「韓国はいかに日本漫画を受容したか」論を読む

ネタの宝庫、という関係で韓国に言及する機会が多いなと自分でも思いつつ、今日はアカデミックな立場から「韓国における日本漫画の受容」を考察した論文を紹介します。取り上げるのは現代韓国朝鮮学会の研究誌(現代韓国朝鮮研究 2号 2002年)に掲載された山中千恵の手になるものです
全文はPDFファイルで公開されていますので、以下のアドレスにアクセス願います


韓国における日本マンガ受容の論理


では、本文から幾つか興味深い点を引用させてもらいます


これは、マンガの読み手である大学生の意見である。反日マンガ論の議論の中ではマンガの読み手が、語り手として登場することはなかった。マスコミの展開した反日マンガ論の中のマンガの読み手は、「操作される」人々でなくてはいけなかった。
しかし、彼女にはマンガの読み手である自分は、よいものと悪いものを判断できる主体なのだという自負がある。
「マンガにはいろんな種類があるのに大人達はそれを知らない。だから子供が見るモノで幼稚だと思ってるとおもう。今は少し変わってきてるけど、そういう考えがまだある。」(21歳大学生・女性)
反日マンガ論が仮定していた読み手は、「子供」である。大学生は含まれない。大学生であるマンガの読み手は、自分たちは「子供」ではないのだと感じ、「大人たち」(既成世代)」のマンガに対する無理解に反発を覚え、マンガを擁護したいと感じている。
「一般的にマンガを好きだというと、韓国のモノも日本のものも好きってことになるので、日本のまんがも必然的にたくさん読むことになりました。」(21歳大学生・女性)
子供でもなく、大人でもない場所に置かれた彼らは、日本まんが受容行為を反日的な論理から「日本文化=よくないもの」という図式で意味付けてはいない。しかし、彼らの言葉の中には、反・反日にあたるだろう、「日本文化=良いもの」 という図式もみあたらない。
むしろ、反日的な論理が導く意味付けから逃れようと、「マンガ (マンファ)がすき。日本は関係ない」とする「ずらし」を用いて、脱反日的な論理を展開し、異なった意味を生み出そうとしているのである。以上のことから、日本まんがの受容行為を意味付ける論理には、一般的意見として反日的なものがあり、読み手の意見として、脱反日的なもの が存在することが確認できる。
もう1組の論理
反日的な論巧と脱反日的な論理のように、日本まんがの受容行為を巡るアンビバレントな論理が存在することは今に始まったことではないのかもしれない。しかし、マンガの読み手の論巧には、「反日」をめぐるアンビバレントさにとどまらないものがあるように思われる。
たとえば、脱反日の論理で「一般的にマンガを 好きだというと、韓国のモノも日本のものも好きってことになる」と言った大学生の意見には、「マンファ」と「まんが」はひとつのメディア.文化であり、そこでは「韓国」も「日本」も関係ないのだという「共通性」の強調が論理に含まれている。これによって、日本まんが受容巧為は、日韓両国の共通感覚を示すものとしても意味付けられている。


ざっくりと言えば、日本の漫画をどう読み、受容するかは韓国人のアイデンティティに関わるのであり、そこには親日か、反日か、はたまた第三の態度かが問われるというのが論者の指摘するところなのでしょう
日本人が日本の漫画を読もうが、アメリカンコミックスを読もうが、自身の日本人としてのアイデンティティを問われる機会などないのであり、実に不思議です
そこまで日本と対決しないことには日本文化と接触できないものなのか、と
まあ、頭ごなしに日本文化を否定するほどコチコチではないと判っただけでも、読んだ価値はあります。
ただし、この種の論文の欠陥として、「日本の漫画」と一括りにして論じるため、どうにも上滑りの印象がつきまといます。個別具体的な作品を取り上げ、それをどのように読み、何を感じたか絞り込んだ方が「作品をいかに受容したか」が掴めるわけで…
引用はしませんが、30歳の男性会社員の意見として韓国のマンファにはパワーがあるが、日本の少女漫画にはそれがないとの指摘が記載されています。彼は日本の少女漫画をたくさん読んだと語っているものの、何を読んできたのかは不明です。これでは議論にすらなりません
大学院生の論文だからこの程度、と済ませるのはもったいない気もします。もっと切り口を工夫すれば面白い考察もできたでしょうに

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