和歌山カレー事件 「20年目の真実」と称する幻想譚

田中ひかるという歴史社会学者が昨年夏に、「毒婦 和歌山カレー事件20年目の真実」と題する本を出しています
社会学者宮台真司は推薦文に、「日本の司法が『法的正義の貫徹』ならぬ『利害と感情の調整装置』に過ぎぬ事実は夙に知られる。信頼すべき弁護側再鑑定結果をスルーした最高裁判決の出鱈目に憤るのも良いが、本書を読んで落胆すべきは『だからどうなの』という世論とマスコミの劣化だ。『見たいものしか見ない俗情』が勧善懲悪劇を超える事実の深さを消去し続ける。この国の崩壊現象を端的に指し示す必読書」と書いています
果たしてそれほどまで事件の真相に肉薄した内容なのでしょうか?
著者である田中ひかるが、あらましについてゲンダイのウエッブサイトに書いていますので取り上げます
最初から冤罪説ありき、で書かれてものです。長文の記事なので全容を読みたい方は、以下のゲンダイのウェッブサイトへアクセス願います


和歌山カレー事件・20年目の真実〜林真須美は本当に毒を入れたのか
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56582
和歌山市園部の自治会が開いた夏祭りで、カレーにヒ素が混入され、67人が急性ヒ素中毒に陥り、うち4人が亡くなるという凄惨な事件が発生してから、7月25日で20年になる。
容疑者として逮捕、起訴された林真須美(正しい表記は眞須美。当時37歳)は、2009年に最高裁で死刑が確定した。
しかし、彼女は逮捕当時から一貫して容疑を否認しており、有罪の決め手となったヒ素鑑定にも綻びが生じてきている。
林真須美といえば、逮捕前、自宅を取り囲む報道関係者たちにホースで放水している姿がよく知られている。笑いながら“こちら側”に放水してくるふてぶてしい態度に、嫌悪感を覚えた人も少なくなかっただろう。
あのとき彼女が着ていた黒いTシャツには、ある有名ブランドのロゴが入っていたのだが、イメージの悪化を懸念したブランド側の要請で、報道の際、ロゴの部分にぼかしが入るようになった。
拙著『「毒婦」 和歌山カレー事件 20年目の真実』の表紙写真でも、彼女は大のお気に入りだったそのTシャツを着て微笑んでいるが、ロゴはない。
(中略)
カレー事件は発生当初、「集団食中毒」と誤認されたが、翌日、被害者の吐しゃ物や体内から「青酸化合物」が検出されたことから、「青酸カレー事件」と報じられた。
そして事件から1週間後、「ヒ素も混入されていた」ことが判明した。つまり、2種類の毒が混入されていたということになる。
ヒ素の混入が判明したことで、林真須美とカレー事件がつながった。一方で「青酸化合物」の存在はフェイドアウトしていく。
警察は「青酸化合物は混入されていたものの、犠牲者たちの死因はヒ素だった」と発表し、最終的には「青酸化合物は混入されていなかった」と結論づけた。真相は不明である。
事件から1ヵ月後、過去に林宅で食事をしたことのある男性2人が、急性ヒ素中毒に陥ったことがあると報じられると、林宅を取り囲む報道関係者の数は、一気に数百人に膨れ上がった。
(以下、略)


省略した部分ではワイドショーなどでお馴染みにとなった取材合戦、報道の加熱について長々と書いています
それが「20年目の真実」なのか、と突っ込みたくなります
もちろん田中ひかるが言いたいのは、警察とメディアが一体になって林眞須美を犯人に仕立て追い込んだ、という冤罪の構図なのでしょうが
前述の本の表紙には、「動機なし!自白なし!物証なし!」と印刷されています
当ブログでは和歌山カレー事件において、本当に林眞須美には動機がなかったのか、との疑問を繰り返し提起してきました
既に述べたように2審の大阪高裁で林眞須美は近隣に住む主婦2名の実名を挙げ、「真犯人だ」と告発しています
林眞須美がそう決めつける背景、軋轢や因縁が存在していたはずです。それをスルーしたのでは「20年目の真実」とは言い難いのであり、不都合な事実は隠し、林眞須美の主張のみに依存した内容と断じるしかありません
さらに上記の記事の省略部分では、自白を迫る警察の取り調べと林眞須美の抵抗について触れているのですが、それならばなぜ一審の大阪地裁において林眞須美は黙秘を続け、語らなかったのでしょうか?
無罪を積極的にアピールしなかったのはなぜでしょうか?
林眞須美と面会したり手紙のやりとりをし、家族を取材し、弁護士と話し合った上で本書をまとめたのでしょうが、一方的にその言い分のみを集めたに過ぎず、これを良質なドキュメンタリーと表現するのは無理があります
読み手の多くは、「善良な家庭の主婦がある日突然、大量殺人事件の犯人に仕立てられ、警察の過酷な取り調べを受けた挙句に死刑判決を下された」とのストーリーに酔っているのかもしれません
善良な主婦どころか、保険金詐欺を繰り返した強欲な女であるという事実を忘れないで読むべきでしょう

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