目指せ」という無茶な提言

ビジネス分野の人が日本のアニメーションやマンガを話題に取り上げ、いかにグローバルな展開で商売をすべきか、といった提言をしばしば目にします
しかし、日本のアニメーションやマンガの特性、魅力というものをまったく理解できていないがゆえに、その発想がズレていたり、提言自体が机上の空論だったりする場合があります
ビジネスジャーナルというウェッブサイトが、「ディズニー、トランスフォーマーの成功に学ぶ 人気キャラ抱えるアニメ産業、出遅れた海外市場開拓のカギ」と題する提言を掲載しています
しかし、読んでいて「何だかな」と思う内容であり、およそ日本のアニメーションの発展には寄与しそうにない提言になっています。強いて例えるなら、中国や韓国メディアがアニメーション産業を語るときの、あの現実を見ずに空論を弄んでいる感覚に近いものがあります

ディズニー、トランスフォーマーの成功に学ぶ人気キャラ抱えるアニメ産業、出遅れた海外市場開拓のカギ

日本のアニメーションやマンガを海外に売り込み、もっと儲けるべきだとの考えを否定するつもりはありませんが、売り込むために記事にあるような「ディズニーのビジネス原則」を踏襲すべきなのでしょうか?
ディズニーのきめ細かい配慮というものに突っ込みを入れてみましょう

(1)徹底してエンターテインメント性を志向している。世界中でヒットする作品を企画し、制作する。それがヒト、モノ、カネ、情報、技術を呼び集め、さらに大きなビジネスチャンスをつくっていく。

エンターティメント性と書いても、その中身は多岐にわたっています。いわゆるディズニー風のハッピーエンドだけがエンターティメントではありません
日本のアニメーションの特徴はディズニーのお約束的なハッピーエンドではなく、より複雑なストーリー構成によって、視聴者を感動させるところにあるわけで、その長所を捨ててまで薄っぺらなハッピーエンドを志向すべきだとは思いません

(2)脚本は、ストーリー構成がしっかりしていて、民族・宗教・人種・習慣などの違いや壁を超えて、人類や人間社会に普遍的に当てはまるテ-マを選び、みんなが楽しめるように創意工夫している

これも理解不能な提言です。日本のアニメーションは日本人の視聴者をまずは第一に考えており、日本の精神風土に馴染む内容として作られます。それを捨てて世界に通用する(人種や宗教、民族を超えるとはいうものの、それでは中身のない薄っぺらな世界観しか提供できません)作品にする必要があるのでしょうか?
無国籍化した「エヴァンゲリオン」など、あまりに軽薄で見ていられません
それに日本のアニメーションは日本人の精神風土に根ざした世界観を掘り下げる形ではありますが、それでも海外の人に支持されるのは作品のテーマが異国の人にも理解可能な普遍性を備えているからでしょう
だからといって企画のすべてを日本で行い、日本人向けに作ればよいとは言いません
今後は最初から海外での公開を目指し、海外へキャラクターグッズを売り込む狙いでアニメーションを制作するケースも増えると思われますので、そんな時にはこの提言も役に立つのでしょう
この記事を書いたジャーナリストが根本的に誤解しているのは、ディズニーに「シンデレラ」は作れても「エヴァンゲリオン」は作れない、というところです
日本ではもちろん「アルプスの少女ハイジ」のように海外の童話・児童小説をアニメーションでやってきましたし、海外への展開でも成功を収めています
それとは別の展開で「ガンダム」や「エヴァンゲリオン」をやってきたのであり、ディズニーとは別の方法論でアニメーションを生み出すことは十分に可能です(それで海外へのビジネス展開が成功する、というものではないのは上記の記事にあるとおりですが)
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年明けまで仕事の予定が入っているため、ブログの更新もままなりません
稚拙なブログを読んでいただき、誠にありがとうございました
来るべき新年は少しでも良い年であるよう祈念しております。皆様もお健やかに新年を迎えられますように

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