大口病院不審死 久保木被告起訴も公判はまだ

横浜の旧大口病院に勤務する看護師が、点滴に薬剤を混入させ48名もの入院患者を殺害した事件は、日本の犯罪史上稀に見る大量殺人であり、連続殺人でもあります
ゆえにもっと注目されてもよいと思うのですが、メディアにすればすっかり過去の事件なのでしょう
昨年久保木愛弓被告を起訴して1年になろうとしていますが、公判が開かれる目途は立っていないようです
神奈川県警は当初、3人の殺人容疑と5人の患者に対する殺人予備容疑で送検しています。その後、患者1人に対する殺人容疑で追送検しているのですが、横浜地方検察庁はこの分の起訴を見送っています。公判で立証するのは難しいと判断したものと推測します
さて、精神科医の片田珠美がこの事件に言及していますので取り上げます
長文の記事なので、一部のみ引用します。全文を読みたい方は下記のアドレスにアクセス願います


大口病院・20人殺害か…久保木容疑者、他の看護師への復讐願望を患者に「置き換え」か
(前略)
この疑問を解く鍵は、「自分の勤務中に患者が亡くなると、遺族への説明をしなければならず苦痛だった」という供述にあると私は考える。「自分の勤務中に亡くなるかもしれない容体の悪そうな患者を選んで、消毒液を混入した」という趣旨の供述もしているので、患者の容体が急変して死亡し、さまざまな処置に加えて遺族への説明をしなければならなくなる状況がよほど「苦痛」で、どうしても避けたかったのだろう。そういう状況が久保木容疑者に強い恐怖と不安を引き起こした可能性も考えられる。
このように特定の状況への恐怖と不安が強くなり、それが6カ月以上続くと、精神医学的には「限局性恐怖症(Specific Phobia)」とみなされる。問題は、恐怖と不安を自分ではコントロールできないので、それを引き起こす状況を何としても回避しようとすることだ。高所恐怖症の人が、高いところに上がるのを避けるのと同様に、自分にとって苦痛な恐怖と不安を誘発する状況をあらゆる手段によって避けようとする。
久保木容疑者に恐怖と不安をかき立てたのは、患者の死亡によって自分が遺族に説明しなければならなくなる状況だったので、それを回避するために自分の勤務時間外に患者を死亡させようとしたわけである。あまりにも自己中心的かつ短絡的な動機だが、「限局性恐怖症」の人の行動パターンを決定するのは回避であることが多い。
「限局性恐怖症」を病気とみなすかどうかについては、精神科医の間でも議論が分かれている。アメリカでの臨床研究によれば、何らかの対象や状況に対する恐怖症を持つ人は人口の10%程度ということがわかっており、必ずしも病気ではなく、治療対象にはならないという意見もある。ただ、久保木容疑者のように強い苦痛を覚えており、それを回避するために問題行動を起こす場合は、きちんと治療すべきだろう。
(中略)
もっとも、自分の勤務時間中に患者が死亡する状況によってかき立てられる恐怖と不安を避けようとしただけで犯行に及んだとは考えにくい。というのも、久保木容疑者は、担当患者が以前死亡した際に同僚らから自分のミスの可能性を指摘されたとも説明しているので、もともと同僚や上司などに対して怒りを覚えていた可能性があるからだ。
大口病院では、入院患者が相次いで死亡した4階で、2016年4月から8月にかけて看護師の服が切り裂かれたり、飲み物に異物が混入されたりするトラブルが起きていた。これが久保木容疑者によるものなのかどうかはこれから慎重に調べなければならないが、もしそうだとすれば、他の看護師に対する怒りをこのような形で表現したと考えられる。
(以下、略)


看護師や医師との人間関係がどの程度、久保木被告の犯行の原因になったのか、公判で明らかになるのでしょうか?
もし、職場での人間関係の腹いせに患者が殺害された、などということになれば、被害者も遺族も浮かばれません
久保木被告は鑑定留置が行われ、責任能力に問題はないとして起訴されています。心神耗弱状態などではない、との判断した結果であれ、久保木被告の人格に大きな歪みがある(患者の生命に関してあまりに軽視している)のは確かでしょう。倫理観の欠如とか、被害妄想とかは情状酌量の理由にするのは難しいところです
それにしても起訴から1年を経てまだ公判に至らないのは、何か特別な事情があるのでしょうか?
検察は立件する対象を絞り込んでいますから、久保木被告が否認していないのなら、公判を維持するのが困難とは思われません

(関連記事)
大口病院不審死 3人殺害で久保木容疑者起訴へ
大口病院不審死 元看護師が48人殺害か
横浜病院点滴殺人 内部犯行の可能性
岐阜の老人施設で5人死傷 連続殺人として立件へ
岐阜の老人施設で5人死傷 元職員を逮捕
岐阜の老人施設で5人死傷 連続殺人の可能性も
点滴に水道水を混ぜて娘を殺害した母親 代理ミュンヒハウゼン症候群
代理ミュンヒハウゼン症候群の補足
「黒い看護師」殺人の吉田純子 死刑執行
看護師4人による保険金殺人事件を考える2 同性愛
看護師4人による保険金殺人事件を考える
老人ホーム睡眠薬殺人 准看護師に懲役24年判決
老人ホーム3人転落死 今井被告に死刑判決
老人ホーム3人転落死 管理会社の見苦しい釈明
老人ホーム3人転落死 今井容疑者は自己愛障害?
老人ホーム3人転落死 元職員が犯行自供
老人ホーム3人転落死事件の闇
川崎3人転落死老人ホーム 問題だらけの実態
老人ホームで3人が転落死 同じ職員が当直
患者85人を殺害 元看護師に終身刑(ドイツ)