死刑囚からの手紙 月刊「創」の記事を考える2

月刊誌「創」に掲載された、奈良の幼女殺害事件の犯人小林薫死刑囚と、土浦無差別殺人事件の犯人金川真大死刑囚の手紙について取り上げる記事の第2弾です
今回は小林薫死刑囚の手紙に関する部分を考察します


死刑執行! 小林薫死刑囚と金川真大死刑囚からの手紙


月刊「創」に書かれているように、小林死刑囚は奈良地方裁判所での1審で死刑判決を受けた後、弁護人が控訴しているのですが、小林自身が控訴を取り下げる手続きを行なっています
その後、心境の変化もあって再審請求を行なっており、「創」の記事では揺れ動く心として表現されています
小林死刑囚が再審で訴えたかったのは、死刑判決の中での被害者を浴槽に沈めて殺害したとの認定は誤りであり、被害者は小林死刑囚が飲ませた睡眠薬によって昏睡したため浴槽内で溺死した、という「事件の真相」です
これが認められれば事件は殺人罪ではなく傷害致死罪になり、判決は死刑ではなく無期懲役になる可能性があったわけです
ただし、それでも小林死刑囚がわいせつ行為を目論んで睡眠薬を飲ませ、裸にするため入浴を勧めた事実はゆるぎません(被害者である女児が自ら裸になったという状況を作り出す意図で入浴を勧めたのでしょう)
月刊「創」の記事ではそこの部分に触れず、さらりと流しています
記事全般についても言えるのですが、小林薫死刑囚の真実を強調する論調ながら小児性愛者という異常性にはまったく触れようとしません。睡眠薬による溺死が真相であったとしても、そこに小林死刑囚のドス黒い欲望が働いていた事実には触れたくないのでしょう
さらに、被害者の遺体を写メールにして遺族に送りつけ、「殺してやったぞ」と犯行を誇示した行為についても触れていません
これで「殺意はなかった。殺人ではなく、不幸な事故だった」と説明されても、誰も納得しないはずです
自己に都合の良い事実だけを強調する小林死刑囚と、彼にすっかり転移を起こしてしまった編集者の、一心同体ぶりが露呈しまいます
小林受刑囚は月刊誌「創」だけでなく、多数のジャーナリストと手紙をやりとりしており、別の人物が手紙のやり取りとその内容について明かしています


小林薫被告から届いた手紙 死刑を望む本当の理由とは


これにも突っ込みどころはあるのですが、月刊誌「創」の記事よりも取材対象との距離を考慮し、転移を起こさないよう気配りをしているところが見て取れます


小林のマスコミ批判は私の「現代」の記事にも及んでいる。私は同誌で、小林の自宅からロリコンビデオ100本が押収され、小さいころに動物を虐待したと書いた。
これに対して小林は、こう反論する。
〈私が所持していた「ビデオテープ100本について」ですが、私が所持していたのは、ほとんど成人物の裏ビデオで、小児物のビデオは、今覚えている限りでは、10本前後だったはずです。また、100本のうち、5本程は、テレビで放映された洋画や、宮崎アニメの「ナウシカ」等の普通の映画です。それに、自家で飼っていた柴犬は、私が幼稚園生の頃、魚の骨をノドにつまらせ死んでいるのです〉
調べてみると彼の言うとおりだった。小林の名誉のため、この点は訂正しておきたい。


との部分から、小林死刑囚が小児性愛者であったかどうか、疑義が湧くのかもしれません。しかし、彼が実際にこども相手にわいせつ行為を繰り返し、逮捕されていた事実がある以上、小児性愛という歪んだ性癖の持ち主であった可能性は否定できないと自分は考えます
最後に、月刊「創」の編集者が小林死刑囚の真実に迫ろうとするのであれば、彼が自ら進んで語ろうとしなかった「欲望」について問いただし、明らかにするべきでした。そんな質問をすれば小林死刑囚から拒絶される恐れがあったため、できなかったのかもしれません
しかし、不都合な事実から目を背け、死刑囚の言わんとするところだけを取り上げるのは報道とは呼べず、死刑囚の代弁者に成り下がっただけです
次回は土浦無差別殺人の金川真大死刑囚の手紙について書きます

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